『らんまん』寿恵子と弥江が高藤をぶった斬る“神回”だけじゃない、“神週”の第11週
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寿恵子(浜辺南)が高藤を笑顔で振った瞬間、日本中の視聴者が一斉に「ざまあ!」と叫んだのではないでしょうか。あー、すっきりした。主人公の恋敵という憎まれ役を見事に演じ切った伊礼彼方さん、お疲れ様でした。あの金曜日は、私の中で神回認定です。
というか、「ユウガオ」の週は「神週」、本当にすばらしい1週間でした。神週を締めくくった「ユウガオのお姫様」な寿恵子ちゃんの美しさを語る前に、まずは徳永助教授(田中哲司)の「夕顔」の話から。学会誌を作ろうと東大植物学教室が団結していくのを、ひとり、苦々しげに見ている徳永助教授。しかし、田邊教授(要潤)の「学会誌が水準に達していなければ金を出さず、一冊残らず燃やさせる」という言葉で、顔色が変わる。ぎこちない「アサガオ、ヒルガオ、ユウガオ。一つだけ異なるのは、ど…ど~れだ?」クイズを出して、異なっているユウガオを好きだ、源氏物語に出てくるから、と万太郎に打ち明ける徳永助教授。文学を愛する助教授にとって、田邊教授の「本を燃やす」発言は、人の努力をなんとも思わない冷酷さと、書物への愛のなさを感じて、二重のショックだったんじゃないかなあ。
学生たちの笑い声を聞いて窓を開けた徳永助教授が目にするユウガオの花。専門外の植物学教室で働く自分のことを、アサガオとヒルガオに囲まれたユウガオのように感じていたのかもしれないけれど、ここには万葉集を好きだと言う万太郎(神木隆之介)がいる。ユウガオの花を見てうれしそうに笑う助教授は、もう孤独ではないはず。そんな彼とは逆に、学生たちをシャットアウトするように窓を閉めた田邊教授。すばらしい仕上がりの学会誌を燃やす気はないようだけど、発案したのは自分として、手柄を横取りするつもりらしい……どうなるんだろう、万太郎の立場。
万太郎たちが学会誌作りに奔走する間、寿恵子が高藤の妾になる話がどんどん進む。誰かの不自然な立ち聞きで話が動くのは朝ドラあるあるですが、レストランで働く竹雄(志尊淳)が、客の高藤と元老院の議官・白川(三上市朗)、そして寿恵子の話を聞いてしまうのは、ぎりぎり自然の範囲内。ナイスボウイ。しかし彼らの会話、あの時代の男たちの嫌な感じを全部入りで煮詰めた感じでドロドロでしたね。「菓子屋の娘」「男児が産めなければ離縁」「私の妻というだけで、女ではなか」……こんなのをダラダラ聞かされる地獄! それも高藤たち、本気で「寿恵子を守ってあげる」「男と女は対等として扱ってあげる」と考えてるんですよ。最悪。
モヤモヤがピークになった金曜、華々しい発足式で、高藤たちの考えの浅さを、寿恵子がぶった斬る。振られた高藤は妻に慰めてもらう……のかと思いきや、妻の弥江さん(梅舟惟永)がトドメを刺す流れ、マジ最高。夫からの扱いの酷さを砥石として、彼女が長年研いでいた刀、いい切れ味でした。女たちが攻撃し合うのではなく、真の敵に向かって怒りを表明する気持ちの良さ。母から「男を待つばかりではつまらない、自分の機嫌は自分でとる」と言われていた寿恵子。彼女は待つのをやめて、心のままに、馬車にも乗らず、万太郎のところへ走ってきた。夕闇を明るくするユウガオのお姫様、最高でしたね。
……なんか語彙力不足で「最高」連発ですが、この週は本当に「最高」なシーンばかりで。波多野(前原滉)の「人生は器、その器をパンパンにしていくことが生きるってこと」とか。クララ先生(アナンダ・ジェイコブズ)の最後の授業とか。大畑印刷所の辞める辞める寂しいぞコントとか。大安を待ちわび、白梅堂の表の戸が開けられるまで、暗いうちから立っていただろう印刷所の親方(奥田瑛二)とか。文太さん(池内万作)の「時がきましたか」とか。寿恵子の美しさを見ておまんじゅうをうっとり食いする佳代(田村芽実)とか。画家の野宮さん(亀田佳明)も、丈之助(山脇辰哉)も……万太郎と寿恵子を囲む人たちがみんな本当に魅力的で最高。今後も最高な神回を増やし続けると期待してしまう『らんまん』。万太郎と寿恵子の幸せを噛み締めてはいるのですが、残る心配は、やはり竹雄。全員がもれなく幸せになる最高な物語、待ってます。
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NHK連続テレビ小説『らんまん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこうほか
作:長田育恵
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん「愛の花」
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
植物監修:田中伸幸
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/ranman
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