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山田裕貴ら俳優陣の演技が“極限の人間ドラマ”を描く『ペンディングトレイン』が発車

山田裕貴ら俳優陣の演技が“極限の人間ドラマ”を描く『ペンディングトレイン』が発車の画像
Paravi配信ページより

 山田裕貴主演のTBS系金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』の第1話が4月21日に15分拡大版で放送された。同ドラマは、電車の一部車両が車両ごと荒廃した世界にワープし、乗客たちが極限下を懸命に生きる姿を描くヒューマンエンターテインメント。偶然出会った見ず知らずの乗客たちの人間模様がテーマで、第1話でもすでに登場人物たちが何かしら抱えていることがほのめかされたが、特に主人公・直哉の事情と、演じる山田裕貴の繊細な芝居に心を打たれた回だった。

 物語の出発点は、2023年春の朝。人気スタイリストの萱島直哉(山田裕貴)らが8時23分発の秋葉原行きのつくばエクスプレスに乗り込み、出発してしばらくすると突然、緊急地震速報が一斉に鳴り響く。携帯電話の電波が圏外になったことに乗客が気づいた刹那、車両が大きく揺れる。そしてトンネルに入ったところで電車は衝撃と共に急停車。乗客たちが気づくと、外に広がっていたのは、見覚えのない荒廃した景色だった。携帯の電波はつながらず、目の前は樹海、反対側の東にあるトンネルを抜けた先には広大な砂漠があるのみだった。

 ドラマは2023年と、ワープした世界とを行き来するが、2023年でも電車の車両がこつぜんと姿を消したことがニュースに。姿を消したのは5号車と6号車の2両で、100名以上が乗り合わせていた可能性があるという。どちらの側とも、何が起こっているのか理解が追いつかない。

 ワープした先では、消防士の白浜優斗(赤楚衛二)が率先して動き、優斗に秘かに憧れを抱く体育教師の畑野紗枝(上白石萌歌)らがサポートしていく。優斗と紗枝は持っている食料をシェアしたりと全員で協力し合おうという姿勢を見せるが、誰もがそういうわけではない。直哉も、トンネルを優斗と紗枝が調査しに行く際に同行したが、助けを呼びに行きたいわけではなく、ただ自分の用事のためさっさとこの状況から抜け出したかっただけだった。

 時間が経つごとに乗客同士ギスギスしていくが、ここでネイリストの渡部玲奈(古川琴音)が事件を起こす。車両から離れていた紗枝と直哉のかばんの中をこっそり物色し、紗枝の食料を盗む。ひとり車両を離れて食べようとするが、ばったり直哉に会ってしまい、紗枝の食料を落としたまま立ち去ってしまった。その後、紗枝が食料がなくなっていることに気づくと、玲奈は拾った直哉に罪をなすりつけようとし、さらに直哉のかばんに刑務所からの手紙やハサミがあったことを乗客の前で明かし、「犯罪者っぽい」と不信感を煽るのだった。無実の罪に問われた直哉は「出ていく」と言って、森のほうへと消えていった。

 ゲームの専門学校に通う米澤大地(藤原丈一郎/なにわ男子)が撮っていたムービーの中に玲奈の犯行現場が映っていることがわかり、直哉の疑いはすぐに晴れることに。優斗と紗枝は出ていった直哉を探しに行く。一方、直哉は森を突き進んだ先で崖にたどりつき、足を踏み外してしまう。あと一歩で落ちそうというところで、駆けつけた優斗と紗枝により救出された。そこで紗枝は、スクールバッグが崖の下の木の枝に引っかかっているのに気づく。車両から出ていった男子高校生たちの集団が、すでに転落したことを暗示させる場面だった。

 水や食料も乏しく、乗客たちの精神状態は極限に近い。優斗は「みんなで計画して行動を!」と呼びかけるも、それぞれに好き放題に行動し始める。だが、そこで思わぬ発見があった。高校生カップルの江口和真(日向亘)と佐藤小春(片岡凜)は、製造年が2026年と刻印された空き缶を拾う。サラリーマンの田中弥一(杉本哲太)は、森を抜けた先に2026年完成予定のタワーを見つける。そして農学部・生命科学科で研究する大学院生の加藤祥大(井之脇海)は、実現には30年かかるとされる「形質転換植物」を発見していた。飛ばされた先が、30年後の未来である可能性が浮上したところで、車掌の小森創(村田秀亮/とろサーモン)が森の中で出会った怪我人・長谷部健一(竹森千人)を連れてくる。自動販売機の補充員だという長谷部は、運んでいたカートが誰かに盗まれたと主張する。疑惑が広がる中で第1話は終わった。

 放送直後にはTwitterの世界トレンド1位を獲得し、TVerでは放送から数日で100万回再生を突破するなど反響を呼んでいる『ペンディングトレイン』。突然、荒廃した未来に一部が飛ばされるという展開は、楳図かずおのマンガ『漂流教室』やこれをリメイクした2002年の連ドラ『ロング・ラブレター~漂流教室』(フジテレビ系)を思い出したという声も多く、また荒廃した世界が未来だったと気づく展開が(第1話の)最後に出てくる構成から、1968年の名作映画『猿の惑星』を思い出したという声も。

 荒唐無稽ぎみのSF設定ではあるが、人間ドラマに焦点を当てたことで、俳優の演技に引き込まれたという声も多い。主人公の直哉は、正義感・使命感に燃える優斗を「相性が悪い」と毛嫌いし、「他人の命をあんたが背負う必要ないだろ」と“おせっかい”だと指摘するが、優斗は火事の現場で自分を助けようとして半身不随になった先輩消防士と「1人でも多くの命を救う」と約束したことを明かし、「俺は諦めない」と宣言。事故の理由など詳細は明かされなかったが、優斗が率先してリーダーシップを発揮し、他者を助けようとする理由の一端が、演じる赤楚の表情にもよく出ていた。

 そして直哉だ。「助ける? あんたが? みんなを、一人でか? 思い上がんなよ」となぜか優斗に食って掛かった直哉は、元の世界に戻れる手がかりもないことから悲観的だ。だが、過去に優斗の「やれるだけやってみよう」という言葉に救われたと話す紗枝が「やっぱり帰りたい」「戻りましょう、みんなで」と訴え、さらに優斗とふたりで、「死んでもいい」と勝手に出ていった高校生カップルを呼び戻しに行動を起こす姿を見て、直哉は弟の達哉(池田優斗)のことを思い出していた。

 歳の離れた弟を、親代わりとして育てていた直哉。だが、達哉は事件を起こし、少年刑務所に入っていた。直哉の持っていた刑務所からの手紙は、もうすぐ刑期が終了する達哉からのものだったのだ。2年3カ月を刑務所で過ごした達哉は、出所後にうまくやっていけるのか怖いと正直に不安を綴り、「会って話したいです」「やり直したいです、兄ちゃんと一緒に」と訴えていた。出所日は今日……。直哉と達哉の再会は叶わなかった。

 突然、見知らぬ世界へと飛ばされるという不運に見舞われた直哉は、「やれるだけ、やってきたよ。やれるだけ、やってきたろ……。なんで俺……やっても、やっても、いくらやっても!」と、不条理な運命に怒りをぶつけながらひとりむせび泣く。他人を信用していない素振りが時折見受けられた直哉だが、「やれるだけやってみよう」とはとても素直に信じられないような、理不尽な経験を経てきたのだろうことが「いくらやっても!」というセリフからにじむ。優斗に対してクールに目の前の現実を問いかけていた直哉が、樹海の中でひとり、弟からの手紙を握りしめて涙するシーンは、弟への想いと絶望が入り交じる彼の心の内が強く伝わってくる名場面だっただろう。

 達哉の事件や優斗の事故など、まだ全貌が見えない過去についても気がかりだが、一部の謎めいたシーンや発言が今後の展開に結びつく伏線なのかどうかも気になるところ。冒頭の、赤ん坊を抱えて地下鉄のホームを走り、突如振り返る紗枝のシーンは何なのか。ワープ前、優斗が「これから伺います。ご迷惑かと思いますが、よろしくお願いします」と誰かに断って向かおうとした先はどこだったのか。ワープ前の5号車に来た車掌の小森が「5号車、5号車……あれ、ここ何号車?」と言っていたのは、何かしら意味があるのか。緊急地震速報のあとに、優斗が拾おうとしたペットボトルのフタや、一部の乗客が先に消えたのは何なのか。30年後の未来に飛ばされたのならば、2026年製造の空き缶が見つかったのはどういうことなのか。

 第2話の予告では水も食料もない極限状態で疑心暗鬼に陥る乗客たちの姿が。謎だらけの未来の世界で信頼関係も築けないままのサバイバルは、肉体的にも精神的にも厳しい展開になるだろう。人との関わりが薄いこの令和の時代を生きる私たちの心を揺さぶる作品になりそうだ。終着駅まで“途中下車”することなく見届けたい。

■番組情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と
TBS系毎週金曜22時~
出演:山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、池田優斗、宮崎秋人、大西礼芳、村田秀亮(とろサーモン)、金澤美穂、志田彩良、白石隼也、濱津隆之、坪倉由幸(我が家)、山口紗弥加、前田公輝、杉本哲太、松雪泰子 ほか
脚本:金子ありさ
音楽:大間々昂
主題歌:Official髭男dism「TATTOO」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:tbs.co.jp/p_train823_tbs

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/04/28 12:00
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