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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.752

インターン制度を悪用した企業犯罪を映画化 ペ・ドゥナが慟哭する『あしたの少女』

「次のソヒ」を防ぐためにできること

インターン制度を悪用した企業犯罪を映画化 ペ・ドゥナが慟哭する『あしたの少女』の画像5
企業側は、亡くなったソヒは素行に問題があったと中傷する

 是枝裕和監督の『空気人形』(09)や『ベイビー・ブローカー』(22)にも出演した韓国の人気俳優ぺ・ドゥナが、チョン・ジュリ監督の『私の少女』に続いて、警官役を演じている。ぺ・ドゥナ演じるユジンは、チョン・ジュリ監督が創作したキャラクターだ。

ジュリ「『私の少女』でぺ・ドゥナさんが演じた警官はヨンナムという名前でしたが、今回はユジンという役名です。名前が違うので別人ではありますが、どちらも警察大学を卒業し、男性社会である警察組織でずっと仕事をしてきた女性です。『私の少女』と『あしたの少女』は異なる世界の物語ですが、両作をご覧になった方はとてもよく似たキャラクターがいると思っていただいてかまいません」

 ペ・ドゥナ演じるユジンが責任逃れする企業側や教師たちを糾弾することで、本作を観ている我々はひとまず溜飲を下げることができる。だが、若手女優キム・シウンにとっては、今回のソヒはかなりのハードな役だったに違いない。

ジュリ「ひとりで追い詰められていく役だったので、キム・シウンさんは大変だったと思います。『私の少女』に出てくれたキム・セロンさんも継父から虐待される役で大変だったのですが、新人監督だった私は何もケアできなかったんです。それもあって、今回はシウンさんをケアしなくてはと思っていたんですが、大したことはできませんでした。私にできたことは『演技をしている間はソヒだけど、それ以外の時間はキム・シウンに戻ってください』と話したことぐらいです。監督が掛ける言葉としては平凡すぎるものですが、シウンさんは『あの言葉を掛けてもらえたことで、撮影を乗り切ることができました』と言ってくれたんです。彼女の言葉に、私も救われたように思います」

 韓国では、『あしたの少女』の英題『Next Sohee』にちなんだ「次のソヒ防止法」という通称で呼ばれる労働法が法制化される見込みとなっている。隣国の労働状況は変わっていくのだろうか。

ジュリ「人間が幸せに生きられるかどうかは、社会の制度によるところが大きいと私は考えています。法の死角となっていた実習生たちにとっての労働基準法となる法案ができたことは、よかったと思います。でも、あくまでも基準法なので、もっと踏み込んだ法律も必要になってくるでしょう。一方、労働時間を従来の週52時間から週69時間に増やそうという動きも出ています。人を幸せにする制度がつくられることもあれば、苦しめる制度ができることもあるわけです。よりよい制度が運営されるよう、今後もしっかりと話し合っていくことが大切なのではないでしょうか」

 インターンシップや技能実習という制度のもとで、若者や外国人労働者たちが搾取されている現実が、日本にも存在している。労働階級の下層にいる人間ほど、都合よく使い回され、切り捨てられているのはどこの社会でも起きていることだろう。「次のソヒ」は決して他人事ではない。

『あしたの少女』
監督・脚本/チョン・ジュリ 撮影/キム・イルヒョン 音楽/チャン・ヨンギュ
出演/ぺ・ドゥナ、キム・シウン、チョン・フェリン、カン・ヒョンオ、パク・ウヨン、チョン・スハ、シム・ヒソプ、チェ・ヒジン
配給/ライツキューブ PG12 8月25日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
©2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.
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最終更新:2023/08/24 19:00
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