トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『石子と羽男』最終回直前、不穏な急転直下

『石子と羽男』中村倫也と有村架純のやりとりにほっこりも…ラストの急転直下!

『石子と羽男』中村倫也と有村架純のやりとりにほっこりも…ラストの急転直下!の画像
Paravi配信ページより

 TBS系金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』が、最終回を目前にして本気を出してきた。

 放送初回から堅実な作品づくりで、今期トップクラスの人気ドラマとなった『石子と羽男』。手がけるのは、昨年10月期の金曜ドラマ『最愛』の功績も記憶に新しい、プロデューサーの新井順子×演出の塚原あゆ子のコンビ。脚本はアニメ『TIGER & BUNNY』やNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』などを執筆した西田征史が担当し、ヒットドラマを打ち出してきた実力ある製作陣が揃っていた。そんな製作陣の要望にしっかり演技で応えてきたのが役者陣だ。W主演となった中村倫也と有村架純の脇を、若手俳優の赤楚衛二、ベテランのさだまさしが固める。コメディ感をプラスしながら社会問題はしっかりと取り上げる、見応えはあるが重くなりすぎないという絶妙な塩梅のリーガルドラマに視聴者たちは毎週唸らされてきた。しかし9月2日放送の第8話ほど、視聴者を驚愕させたラストはなかった。

グルメサイト問題の中で明らかになった、石子の“敬語”の意味

 第8話は、“隠れ家”を売りにする創作料理店「inside」の店主・香山信彦(梶原善)からの依頼ではじまった。「食べログ」を思わせるグルメサイト「ウマレポ」に知らないうちに情報が掲載されてしまい、運営会社のドットMに削除申請をしたもののまったく応じなかったため、潮法律事務所を頼ってきたのだ。ドットM側の担当弁護士は、羽男(中村倫也)の因縁の相手である丹澤(宮野真守)。お互いの主張は平行線で情報削除の交渉は決裂、裁判で争うことになる。

 羽男と石子(有村架純)は裁判に向けて店側に有利な証言をしてくれる人を集めようと常連たちに話を聞く中で、元アルバイトの沙月(橘美緒)に証言してもらうのがいいという話に。しかし、沙月に話を聞くと、彼女こそがウマレポに投稿したハンドルネーム「おかわり名人」本人だという。さらに、香山の息子夫婦の洋(堀井新太)と蘭(小池里奈)は海外赴任しているという話だったが、蘭と友人だという沙月の情報により、東京にいることが判明。3年ほど前に洋と大ゲンカになり、疎遠になったため、海外赴任だと常連に嘘をついていたのだ。羽男は香山の代わりに洋たちと会うが、彼もまた、ウマレポへの掲載は賛成だった。10坪の小さい店でただでさえ客の数も少ないのに、常連にサービスしすぎるため店のもうけはほとんどなく、母親が別で働いて家族を支えていたと振り返る洋。3年前に母親が亡くなった時に、採算度外視の経営について意見したことが父親と疎遠になった原因だったという。

 これに石子は自分とダブらせてしまう。父・綿郎(さだまさし)もまた、人のためにと採算度外視で弁護の仕事を請け負い、石子の母親が外で働いてそれを支え、結果的に離婚してしまったのだった。「ずぶぬれになった人に傘を差し出すことで、他の誰かがぬれることになってもいいんですか?」「お父さんが傘を差し出した後ろで、お母さんはずぶぬれだったんですよ!」と感情を爆発させた石子。綿郎に対して常に敬語なのは、人助けとはいえしっかり報酬はいただくという“ルール”にこだわっていたのは、すべてこのことが原因だった。

 元バイトも息子も、香山に有利になるような証言が望めそうもない。さらに、一度も取材を受けたことがないと断言していたのに、15年前に地元のタウン誌の取材を受けて紹介された過去があり、“隠れ家”を徹底できていなかった。完全に劣勢の羽男。「おかわり名人」のレビューの文体に不自然な点を発見した羽男は、「おかわり名人」は沙月と蘭の共同名義だったことを突き止める。ウマレポ掲載効果で店の売り上げが伸びれば夫・洋の言い分を香山が理解してくれるのではと考えた蘭が、香山の料理のおいしさを広めたかった沙月に「inside」のレビューを頼んだのだった。沙月と蘭は謝罪し、レビューの削除を受け入れてもらえるが、それでは店舗情報自体は消えない。丹澤に交渉しに行くが、一度受け入れてしまえば同じような要求が相次ぐことを恐れたドットM側のプレッシャーもあって、丹澤は羽男の提案を相手にもしない。

 今回ばかりは駄目かもしれないとうろたえる羽男だが、この裁判の行方が世間からかなり注目されており、勝手にグルメサイトに情報を掲載されてしまうことの是非が議論されている記事を見た石子のアイディアで大逆転。裁判中、「知る権利があるように知られたくない権利もあるのでは」と羽男が弁論し、沙月のライター仲間がこの弁論を記事にすることで、世論はすっかり店主に同情的に。情報番組などでもこの話題が取り扱われたことで、ドットMには苦情が殺到。裁判では勝てそうもなかったが、この状況を受けてドットM側は譲歩することを決め、判決前に店舗情報も削除するので訴えは取り下げてほしいと丹澤から連絡が入る。イメージを大事にする企業相手の「負けるが勝ち」作戦が見事、成功したのだった。

 そして香山が隠れ家にこだわっていたのは、亡き妻の思いを守るためだったと明かされる。商社マン時代、働き詰めだった香山を心配し、あまり忙しくならない隠れ家スタイルの店をやってみたらと提案したのは妻のほうだった。香山はだから隠れ家にこだわっていたのだ。洋の意見も聞き入れ、1日3組限定で新規客も受け入れることに決めた香山は、真相を知った洋と和解。さらに石子と綿郎も、長年の確執を乗り越えて親子として仲を深めるのだった。

石子と羽男の絶妙な関係性にほっこりも…ラストの急展開

 第8話で印象的だったのが、信頼関係を深めてきた石子と羽男のコンビネーションだ。まず冒頭から、運営会社の担当弁護士が丹澤だったことが分かったときの石子と羽男の表情にSNS上の視聴者は沸いた。「丹澤の名刺見て顔がへの字になる羽男と石子かわいい」「羽男のへの字口を真似する石子がかわいすぎる」など、ユニークに感情を共有する2人のしぐさは格別だった。

 また、元アルバイトの沙月を訪ねようとする場面で、現在の沙月がノマドワーカーとして働いていると石子が説明をした際、羽男はふざけて「ドナドナ、カー?」「出窓メーカー?」「そばカレンダー?」「エビロブスター?」とふざけはじめる。石子が「もう少し泳がせまーす」と放置すると、羽男は「止めてよぉ~」と言うのだが、2人はどこか吹き出しそうでもあり、このアドリブのような気の抜けたやりとりに癒される視聴者が続出。このほかにも、石子が父親の綿郎と衝突するシーンでのさりげない羽男のアシストや、大庭(赤楚衛二)と3人で行った食事で玉こんにゃくがうまく掴めない羽男を「がんばれー、ファイトー」と棒読みで応援する石子など、二人のコンビ仲がこれまでになく深まっていることを思わせるシーンがてんこ盛りだった。

 それだけに、ラストの怒涛の展開のインパクトは相当だった。まず羽男。因縁の丹澤をやりこめ、颯爽と帰宅した羽男を自宅の前で待っていたのは、“家族はみな優秀”と信じて疑わない裁判官の父親・羽根岡泰助(イッセー尾形)。表情を固くする羽男に、「そろそろやりたいこともやり尽くしたでしょ。ね? 今の事務所は、佳男のふさわしい場所じゃないよ。私が頼んで、別のとこ話をつけてある。来週の火曜の午後、時間を作っときなさい」と一方的に告げ、羽男は「と…、と…、父さん……」と震えてしまう。思えば今回の事件は、石子と綿郎の父子関係だけでなく、羽男と泰助の父子関係についても伏線が忍ばされていた。家の経済事情を考え、奨学金で大学に通い、卒業後は「手堅いとこ」に就職したと話す洋に、「それはお父様への抗議もあって?」と聞いた羽男は、「そうですね」という洋の返事に、どこか陰のある表情で笑っていたのだ。はたして羽男は、石子のように父親と関係を再構築できるのか。

 さらに大庭だ。大庭が帰宅するとアパートの前には大勢の警察官が。そして「昨夜発生した放火事件の件で、署までご同行願えますか?」とパトカーで連行されてしまう。この展開に視聴者は阿鼻叫喚。次回予告では、面会室で「放火したってこと?」という羽男の問いに「話すことはありません」と淡々と告げる大庭の姿に加え、「大庭が夫を殺したんですよ?」と訴える女性の姿も。サブタイトルは「放火殺人」で、これまでになく重いストーリーとなりそうだ。畳み掛けるように不穏な展開で幕切れとなった第8話の続きは、ついに今夜22時から放送だ。

■番組情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー
TBS系毎週金曜22時~
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし ほか
脚本:西田征史
音楽:得田真裕
主題歌:RADWIMPS「人間ごっこ」(Muzinto Records / EMI)
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山本剛義
編成:中西真央、松岡洋太
製作著作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2022/09/09 12:00
ページ上部へ戻る

配給映画