Netflix配信『ルーシー・ブラックマン事件』 日本社会の闇に消えた元英国客室乗務員
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お金さえあれば何でもできるという風潮
山本兵衛監督が「ルーシー・ブラックマン事件」に強い関心を持つようになった『黒い迷宮』では、犯人・織原城二は裕福な「在日韓国人」一家に生まれ、21歳で日本に帰化したことについても触れている。だが、本作では織原の生い立ちには言及しない形でまとめてある。
山本「複雑なアイデンティティーが犯人の人格形成に影響を与えたであろうことは、容易に推測することはできます。しかし、そこを掘り下げていくと事件の本筋から大きく離れていくことになるので、本作ではあえて触れていません。あくまでも事件に向き合った捜査官たちの視点から描いたドキュメンタリーとしてまとめています」
英国人社長が理不尽な理由で解任されたオリンパス事件の真相を追った『サムライと愚か者』、カルロス・ゴーン元日産会長の栄光の日々と逃亡劇の裏側を描いた『逃亡者 カルロス・ゴーン』などのドキュメンタリーを手掛けてきた山本監督は、今回の取材を通して「ルーシー・ブラックマン事件」をどのように受け止めているのだろうか。
山本「グローバル化が進み、日本社会の転換期にあたる時代に起きた事件だったんじゃないでしょうか。当時の六本木には、ITバブルで潤っていた人たちが群がっていました。お金さえあれば何でもできるという風潮が強かった。また、1990年代後半からゼロ年代は、凶悪犯罪が多発した時代でもありました。日本社会の闇に、ルーシーさんは呑み込まれてしまったと言えるかもしれません。捜査官たちは生前のルーシーさんと面識があったわけではありませんが、7月になるとルーシーさんを偲んで線香を灯すそうです。ルーシーさんの遺体が見つかった三浦半島の洞窟まで、毎年2月に供養に向かう捜査官たちもいます。そうしたところも含め、日本で起きた事件なんだなと感じさせますね」
ルーシーさんが亡くなって23年の歳月が経つ。だが、性犯罪の被害者が加害者を訴えにくく、被害者数が水面下で増え続けるという状況は当時から変わっていない。ルーシー・ブラックマン事件が日本社会に残した問題点は、今も残されたままとなっている。
Netflixドキュメンタリー『警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件』
原案/髙尾昌司 監督/山本兵衛
7月26日(水)よりNetflixにて独占配信
https://www.netflix.com/title/81452288
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