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朝ドラWATCHコラム『舞いあがれ!』第26週(最終週)

『舞いあがれ!』みんなの夢をいっぺんに叶える舞の飛行で大団円(最終週)

『舞いあがれ!』みんなの夢をいっぺんに叶える舞の飛行で大団円(最終週)の画像
イラスト/渡辺裕子

 とうとう舞ちゃん(福原遥)が舞いあがった。「かささぎ」を操縦する舞ちゃんを見て、涙をこらえきれませんでした。彼女が飛ぶ姿を、本当に見たかった。だからこそずっと「飛ばないのかーい!」「また寄り道かーい!」とツッコんできたのですが、ここまでの彼女の道のすべてが、あのフライトにつながっていたんですね。無理を言って航空学校に行ったこと、就職延期で五島で宇宙好きな朝陽くん(渡邉蒼)と仲良くなったこと、内定辞退してIWAKURAでネジについて経験を積んだこと、大企業の発注をもらえなかったけれど荒金さん(鶴見辰吾)と知り合ったこと、起業して東大阪の工場について詳しくなったこと。叶わない夢、思い通りに進まない毎日、苦い記憶。それらがすべていい思い出に変わってしまう、ここまで大変だったけど、でも楽しかったなあとつぶやくような奇跡の1日。まさにそんな最終回でした。

 夢はずっと後になって、周り道だと思っていた道の先で叶うこともある。そういえば荒金さんの飛行機への思いも、定年退職後、アビキルに再就職して叶ったんじゃないでしょうか。学校に行けなかった朝陽くんも、自分と同じレベルの変人ばかりのアビキルではとても楽しそう。そしてもうここにはいないお父ちゃん・浩太さん(高橋克典)の夢も、ネジになって空を飛んだ。他にも、なにわバードマンたちの夢、航空学校の仲間の夢……みんなの夢をいっぺんに叶える、舞ちゃんの飛行でした。

 「アイラブユー」を聴きながら毎朝楽しく見ていたあのタイトルバックの映像、あれはドラマの内容そのままだったんですね。すべて見終わってやっとわかりました。一枚の紙が紙飛行機になり、自分の足で進むようになって凧に変わり、風にあおられて水溜りに落ち泥まみれ、飛行機となれたけれど一枚の紙に戻り、ふわふわと風に乗って漂ううちにカササギになり、最後にはたくさんの鳥たちといっしょに空飛ぶクルマになって五島へと飛んでいく。物語の後半、このまま舞ちゃんは空へは行かないのかとハラハラしましたが、あの時、ただ風に流される一枚の紙のように見えていた舞ちゃんは、実はちゃんと飛行機の形になる準備ができていて、飛び立てる時間を待っていただけだったんですね。

 実は、舞ちゃんのことをいつまでも「舞ちゃん」呼びでいいのかと、このコラムを書きながら迷ってました。初めは小学3年生だった彼女もどんどん成長して、最終回では40代。大人の女性にちゃん付けってどうなのかと。でも、コロナ禍のパリでひとりになった貴司くん(赤楚衛二)が書いている日記は、どれも「舞ちゃん」と呼びかける言葉で始まっているのを見て、ちょっと泣いてしまいました。名前を呼びたくなる人がいるって、幸せなことですよね……応えてもらえなくても、遠く離れていても。そんな貴司くんと同じように、最後まで「舞ちゃん」と呼ばせてもらえてよかった。

 それにしてもあのパリの部屋、もしかして八木さん(又吉直樹)は借りてるのではなく所有しているのでしょうか。デラシネも彼の持ち物だとしたら、いろんな国に家を持っているお金持ちなのでは。彼は年齢も不詳ですが、60年代に大学で好きな人と出会い、今は親の遺産で暮らしているのかな……と想像すると、2026年に『トビウオの記』を読んでいる八木さんは80代くらいでしょうか。デラシネ=根なし草として世界中を旅して、ずっと好きな人の名を心で呼び続けて生きていくんですね。あと、八木さんと同じくらい貴司くんを好きだと思われるリュー北條(川島潤哉)。彼、出版社内で異動があって、短歌雑誌の編集部から文芸誌の編集長とかになってそうな気がします。貴司くんの随筆を「コロナ禍のパリで作家は何を見たか」とかコピーつけて雑誌連載してから単行本にしてベストセラーにとか、彼ならやりそう。

 仲良く並ぶ章(葵揚)と笠巻さん(古舘寛治)、指輪をしていない柏木(目黒蓮)、パパの顔になっている悠人(横山裕)、進くん(野原壱太)と歩ちゃん(浅田芭路)、みんなを運ぶめぐみ丸など、見たかった人やものがたくさんだった最終回。ひとつめの目的地まで飛べた舞ちゃんと、2027年の未来で待ちあわせしているような幸福感。ずっと見てきてよかった、ありがとうございました!

■番組情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:福原遥、高橋克典、永作博美、横山裕、高畑淳子、赤楚衛二、山下美月、山口智充、くわばたりえほか
作:桑原亮⼦、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number「アイラブユー」
語り:さだまさし
制作統括:熊野律時、管原浩
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐
プロデューサー:上杉忠嗣、三鬼一希、結城崇史
広報プロデューサー:堀之内礼二郎、齋藤明日香
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/maiagare

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

わたなべひろこ

最終更新:2023/04/03 11:28
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