三井不動産やトヨタへの転職も…退社後にフリー転身を選ばない局アナが増加中のワケ
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アナウンサーといえば、一時は局を退職後はフリーに転身する例が定番と呼べそうなほどに多かったが、近年は別業種への転職が増えているようだ。早期退職制度を利用してNHKを退局することが各メディアで報じられた松尾剛アナウンサーも、独立の意向はないという。
松尾アナは2020年4月から広島放送局に所属しているが、東京アナウンス室時代は『NHK NEWS おはよう日本』や『ニュース シブ5時』などを担当したことで知られ、トレードマークのメガネと穏やかな語り口調で視聴者に親しまれていた。
松尾アナの退局は6月7日に一斉に報じられたが、今年5月のG7広島サミットの取材がひと区切りになったとされ、7月の定期異動を前に退局を決断したとみられる。退局はプライベートな理由だといい、次の仕事は未定で、フリーへの転向や民放への移籍の意向はないとのこと。早ければ今月いっぱいで退局するという。
NHKは定期的な異動があり、大阪放送局へ単身赴任してから2年後に退局した武田真一アナなど、地方転勤後の仕事が一段落してから退局するケースは少なくない。またNHKのアナウンサーといえば、退局後は、『news zero』(日本テレビ系)のメインキャスターを務める有働由美子アナや、今年4月から『DayDay.』(同)のMCに起用された武田真一アナ、『ぽかぽか』(フジテレビ系)などの神田愛花アナのようにフリー転身が定番だったが、松尾アナは十分な実績がありながらフリーの道を選ばないようだ。
しかし、松尾アナに限らず、近年はNHKアナが退局してもフリーアナにならないケースが増えている。2017年入局で『おはよう日本』のスポーツコーナーなどに出演していた堀菜保子アナは、今年3月いっぱいで退局したが、4月から民間シンクタンク「みずほリサーチ&テクノロジーズ」へ転職した。
さらに、『ブラタモリ』のアシスタントや『あさイチ』の司会で知られた近江友里恵アナは2021年3月いっぱいで退局し、同年4月から三井不動産の社員に転身。抜群の安定感で『首都圏ニュース845』や『クローズアップ現代』などを担当した内多勝康アナは、NHK入局から30年となった2016年に退職し、50代で医療的ケア児の短期入所施設「もみじの家」のハウスマネージャーに転職した。
民放でも同様の傾向があり、昨年いっぱいでTBSを退社した国山ハセン氏はビジネス映像メディアを運営する企業で「映像プロデューサー」を務めながらタレントとしても活動。元日本テレビの桝太一アナは、フリーアナとしての活動も継続しつつ、同志社大学ハリス理化学研究所の助教として研究職の道を歩んでいる。また、元テレビ朝日の富川悠太氏は昨年4月にトヨタ自動車に入社し、オウンドメディア「トヨタイムズニュース」のキャスターを務めたり、不祥事で降板した香川照之に代わって同社のCMに出演したりしている。
「脱フリー」傾向が強まってきた背景には、フリーアナ業界の競争の激化が指摘されている。テレビでレギュラーを持てるような華やかな活躍をしているフリーアナはほんの一握りで、イベント司会などの営業がメインになっているケースが少なくない。女子アナで過激グラビアなどのお色気路線に走るような事例もあり、アナウンサーなのかタレントなのかよくわからない状況になっていることも珍しくない。神田アナは先月放送の『ぽかぽか』で、「NHKにいた時は、アナウンサーの仕事をしてないフリーアナウンサーを『何だ?』と思ってました」と本音をこぼした後、辞めてみて初めて「フリーアナにアナウンサー本来の仕事はなかなかこない」という状況があることを知ったと話していた。
それでも、NHK出身者は有働アナや武田アナ、TBS系『報道特集』のメインキャスターを務める膳場貴子アナなど民放で別格の扱いとなっていたアナウンサーも少なくないのだが、最近では全国ネットのレギュラーが消滅した堀尾正明アナらのように失速するパターンも増加。バラエティを中心に活躍を見せている神田アナのように、NHKブランドに頼らない武器を身につけないと生き残りが難しくなってきている。
加えて、テレビというメディア自体が斜陽化し、業界にしがみついているメリットがかつてほどなくなったことも、フリーアナへの転身をためらわせている要因のひとつだろう。
かつてフリーアナは局アナと比べて収入が大幅増するとして羨望の的だったが、独立後に鳴かず飛ばずになるくらいなら、やりがいのある別の仕事に転職したほうがいい……と現実的な判断をするケースが増えてきたのかもしれない。今後さらにフリーアナ業界の競争が加速していくのは必至で、熾烈な生き残りバトルを避け、退社後に別業種を選ぶ「脱アナ」の動きが進みそうだ。
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