一番“ガッカリ”は『unknown』か『教場0』か? 春ドラマ序盤ランキング
#ドラマ #unknown #教場 #あなたがしてくれなくても #ラストマン
民放ゴールデン・プライム帯の冬ドラマは、多くがすでに第5話まで進むなど序盤というより中盤に差し掛かっているが、最後発の『日曜の夜ぐらいは…』がやっと3話まで進んだこのタイミングで、恒例の民放連ドラ「序盤ランキング」を行いたい。
今回もまた序盤(中盤)までの内容から、今後も楽しく観られそうな「期待作」と、放送前の期待や初回の内容に反して……な出来だった「ガッカリ作」を3作ずつピックアップする。なお、本企画ではシリーズ物の新作(『特捜9』など)は除外とする。
期待のドラマ3位 『弁護士ソドム』金曜20時~(テレビ東京系)
〈あらすじ〉
小田切渉(福士蒼汰)は、詐欺加害者専門の弁護士。金にならない仕事は全く引き受けない。刑事弁護を儲からない仕事とけなし、民事弁護を中心に活動している。詐欺加害者を弁護するということは、騙された弱者ではなく騙した側に味方するということ。その人道にもとるやり方や、強引な手法・拝金主義から、法曹界では、「退廃」や「悪徳」の象徴とされる言葉「ソドム」という忌まわしい名前で呼ばれている。しかし、渉が詐欺師を弁護するのにはある目的があって…。
テレビ東京の金曜8時枠が「ドラマ8」としてリニューアルされ、より若い世代向けに。その第一弾となる『弁護士ソドム』は、身も蓋もない言い方をすれば「弁護士版『クロサギ』」だ。
母の死の裏には「牧師」なる詐欺師界のフィクサー的存在がチラつき、主人公は表向き詐欺加害者専門の悪徳弁護士となって、復讐のために牧師の情報を追い求めながら、弁護を請け負った詐欺師たちを裏で成敗する。正義感の強い女性(本作では玄理演じる若手弁護士)が介入し、主人公を気にかけるあたりもまんま『クロサギ』で、光石研が“親代わり”的存在の弁護士事務所所長を演じているが、これで光石研が黒幕だったら「それってパクリじゃないですか?」状態となりそうだ。
『クロサギ』との違いは、主人公がチームを組んでいること、主人公が華麗なアクションシーンも決める武闘派でもあること、そして弁護士であることだ。おそらくは詐欺を憎んでいるはずの弁護士が、表向きは詐欺師を弁護し、裏では違法なやり方で詐欺師を裁く。第2話で早くも玄理演じる若手弁護士にツッコまれていたが、そのアンビバレントな部分をどう決着させるのか。第1話では、冒頭のマッチングアプリを使ったロマンス詐欺が、物語への導入のための事件かと思いきや、メインのリフォーム詐欺にもつながっている構成もよかった。その第1話が2時間スペシャルというのはさすがに冗長だったが、勧善懲悪型のエンタメドラマとして基本的にはテンポもよく、『リコカツ』(TBS系)の泉澤陽子がメイン脚本家のようなので期待もできる。さすがにオチまで『クロサギ』をなぞることはないだろうと信頼して、今期「期待のドラマ」3位にした。
ただ、懸念点もちらほらある。詐欺師たちを陥れるやり方が少々ずさんなのだ。第1話では、リフォーム詐欺の詐欺師を架空の不動産投資話で引っ掛けるが、その際に被害者を(変装はさせているが)仕掛け人側として詐欺師の前に引っ張り出してきた。当然、「どこかで見たことあるような……」などと言われるわけだが、被害者を事件に巻き込むのは“クロサギ的”とはいっても、さすがに詐欺師を騙す場面で、顔が割れている被害者を使うのはありえなさすぎる。また、弁護士である主人公が、詐欺師への報復という“裏の仕事”を比較的堂々とやっているのも気になる。主人公が弁護士であるという設定がもう少し生きるといいが……。原作のないオリジナルストーリーだけにもっと新鮮な展開があると期待したい。
期待のドラマ2位 『あなたがしてくれなくても』木曜22時~(フジテレビ系)
〈あらすじ〉
吉野みち(奈緒)はフタバ建設・営業推進部で働くOL。結婚して5年になる夫・陽一(永山瑛太)との仲は良いが、いつの間にか夫は自分に触れなくなった。セックスレスになって2年。みちは人知れず悩みを抱えていた。レスのことでここ数日ギクシャクしていた陽一は抱きしめ、「今日は遅いから別の日に」と約束する。だが、その約束の夜、陽一から“少し遅くなる”と連絡が入る。またすれ違ってしまいそうな不安に一人駆られるみち。するとそこに営業一部の上司・新名誠(岩田剛典)が現れて…。
セックスレスと不倫がテーマということで、すでに配信を中心に反響を起こしているこのドラマは、(原作そのものの構成だが)セックスレスのカップル2組を用意して、“することで愛を確かめたい側”と“愛があるのだからしなくてもいいのでは側”のそれぞれの心情を丁寧に掘り下げており、「相手に理解してもらえない」寂しさと「誰かに理解してもらえる」喜びが主軸になっているように思う。「陽一はひどい」なのか、「みちは重い」なのか、感情移入するキャラは人によって違うだろうし、(不倫が始まる前の時点では)どちらかが決定的に悪いわけではないというビターな夫婦間のすれ違いが描かれ、だからこそ“語りたくなる”ドラマになっている。
『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』のスタッフ再集結作ということで、特にヒロインが不倫に踏み出すまでの過程をじっくり追っている点や、意外性のある歌謡曲の起用(今回は稲葉浩志がカバーした「ダンスはうまく踊れない」が挿入歌に)といった“らしい”点も、なかなか他のドラマでは最近見かけない要素となっており、本作の個性となっているだろう。奈緒と永山瑛太はさすがの一言だが、歩み寄ってくれない妻との関係に心の奥では疲れ切っているものの、弱弱しいつくり笑いを浮かべている岩田剛典も、仕事にいっぱいいっぱいになるあまり、余裕がなくて周囲にキツく当たってしまう田中みな実も悪くない。
陽一まわりの設定が原作とは大きく変更されているが、他人への関心が薄く、自分の世界に没頭しがちな陽一というキャラクターは、カフェの雇われ店長という、“一国の主”だがオーナーではないという不安定な立場とも重なるところがあり、それは誰にも知られずに不倫に足を踏み込みやすいという設定でもあるといえ、おもしろい脚色だ(原作ではサラリーマンが社内不倫をする形となっている)。原作も完結していないため、どういう着地になるのかも含め、今後も楽しめそうなドラマだ。
期待のドラマ1位 『ラストマンー全盲の捜査官ー』日曜21:00~(TBS系)
〈あらすじ〉
全盲のFBI(米連邦捜査局)捜査官・皆実広見(福山雅治)は、どんな難事件も必ず最後に解決させることから“ラストマン”と呼ばれていた。日本の警察庁とFBIの連携強化を目的に、期間限定で日本にやって来た。そして、皆実のアテンドを命じられたのが、警察庁人材交流企画室の室長・護道心太朗(大泉洋)。誰よりも悪を憎み、犯人検挙のためには手段をいとわない刑事である。だが、2人の出会いは最悪だった――。
正直言って今期は、ずば抜けた作品というものはないように思う。そのため、観る人の好みや求めるものによって、いつも以上に意見が大きく分かれやすいクールではないだろうか。とはいえ、『ラストマン』は、凄腕FBI捜査官が日本にやってきてバリバリ事件を解決していく、人たらし刑事と孤高の刑事がバディを組むなど、いかにもベタベタではあるが、そんな手垢まみれの設定・物語を、初回からテンポよく、エンタメとして魅せる黒岩勉の話運びの巧みさが際立った。第3話では皆実(福山雅治)の活躍一辺倒で終わらない展開で“ひねり”を入れたり、本作の本筋となりそうな皆実の来日理由への伏線的なセリフも絶妙な塩梅で各話にちらつかせており、飽きのこない魅せ方はさすがだ。
加えて本作の最大の魅力は、福山雅治の“変人”キャラと、それを支える大泉洋のうまさにある。福山の“変人”キャラは『ガリレオ』シリーズぶりといえそうだが、やはりハマる。だが特に今回は、大泉洋がここ数年(主に安住紳一郎のフリを受けて『ぴったんこカン・カン』などで)披露してきた福山雅治漫談の影響で“スター福山”というキャラクターが確立しているのも大きく、福山自身が現実でも“スター福山”に寄せていっているように、本作の皆実というキャラはほとんど“スター福山”を演じているように思えるのがおかしい。そして、犯人逮捕のために手段を選ばない孤高の刑事というシリアスな役柄をちゃんと担いつつ、(やりすぎない程度に)ツッコミ役を兼任する大泉洋の技量でもって、ギャグにならないギリギリのセンで成立させている。
ドラマで扱われる事件そのものはさほど新鮮味はない。また、視力のないはずの皆実が、AI画像認識や音声アシストもあるアイカメラという文明の利器だけでは説明のつかない行動(たとえば第3話ではなぜ劇中ドラマ『名刑事マイホームズ』のキャラクターの敬礼ポーズを皆実がマネできるのか等)をしたりとツッコミどころも少なくないが、皆実とシンディー(大泉洋)の掛け合いを中心に吉田羊、松尾諭らの強力なサポートもあって、俳優たちの演技の妙とテンポのよい展開のおかげでさほど気にならない。『アトムの童』『Get Ready!』など、ここのところターゲットを幅広くしようとして迷走感のあった日曜劇場だが、久々に日曜劇場らしいエンタメドラマになったのではないだろうか。抜群の安定感があるということで「期待のドラマ」1位とした。
期待のドラマ次点(4位)『Dr.チョコレート』土曜22時~(日本テレビ系)
前述のとおり、正直今期はずば抜けた作品は見当たらず、好みによってベストとワーストが大きく異なってくるだろう。この「期待のドラマ」の1位と2位の順位も個人的にはあまり意味がないが、3位と4位も入れ替わってもいいかもしれない。坂口健太郎主演の『Dr.チョコレート』は『弁護士ソドム』同様、特に期待はしていなかったが、意外におもしろいドラマだ。
義手の元医者(坂口健太郎)、10歳の天才外科医(白山乃愛)に、個性的な医療スペシャリストが集まってチームを組み、1億円の報酬と秘密保持契約、そしてチョコレートの用意があれば誰でも救うという荒唐無稽な設定。偶然にも前期のTBS日曜劇場『Get Ready!』を想起させる設定でもあるが、こちらはテンポよく話が進み、なぜこんな闇医者稼業をやっているかも明快。「その患者に命を救う価値があるか?」といった価値観を問うような面倒くさい問答は一切ない。また、こちらは基本的に復讐劇だが、その発端となる事件の実行犯は第2話ですぐに姿を見せたりと、視聴者の想像以上のスピードで物語が展開されるのもいい。『Get Ready!』もこれぐらい振り切れていたらよかったのかもしれない。
物語のカギとなる「二重螺旋のタトゥー」が闇医者チーム側のひとり(古川雄大)の腕にあった……という気になる設定のオチが、ただのシールだったというのはさすがにズッコけたが、元がマンガのような設定・ストーリーだけに、そこまで気にならないだろう。メイン2人の疑似親子的な関係性や、それを見守るチームの面々など、全体的にほっこり明るく、深みはないが一方で暗い・重い要素もないので、気楽に観られるドラマだ。オープニングに毎回「あんたら、この世の悪をオペする気だね?」というナレーションが入るところからも本作の“対象年齢”はうかがえるが、なんとなくこのテイストは90年代後半の日テレ土曜ドラマ(枠は同じ)を思わせるところもあり、30~40代にはどこか懐かしく感じられるのではないだろうか。
ちなみに気楽に観られるという意味では、仁村紗和や竹財輝之助らが個性的な脇役を演じていい味を出しているラブコメ『わたしのお嫁くん』も。それにしても今期のマンガ原作ドラマは、『あなたがしてくれなくても』にしろ『王様に捧ぐ薬指』にしろ、原作から大胆に設定やストーリーを変えている作品が目立つのは偶然なのだろうか。
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