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今週の『金曜ロードショー』を楽しむための基礎知識㉓

『となりのトトロ』公開当時、東宝が宣伝を“さぼった”?実は興行収入は微妙だった

『となりのトトロ』公開当時、東宝が宣伝をさぼった?実は興行収入は微妙だったの画像1
となりのトトロ』© 1988 Studio Ghibli

 金曜ロードショーは現在、夏休み定番企画・スタジオジブリ作品特集の真っ最中で今週は第二弾、『となりのトトロ』を放送。

『トトロ』は先週放送された『天空の城ラピュタ』に続くスタジオジブリ第二弾作品として1988年、高畑勲監督作『火垂るの墓』と同時上映された。都会から引っ越してきた姉妹が不思議な生き物と出会う『トトロ』と戦時中に兄妹が極貧の生活に追い込まれた挙句、死に至る「心中物」の『火垂るの墓』では作風が違いすぎる……。なので、この二本を同時上映したというのは当時も今も、ファンの突っ込みどころ。

 昭和30年代の農村に父・タツオと12歳の長女サツキ、4歳の次女メイの草壁一家が引っ越してくる。古びた家は近所の悪ガキ、カンタから「お化け屋敷」とからかわれている。家には子供にしか見えない「ススワタリ」という小さな黒い生き物がおり、サツキたちはそれを「まっくろくろすけ」と呼ぶことに。母親は体を悪くして遠くの病院に入院しており、姉妹は見舞いにいった折りに家にはお化けが住んでいると話すと、自分も早く退院してお化けを見たいと笑う。

 ある日、メイは不思議な生き物を見つけ後を追い、深い穴の底に落ちてしまう。穴の底には巨大な生き物が寝そべっていた。メイは怖がることもなく、その生き物を“トトロ”と名付ける。

 いつの間にか眠ってしまっていたメイはタツオとサツキにもトトロを見せてあげようとするが、トトロのいた穴につながる道は見つけられない。「うそじゃないもん、トトロいたもん!」と機嫌を悪くするメイにタツオは「トトロにはいつでも会えるわけじゃないんだ」と優しく諭すのであった。

 大学の非常勤講師をしているタツオは子供の突拍子もない話を疑ったり、笑ったりしない人で子供と同じ目線に立つ「大人こども」。宮崎駿監督の考える理想の父親というところだろう。

『となりのトトロ』公開当時、東宝が宣伝をさぼった?実は興行収入は微妙だったの画像2
となりのトトロ』© 1988 Studio Ghibli

 サツキとメイがバス停で父の帰りを待っていると、そこには不思議生き物が現れる。これがトトロか? 雨の中ずぶぬれのトトロにサツキは父の傘を貸してやり、トトロはお礼に笹の葉でできた包みをくれる。やがてトトロはバス停にやってきた巨大な猫……ネコバスに乗って行ってしまう。包みの中身は木の実で、サツキたちはそれを地面に埋める。

 埋めても何も起きないまま日は過ぎてゆく。だがある夜、サツキとメイは地面から大木が生え、トトロに抱えられ大空を舞う夢を見る。目が覚めると小さな芽が生えているのを見つけ、「夢だけど夢じゃなかった」と二人は大喜び。

 夏休みに入ったころ、母が入院している病院から電報が届き、そこには「レンラクコウ」の一文。「母に何か起きたのかもしれない……」とサツキは不安に。何しろ昭和30年代の農村なので、大学にいる父に連絡を取るのも一苦労。父は母が体調を崩して退院が伸びただけだと説明するが、姉妹は母が死んでしまうのではないかと心配になり、メイはひとりで病院に行こうとして行方知れずになってしまう。

 この母親のエピソードは、宮崎駿監督が小学生のころに実母が結核性脊椎炎で入院していたという実話を元にしたといわれており、小学6年生なのにメイの親代わりとして振る舞うサツキのモデルは、自分自身なのだ。親に甘えられない子供時代、しかも運動が苦手だったという宮崎監督は母を失うかも知れない不安を空想の世界を作ることで癒した。トトロは子供時代の自分自身にとって重要な「夢だけど夢じゃない」存在だった。

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