トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『らんまん』竹雄はいつまで万太郎の相棒?
朝ドラWATCHコラム『らんまん』第10週

『らんまん』竹雄はいつまで万太郎の横を走り続けられるのか(第10週)

『らんまん』竹雄はいつまで万太郎の横を走り続けられるのか(第10週)の画像
イラスト/渡辺裕子

 万太郎(神木隆之介)が「こんなにかわいい花じゃけんど、おまんのトゲは痛いのう」と地面に這いつくばるようにして愛でる、可憐なノアザミ。愛らしい花の様子とは裏腹に、摘み取ろうとする指を刺す鋭いトゲを持ち、空を見上げて力強く咲く。そんなノアザミは、寿恵子(浜辺美波)によく似ている気がします。一見かわいらしいのに、厳しいダンスの練習から逃げ出さない強さを合わせ持つところが。そういえばダンスのためにあつらえたドレスも、ノアザミの色をぐっと濃くしたようなピンク。

 そんな寿恵子の母・マツ(牧瀬里穂)もまた、ノアザミのようですね。恵まれた暮らしを与えられたけれど、なかなか訪ねてこない男を待つ妾の立場はつらいもの。それでも男を待つばかりではなく、楽しみを見つけ、凛として生きている。そんな母を見てきた寿恵子は同じように、高藤(伊礼彼方)の妾として横浜の屋敷で暮らす道を選ぶんでしょうか、「男の人のために、あんたがいるんじゃないの。あんたはあんた自身のために、ここにいるの。だから、いつだって自分の機嫌は自分でとること」と母に教えられた「奥の手」を唱えながら。でもね、いい言葉として使われる「自分の機嫌は~」、主旨はたいへんよくわかるんですが、心やさしい人ほど、誰かを責めずに「自分の機嫌は自分で」と我慢しがちじゃないですか? 私個人としては、自分の機嫌は自分でとりつつも、機嫌を損ねるような行為に関しては、きっちり抗議してほしいなあと思ったりしてます。寿恵子本人に何の説明もなく訪ねてこなくなった万太郎に「自分のことだけ考えてるのずるくないですか? 待つ人の気持ちを考えられないんですか? ばかなんですか?」って言い放って欲しい、おいしい水ようかんを頬張りながら。楽しむことと正当に怒ることは、両立すると思うんですよねー。

 しかし寿恵子ちゃん、誰を待つ人生を選んでもいいけど、あるいは待たなくてもいいけど、高藤はやめとけ。使用人たちに「妻は退屈」とか言っちゃう男、ろくなもんじゃない。自分の目を見て話す寿恵子をほめそやすけれど、自分は妻・弥江(梅舟惟永)の目を見て話し合ったこと、絶対ないはず、100かる焼きかけてもいい。夫とダンスはしないのかと寿恵子に問われて「今更」と苦々しい表情で答える弥江、彼女もノアザミかもしれない。夫にはトゲの部分しか見てもらえないけれど、本当は気高く咲いている花。

 と、美しいノアザミたちが迷いながら咲いている頃、万太郎は植物学の学会誌を発行するために奔走。学芸会のようなお芝居をして、大学の先輩たちから原稿を書いてもらう約束をとりつけ、目次だけはできて大喜び。波多野(前原滉)と藤丸(前原瑞樹)と万太郎、すっかり仲良しトリオになりましたね。そして自分が描いた通りの絵を印刷したいと、当時最新技術の石版印刷の印刷所で、教授料を払った上で働いて技術を教えてもらうことに。新しい印刷技術が出てきたことで、いなくなっていく昔ながらの職人たち。子どもたちの手作りやじろべえを踏み潰していく、寿恵子の乗った馬車。大きな変化の真ん中にいるふたりだけれど、「消えたがじゃない、新たな場所に根づいて芽吹いていくがじゃと思います」と古いものに気持ちを寄り添わせる万太郎、優しくて強い。

 こうして万太郎は大学も行きつつ植物も採取して家で研究、そして印刷所での仕事。忙しすぎるしお金も出ていくしで、竹雄(志尊淳)の心配は尽きず、その気持ちは万太郎の走りを止めてしまうこともある。ケンカしたのちにとうとう「若」呼びから「万太郎」呼びになった竹雄だけれど、彼はいつまで相棒として万太郎の横を走り続けられるのか。『あさイチ』のゲストとして早めに呼ばれていることも不安の種、あの番組に出るとすぐに朝ドラから退場するいつもの流れ、今回は発動しないでほしいー。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『らんまん
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこうほか
作:長田育恵
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん「愛の花」
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
植物監修:田中伸幸
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/ranman

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

わたなべひろこ

最終更新:2023/06/12 06:00
ページ上部へ戻る

配給映画