日テレが縦読みマンガと縦型ドラマに参入したワケ 「スマホ以降」のテレビビジネス
#日本テレビ #インタビュー
動画の消費のされ方が、一方的に見て楽しむだけではなくなってきた
――『人類討伐』でいうと、具体的に福井さんはどれぐらいまで関わっているんでしょうか?
原 企画書を書いて、シナリオも全部ではないですけれど、書いています。やはり読者をひきつけるうえで、物語の最初の展開が重要なので、最初の展開はセリフも含めて書いています。ただ、福井は当然、熱量の高いタイプなんですけど(笑)、彼の成功体験だけで作ってもウェブトゥーンでは勝てないかもしれないと考えました。郷に入れば郷に従えじゃないですが、まずはウェブトゥーンのスタジオの編集者とブレストする機会をたくさん設けました。すごく若い、20代の編集者だったんですが、正解は福井じゃなくて、むしろスマホネイティブ世代の彼のほうにあると思うので、彼の意見をちゃんと吸収して作ろうというのを初期に確認しあいました。
――第一弾で配信されたのは、ゾンビと人類のダークファンタジーの『人類討伐』、異世界転生の『優秀魔法高校生の異世界改革記』、悪魔と取引をするフィギュアスケーターの話の『魔氷の誘惑』の3作で、特にファンタジーや異世界転生系はトレンドである反面、IPを作るという意味では展開が限られそうというか、実写化が想像つきにくい内容ですが、ウェブトゥーンのスタジオ側からの提案だったのでしょうか?
原 実はそれは相当、チーム内でも議論をしまして。やっぱりテレビ局なんだから、実写映像化を目指したものをやるべきなんじゃないかという意見も当然あって、一方で、ウェブトゥーンの今の市場を調べたときに、ヒットしているのはほとんどがいわゆる異世界転生モノとかファンタジー系のもので。まずはウェブトゥーンのノウハウを得るために、これも郷に入ればじゃないですが、ウェブトゥーンに特化したことをまずはやってみようと。そして、今はファンタジー系に寄っていますが、将来的には、読みというか、期待値も込めてですけど、タテ読みマンガはもっといろんなジャンルに広がっていくんじゃないかと考えていて、実写映像化を意識した作品も今後挑戦したいと考えています。
――まずはウェブトゥーン市場参入にあたってのチャレンジ段階ということですね。今回は第1弾ということですが、もうすでに第2弾に向けて動いているんでしょうか?
原 今年度にかけて何本か制作中のものがあります。名前はまだ言えませんが、映画でヒット作を手掛けるプロデューサーや、バラエティーを担当しているディクターや、連ドラの演出などが作っていて、それが今後出る予定です。
――原さんのいらっしゃるICTビジネス局は、TVerやHuluなど映像の配信ビジネスを主に扱ってらっしゃるそうですが、先ほどおっしゃってたZ世代向けのビジネスというところだと、昨年から始まった「Zドラマ」も?
原 Zドラマは僕たちのチームでやっています。ZドラマはZ世代をターゲットにしたドラマで、かつ、単純に映像にCMを挟むだけではなくて、ブランデッド広告の開発や、主題歌の制作と楽曲配信ビジネスを仕掛けたり、新しいマネタイズを組み込んでいます。あとは最近『音と画』という番組を放送したんですけれど、ウェブトゥーンがストーリーのIPだとすると、これは音楽のIPで、曲の原盤権をうちが持って、音楽配信とセットで番組を作るという試みです。
――ドラマでいうと、TikTok縦型ドラマも始まりました。
原 3月に『毎日はにかむ僕たちは。』という、縦型ドラマに特化したTikTokアカウントを始めました。それが今、開始1カ月(※取材時)ですが、とても好調で。低予算のオリジナルドラマなんですが、再生数やエンゲージメントを見ると、連ドラのアカウントに引けを取らないぐらい反応がいいんです。TikTokって、例えば女子高生がちょっと音楽に合わせて踊っているみたいな、一般ユーザーによる投稿がスタート当初は主流だったと思うんですけど、それがプロが投稿するコンテンツにシフトしてきているなと。その辺の市場は今後あると思ってますし、3月から始めてみて、かなり手応えを感じています。コメントがものすごくつくんです。YouTubeのコメントなどよりもTikTokのコメントのほうがすごく多いし、熱を感じます。やっぱり動画の消費のされ方自体が、一方的に見て楽しむっていうところから、変わってきているんだろうなと思います。最初にお話した「フォーマットが変わる」って、単純に横型が縦型になったとかだけではなくて、コミュニケーションの手段についてもどう変化するかという部分も考えなくてはと感じています。
――共通して「スマホ以降」というのが課題としてあるんですね。
原 スマホの登場はやっぱりインパクトがすごく大きかったですね。なのでテレビ以外のデバイスにも対応するという必要があって、それとニアリーイコールなんですけれど、テレビデバイスをメインに見る人が高齢化してきているので、若い世代にアプローチしなくてはいけないし、そのためには若いクリエイターが活躍できなくてはいけないし、そういう環境を社内的にどう作って、その結果として新しいビジネスをどう起こすか、ということが、大きなテーマだと思っています。
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