『らんまん』突飛な設定でさらに輝くディーン・フジオカという俳優(第1週)
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好奇心旺盛で草花が大好き、造り酒屋の当主として大事に育てられながら、ちょっと走っただけで熱を出して倒れる、体の弱い万太郎(森優理斗)。そんな弟を心配してばかりのしっかりもので、笑顔の少ない姉の綾(太田結乃)。万太郎の世話役を命じられている、番頭の息子の竹雄(井上涼太)。そんな子どもたち3人を中心に、『らんまん』の第1週が始まりました。
由緒ある「峰屋」を束ねるのは、万太郎と綾の祖母・タキ。松坂慶子さんが着物姿でピシッと立っているだけで迫力満点、失礼な態度をとる分家に怒鳴る姿も勇ましく、これは怖いおばあさんだ!と震えあがったのですが、その後彼女が、病床で申し訳なさそうにする嫁のヒサ(広末涼子)にかける言葉の優しいこと。そこには、夫を亡くした本家の嫁ふたりの、悲しみと苦労の分かち合いがありました。分家の男たちへのタキの一喝は、幼い万太郎が成長するまで、女の自分たちだけでこの家を守るぞという、強い覚悟ゆえだったんですね。
正直に言うと、朝ドラの主人公の子ども時代を「ちょっと苦手だな」と感じることもあります。のちに大きなことをやり遂げるという朝ドラ特有の物語に信憑性を持たせるためなのか、大人に「やめろ」と言われても思い切った行動をする幼い主人公に、時々「子どもだからって、それはちょっとやりすぎでは」と言いたくなることもあって。今回の『らんまん』でも、万太郎は内緒で家を抜け出して花を探しに出かけ、綾は入ってはいけない蔵に入り、竹雄も禁じられた山へと登るんですが、それはよくある「主人公たちのいたずらやおてんば」ではない。3人がいけないと知りながら、禁を破り、暗い未知の場所へと一歩踏み出すのは、それぞれの大切な誰かのため。万太郎は母・ヒサが好きだと言っていた花を持ち帰りたい。綾は大事な弟を守りたい。竹雄は万太郎と綾を無事に家に連れて帰りたい。でも彼らのいちばんの願いは叶わず、万太郎が母に差し出した花は間違っていたし、母は病から回復することはない。だけど、目に見えなくても神様や天狗がいるように、花が咲けばそこにはきっとお母ちゃんがいる。子どもたち3人の健気さ、「また会おうね」と微笑むヒサの愛に、泣かされっぱなしでした。
子ども3人が本当にかわいいのですが、特に「しっかりしたお姉ちゃん」な綾ちゃんに感情移入しながら見てしまうのは、私が長女だからでしょうか。みんなを笑顔にできる万太郎に少し嫉妬をしながらも、弟を愛する綾ちゃん。もう長くはないだろう母を思って、誰も見ていないところでひとり泣きじゃくる綾ちゃん。彼女がどんなにがんばって仕事をしても、みんなは跡継ぎの万太郎のことばかり注目するし、女だから蔵に入ることもできない。そんな状況で、綾ちゃんがどんなふうに成長していくのか、いつか心から笑える日が来るのか、気になります。
それにしても、ディーン・フジオカさんが「天狗です」「っていうか、実は坂本龍馬です」って出てきても「あーわかるわかる」ってなんだか納得しちゃうの、なぜなんでしょう。突飛な設定であればあるほど輝くという、すごく不思議な俳優さんですね……。「生まれてこないほうがよかった」などと分家にひどいことを言われて傷心の万太郎に「寝小便じゃろ? 何を隠そうわしも…」「わしも子供の頃は泣き虫の毛虫じゃったがよ」と、自分の弱さをさらけ出して励ます姿、かっこよかったなあ。もちろん「要らん命らあ、一つもない」も。
坂本龍馬が残した「さあ、望みや! おまんは何がしたいがぜ?」の問いに「わしはこの花の名前が知りたい!」という答えを出した万太郎。直接、彼にそれを告げる日は来るのでしょうか。来て欲しいなあ……またあの森で2人が会えますように。
■番組情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこうほか
作:長田育恵
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん「愛の花」
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
植物監修:田中伸幸
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/ranman
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