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日刊サイゾー トップ  > 畠山重忠の最期…北条時政にハメられた?

『鎌倉殿』畠山重忠は時政の怒りを買ってハメられた? 「忠義一徹の男」の悲しい最期

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

『鎌倉殿』畠山重忠は時政の怒りを買ってハメられた? 「忠義一徹の男」の悲しい最期の画像1
源実朝(柿澤勇人)|ドラマ公式サイトより

 『鎌倉殿の13人』第34回「理想の結婚」は、表面的には久しぶりの平穏な内容だと思わせておいて、今後の大事件につながる小さな不協和音があちこちから聞こえてくる仕掛けが施されていたように思われました。一番の不穏分子は、飛ぶ鳥を落とす勢いの北条家の一員になろうと画策している「のえ」(菊地凛子さん)でしょうか。史実では「伊賀の方」として知られる女性で、義時最後の妻となる存在です。

 残念ながら史料には彼らの夫婦仲に関するエピソードはほとんど見当たりませんが、伊賀の方は義時の急死後、彼が嫡男と決めた泰時を退け、自分が産んだ政村をその座につけようと画策した「伊賀氏の変」と呼ばれるお家騒動を引き起こしてしまったことで知られます。伊賀の方は義時を毒殺したという証言もあり、歴史に悪名を残している女性です。

 ドラマの「のえ」もなかなかの悪女のようです。北条義時(小栗旬さん)や時房(瀬戸康史さん)は、彼女が演じた清純な女性の仮面に騙されてしまっていましたが、泰時(坂口健太郎さん)が偶然見てしまった、のえのぶっちゃけすぎた態度――御所を寿退社して、玉の輿に乗れそうと大声で喜ぶ姿は、おおよそ好感が持てるものではありませんでした。ただでさえ泰時は、義時の前妻・比奈(堀田真由さん/史実では「姫の前」)を慕っており、後妻と不仲になるのは目に見えているのに……と不安が募ります。

 不安といえば、文字通り「理想の結婚」を迎えられそうなはずの源実朝(柿澤勇人さん)の表情がすぐれず、「私はやはり、そのお方をめとらなければならないのか。後戻りはできぬということか」と結婚への逡巡を義時に漏らしていたことですが、ひょっとするとその原因のひとつに、泰時に対して特別な感情を抱いているからではないか……という気もしてなりません。史実ではそうだったとする具体的な記録はないのですが、もしかしたらと考えられる余地があるのです。

 史実の実朝は、「坊門信清卿の息女」こと、実名不詳で出家後は「西八条禅尼」と呼ばれた女性と元久元年(1204年)に結婚しています(ドラマでは加藤小夏さん演じる「千世」)。二人の夫婦仲はよかったとされていますが、結婚してから14年たっても子供は生まれませんでした。

 この頃、政子は謎めいた行動を見せています。実朝の病気平癒を願い、熊野に参詣した直後、自ら京都の朝廷に乗り込み、天皇家の皇子を次の鎌倉殿にするべく、交渉を開始しているのです。まだ実朝は20代の若さです。『吾妻鏡』の本文から、実朝が子供も期待できないような重病だったとは想像しづらく、政子および幕府の重鎮たちが「実朝に子供は期待できない」と決めつけるだけの理由が何か別にあった……そう考えたほうがよさそうなのですね。おそらくドラマでも何らかの“理由”は描かれるでしょう。

 実朝には「久米御前」という側室がいたという伝承もあるようですが、彼は側室を持つことに積極的ではなかったと考えられています。やはり実朝に何らかの“原因”があったのでは、と思われるのです。同性愛者説は筆者の推理にすぎませんが、今後、ドラマで実朝の人柄がどう描かれるかは楽しみですね。

 さて、今回お話したいのは、次回・第35回「苦い盃」のメインの内容になるだろう「畠山重忠の変」についてです。

 鎌倉の御家人たちからの信頼が厚かった重忠が、北条義時の手で討ち取られることになったこの事件ですが、『吾妻鏡』によると、重忠が謀反を企てているとする「牧の方」(ドラマでは宮沢りえさん演じる「りく」)の讒言が夫・北条時政を動かしたという経緯によるものと説明されています。その結果、牧の方の責任がその後問われることになるのですが……。しかし、この事件の背景を調べると、多くの語られていない事柄が隠されていそうです。(1/2 P2はこちら

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