『罠の戦争』鷲津の“正義”の鉄槌は下った…と思いきや「復讐される側」へ急転
#草彅剛 #罠の戦争
カンテレ制作・フジテレビ系列放送の月10ドラマ『罠の戦争』の第9話が3月13日に放送された。
正義のヒーローから、手段を選ばない黒い代議士へ。復讐する側から、される側へ。草彅剛演じる主人公・鷲津亨が、歩道橋から何者かに突き落とされて意識不明となった息子の事件の真相を追って永田町の闇に食らいつく復讐劇は、隠蔽を指示した政治家を追い落としたことで幕引きとなったかと思われたが、物語は思わぬ展開を見せた。
息子・泰生(白鳥晴都)を突き落とした犯人が、厚生労働大臣・鴨井ゆう子(片平なぎさ)の息子である文哉(味方良介)であること、そして事件の隠蔽を指示したのが民政党幹事長・鶴巻憲一(岸部一徳)であることを突き止めた鷲津。第8話では強敵の鶴巻の罠にはまり、あわや永田町から追放されるかと思われたが、鴨井が緊急の記者会見を開いて、息子が犯人だったことを告白し、名前こそ出さなかったものの鶴巻が警察に圧力をかけた可能性を示唆する発言をする。鴨井は責任を取って国会議員の職も辞すとも発表し、この捨て身の告白によって、鶴巻は一転、疑惑の人物となった。
鶴巻は、自分の指示で隠蔽を実行に移した警察署署長を実質クビにし、署長の座をすげ替える工作を早々に実行し、自身の関与を覆い隠そうとする。だが、鴨井の衝撃の告白の影響で鶴巻派は対応に追われ、スキだらけ。鶴巻を追い落とすのは今しかないと踏んだ鷲津は、前署長を言葉巧みに説得し、鶴巻の指示で事件のもみ消しをしたと証言させる。鷲津はこれを週刊誌記者の熊谷由貴(宮澤エマ)に書かせ、鶴巻は追い詰められることに。さらに、鶴巻を潰したい内閣総理大臣・竜崎始(高橋克典)の後ろ盾もあって、鷲津は「庶民の代弁者」「権力に立ち向かう正義の味方」へと祭り上げられていく。
鶴巻は会見ですべては秘書がやったことと強弁し、責任逃れを図る。竜崎は鶴巻と鷲津を呼び出し、鶴巻に幹事長辞任を“提案”するが、鶴巻は飲まない。そして、鶴巻の指示で鷲津が行った買収工作のネタも掴んでいた竜崎は、今度は鷲津に対し、鷲津の選挙違反を世に出したくないならばこれ以上鶴巻らを追い詰めるな、と“提案”する。狡猾な竜崎は、鶴巻と鷲津に釘を差し、「これで手打ちだ」と与党内の混乱を収束させる幕引きを図ったのだった。
鶴巻は鷲津と握手をするが、鷲津は当然、納得していなかった。3者会談後、鷲津は自分がマスコミを引き付けておくと言って鶴巻に地下駐車場から出るよう誘導。だが、表に集まったマスコミに対し鷲津は、鶴巻から謝罪を受けたのでもう追及はしないとしながら、オフレコだとして白々しく鶴巻が総理から幹事長辞任を“提案”されたこと、それでも鶴巻が留任する意向であることを暴露。さらに鶴巻が地下駐車場にいることも明かし、報道陣は鶴巻のもとへ向かう。マスコミからの追及に「黙れ!」と一喝する鶴巻だったが、持病が悪化したのか、その場で倒れ、緊急搬送されることに。健康上の不安が露わとなり、鶴巻の幹事長辞任やむなしとなった。鷲津は見事、マスコミを誘導することで、総理大臣からの手打ちの“提案”までも無視して鶴巻に“正義”の鉄槌を下したのだった。
ここでドラマが終わったならば、復讐劇の見事な完遂と言えたかもしれない。竜崎に気に入られた鷲津は総理補佐官へと昇進。泰生も退院し、ハッピーエンドとなりそうだったが、その“幸せ”はかりそめのものだった。復讐は、復讐を生む。復讐のために強硬な手段を取ることもいとわなかった鷲津は、いつしか多くの敵に囲まれていた。鶴巻は、かつて鷲津が追い払ったかつての同僚・虻川勝次(田口浩正)を私設秘書として雇い、虻川から“手土産”としてもらった、鷲津の政治資金パーティでの不正水増し計上疑惑を週刊誌に書かせる。新たに幹事長に就任した蛭谷敦夫(小野了)は、鶴巻と手を組んでいた。さらに「鷲津亨は偽善者」「必ず、鷲津亨を破滅させる」と宣戦布告する怪文書までが何者かによって出回る。
鷲津は身内との間にも亀裂が入り始める。総理補佐官として多忙な鷲津は、家族との時間をほとんど持てなくなり、妻の可南子(井川遥)は不安を隠せない。親友として鷲津のサポートをしてきた副幹事長の鷹野聡史(小澤征悦)は、すべて鷲津の手柄になったことに思うところがあるらしい。かつて幾度なく打倒鶴巻のために共闘した週刊誌記者の熊谷は、支援者に起こったパワハラ騒動のもみ消し依頼を鷲津から頼まれ、しかもかつて自分たちがやられた「編集長に話をつけておく」という方法で記事を潰されたことに激怒する。政策秘書の貝沼永太(坂口涼太郎)は、不正水増し計上の問題について、「記載ミス」で片付かなかった場合はすべて貝沼の一存とするよう責任を押し付けられる。かつて鷲津が憎んでいたはずの「腐敗した権力」そのものへと、鷲津は変貌していた。
鶴巻は怪文書には関わっていないことを明かし、「君を恨んでる人、他にもいるみたいだね」と語りかけ、「どう? 恨まれる側になった気分は」と微笑んだ。復讐する立場から、復讐される立場になった鷲津。正体の分からぬ復讐者を前に、鷲津は動揺するしかなかった。
怪文書を送り付けた犯人は、鷲津と接点のある人物で間違いないだろうが、多くの関係者が鷲津に思うところがありそうなだけに、現段階で特定するのは難しそうだ。ただ筆者は、鷲津の秘書・蛯沢眞人(杉野遥亮)を疑っている。
第9話で蛯沢は、不在時に鷲津の部屋に入った際、机の引き出しをじっと見つめる場面があった。その後の顛末はわからないが、おそらくは“紛失”したとされていた、亡くなった蛯沢の兄の件の書類を発見したのではないか。蛯沢の兄は、当時代議士だった犬飼孝介(本田博太郎)の事務所に陳情したが、「善処する」の返事をもらって喜んだものの、そのまま放置された末に過労死してしまった。蛯沢は兄の復讐を果たすべく犬飼事務所のスタッフに加わったのだが、しかし兄の陳情を実際に担当したのは当時犬飼の秘書だった鷲津であり、放置したのも鷲津だった。その証拠となる書類を最初に発見した秘書の蛍原梨恵(小野花梨)は、蛯沢に打ち明けるかどうかは任せるといって書類とともに鷲津に託したが、鷲津は結局、蛯沢に伝えられないまま、書類を封印していた。貝沼に責任を押し付け、熊谷が怒って退出したときも「週刊誌の記者とずっといい関係でいられるわけない」と切り捨てるような発言をしている鷲津の変貌を見て、蛯沢は復讐を決意したのではないだろうか。
「最終章」と銘打たれる今夜放送の第10話は、鷲津にとって、代議士生命だけでなく、愛する家族との絆も試されそうだ。可南子が目撃した夫の「知らない顔」「怖い顔」は、はたしてこれが鷲津の本質なのか、それとも復讐の過程で芽生えた負の感情が静かに膨れ上がり、鷲津の中にあった正義を飲み込んでしまったのだろうか。復讐劇が完了したいま、鷲津が代議士を続ける目的はどこにあるのか。復讐される側になった鷲津の「戦争」の行方を見守りたい。
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月曜ドラマ『罠の戦争』
フジテレビ系毎週月曜22時~
出演:草彅剛、井川遥、杉野遥亮、小野花梨、坂口涼太郎、白鳥晴都、小澤征悦、宮澤エマ、飯田基祐、高橋克典、片平なぎさ、岸部一徳 ほか
脚本:後藤法子
音楽:菅野祐悟
主題歌:香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」(Warner Music Japan)
プロデューサー:河西秀幸
演出:宝来忠昭
演出・プロデューサー:三宅喜重
製作・著作:カンテレ
公式サイト:ktv.jp/wana
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