『SAND LAND』大規模公開なのに2週目で早くもトップ10圏外…“東宝の聖闘士星矢”に?
#映画 #鳥山明
『ドラゴンボール』や『Dr.スランプ』などで知られる鳥山明氏の“隠れた名作”として知られる『SAND LAND』が初めてアニメ映画化されたが、思わぬ失速を見せている。
8月21日に興行通信社が発表した全国週末興行成績(18日~20日)で、映画『SAND LAND』は初登場6位となったが、28日発表の興行成績(25~27日)では公開2週目にして早くもトップ10圏外となってしまった。
同作は、水が失われた砂漠の世界を舞台に、悪魔の王子ベルゼブブが魔物のシーフや人間の保安官ラオとともに幻の泉を探す冒険ストーリーが描かれる。2000年にわずか1巻で完結した作品だが、数カ国語で翻訳出版されるなど高い評価を得ており、原作にはないパートも鳥山氏が考案したこともあって劇場版には期待も集まっていたが……。
「上映館数400以上という大規模スタート。25日からはMX4Dでの上映も始まり、合計444館となりましたが、動員数の伸びはほぼ見られませんでした。最初の公開3日間で興行収入は1.7億円という結果からある程度予想はできたのですが、各地で『ガラガラだった』との報告が聞かれ、“大コケ”と言っていい出足の悪さとなっています」(サブカルライター)
SNS上では「サンドランドどうしてこんなに面白い?ってくらい面白かった」「終始ワクワクハラハラ」「ドラゴンボールには無いような深いメッセージ性があって心打たれた」といった感想も見受けられる。実際、Filmarksや映画.comに寄せられるユーザーレビューも概ね高評価なのだが、大ヒットを見込んでいた配給会社の関係者たちは頭を抱えていることだろう。
「まず、『こんなに面白い映画から、よくあんなつまらなそうな予告編がつくれたな』という声も出るほど、予告編がまったく興味をそそらない。また、ターゲットもはっきりしません。公開時期から考えれば、子ども連れのファミリー層を狙ったのでしょうが、宣伝では『鳥山明』を前面に押し出しているため、鳥山作品で育った世代しか響かない形。しかしそもそもが知る人ぞ知る作品なので、よほどの鳥山ファンでなければわざわざ劇場まで足を運ばないでしょう。また、『ドラゴンボール』自体、テレビアニメの『ドラゴンボール超』の放送は2018年に終了していて新たなファン層を獲得できている状況ではないですし、90年代ほどではないにせよ、2010年代に入って劇場版アニメも連発されており、昨年の『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は前作に比べて興収は15億円もダウン、2010年代のシリーズでもっとも数字が悪かったように、“賞味期限”が切れかかっている。それだけに、『鳥山明作品』を押し出した宣伝自体が失敗だった印象です」(同)
最近の映画界は、ヒットと大コケの2極化が顕著になっている。
「80億円超の制作費を東映アニメーションが100%出資した実写映画『聖闘士星矢 The Beginning』は世界累計でも10億円にすら届かない大コケとなり、『ONE PIECE FILM RED』『THE FIRST SLAM DUNK』などによる大増益をかなり食いつぶしたと指摘されています。『SAND LAND』の配給元である東宝は『君たちはどう生きるか』や『キングダム 運命の炎』が大ヒット中ですが、『SAND LAND』が足を引っ張ることになりそうです」(同)
たった1巻で完結した20年以上前の作品を映画化することが、そもそも無謀だったのかもしれない。
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