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「TOHOシネマズも被害者」独占禁止法違反捜査で浮かぶ“王様”の存在と映画業界

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ゴジラもご立腹?

 映画会社の東宝は子会社で全国に映画館を展開するTOHOシネマズが、公正取引委員会から独占禁止法違反(私的独占など)の疑いで調査を受けたことがわかった。3月4日には、東宝も調査協力要請について公式に発表し、物議を醸している。

「TOHOシネマズも被害者ですよ」

 一連のニュースに関して、そう提言するのは、ある映画業界関係者だ。

 これを機に「多種多様な作品がちゃんと愛され、映画館側の担当者がちゃんと自分たちで公開を決めて、その作品を面倒みられるような健全な業界になってほしい」――そう今回、内情の告発を決めたという。

 もともと、芸能や興行といった特殊な業界には裏で、独特な体質や習わしがあることは想像できるが、多くの人が趣味に映画を掲げることからも、我々オーディエンス側にとってもこの件は他人事ではないのだ。

「実は昔からTOHOシネマズで公開作品に関する決定権を牛耳っていて、”王様”と呼ばれている社員がいるんです。その人の選定で、年間1,000本以上ある邦画、洋画、メジャーやインディーズと、ありとあらゆる上映作品の可否を決めていたんですよ。最終的にはその“王様”が差配して決めるのは周知の事実で、配給会社のスタッフも直接その人にTOHOシネマズでの上映をお願いするしかない。もちろん大きな会社なので、各配給会社に対して担当者もいるんですが、現場の人たちは無関係です。なにせ、”王様”のいうことは絶対で、中にはある種、洗脳されているような社員もいますから」

 この関係者が吐露した、その人物の仕事っぷりの数々は、いささかドラマティックである。

「仮に“王様”の目を通していない作品が、他のシネコンでヒットすると『なんで俺のところに持ってこないで、他でヒットさせているんだ!うちに優先的に持ってこないのであれば、2度と扱わない』と機嫌を損ねてともすると出禁になる。また反対に、TOHOで上映する作品の客入りが芳しくないと、勝手に取り分のパーセンテージを大幅に下げる提案をしてきたり、こちらが納得いかず抗議すれば『では2度と手を組みません』とこれまた出禁に。ヒットには手厚く、コケれば窮地。本来なら、コケそうな作品をケアして、一緒に盛り上げる手立てを見つけるものでしょう。そして、例え配給側が都内の上映のみをTOHOシネマズにしたとして、地方はイオンシネマズ中心で……などと戦略をたてたい時があっても、もしその作品がヒットした場合に独占しておきたいからと、待てが入ることも。本来配給会社と映画館の関係は対等であるべきなのに、彼はそこまで口出ししてくるんです」

 なぜこんなことが曲がり通ってきたかというと、やはり都内の好立地で設備も良いTOHOシネマズというブランドは強く、配給会社からするとメジャー感が出るのでステータスになるというのだ。それに、愛情込めて創り上げた作品をひとりでも多くの人に届けたい配給側は、無理な要求をのまなければいけないケースも後を絶たないという。

「ほんとうに、出禁を言い渡された会社も多いんです。“王様”に謝罪へ伺えば、それで収まることもあります。ただ次からの取引で“縛り”みたいな条件が出されたり、忖度を促すよう握られてしまう会社も。私が聞いた話だと、供給側が取り分を自ら少なくしたり、他の映画館で決まっていた自社の作品を全て引っぺがして、TOHOシネマズだけに差し上げたり……。商売というより、もう“王様”の好き嫌いとご都合による“殿様商売”がまかり通ってるんですよ」

 そして残酷にも、上映が決まっても油断はできないそうだ。

「例えば公開1週目で動員数が少ないと、露骨に翌週から上映スケジュールが早朝の時間帯のみなどに回されたり、あまり期待が持てない場合はそもそも、ポスターや予告などの宣伝をしてくれなかったりして、短期間で上映を終了させたい魂胆がみえみえなんです。“数字がよくないから”と、あたかも作品の出来の問題とされますが、それも“王様”の差配によるほぼいやがらせみたいなものだし、とにかく周囲から恨みをかっていますよ。だから今回、その膿が外に出てきたのでしょう」

 上映数や予告を目にする機会が多いことは、作品の期待値を推測するのに役立てていることがある。ただ、それが誰ぞかの意思だけで意図的にコントロールされているとなれば、やはり市場は競争がなくなり、成長は止まってしまう。無難な作品に人気が一極集中し、他の作品が陽の目を見る機会が奪われることは、残念なことでならない。

「大きい会社ですから、本社もコメントしている通り、このままってワケにはいかないと思うんですよね。“王様”の存在はリスキーでしかないので、社内で詳しく調査されて、飛ばされるだろうね。そうすれば治安は保たれ、映画館のサイズや権力を前に無理強いされることがなくなり、様々な作品が世に出る機会が増えるでしょう。そう願います」

 ”王様”の一任で、会社だけでなく、映画業界までも揺るがす事態になっていたとは…….。

与良天悟(芸能ライター)

1984年、千葉県出身のウェブメディア編集者。某カルチャー系メディアで音楽や演劇を中心にインタビューなどを担当するほか、フリーで地元千葉県の企業の記事なども請け負っている。

よらてんご

最終更新:2022/03/14 15:02
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