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『罠の戦争』永田町での視聴率は100%?草彅剛が演じる国会議員秘書の壮絶な実態

『罠の戦争』永田町での視聴率は100%?草彅剛が演じる国会議員秘書の壮絶な実態の画像1
ドラマ公式サイト」より

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 もう2月も半ばとなってしまいましたが、今年もよろしくお願い申し上げます。今年の常会である第211回国会は、1月23日に召集されました。6月21日までの150日間の会期です。昨年に引き続いてコロナ禍やウクライナ侵攻、物価高と問題は山積ですが、岸田文雄総理の秘書官のお二人の差別発言や公用車観光問題など、総理周辺が騒がしいのが今年の特徴ですね。

 国会では少子化対策や「防衛増税」なども審議されますから、みなさまもぜひニュースや国会中継をチェックしてくださいね。

衆議院議員の公設秘書は20年以上で「永年表彰」

 今年は神澤が国会議員秘書になってから25年が経ちました。月日の過ぎるのは本当に早いものですね。国会には議員の永年在職表彰だけではなく、公設秘書の「議員秘書永年表彰」もあります。衆議院の場合は公設秘書として20年以上、参議院の場合は18年以上勤務すると、表彰の対象とされます。

 国会議員の秘書は、公費つまり税金で雇われる公設秘書と、議員の事務所が雇う私設秘書に分けられます。公設秘書は3人で、私設秘書は議員の裁量で何人でも雇えます。

 秘書はほぼ縁故採用で、私設秘書からキャリアをスタートするのが一般的です。事務所によっては新卒者などを「秘書見習い」として雇うこともあります。神澤のキャリアも私設秘書を含めての25年なので、「議員秘書永年表彰」をいただくのはまだまだ先になります。

 衆参合同で事務を運営している国家資格の「政策担当秘書試験」もありますが、合格したからといって、すぐ採用されることもありません。参議院は選挙が定期的に行われますが、解散がある衆議院はいつ選挙があるかわからないので、20年にわたって公設秘書を務めるには最低でも7回は総選挙を経験することになります。私設秘書時代も経ているので、表彰されるのは60歳前後の方がほとんどです。だからこそ、衆議院議長から直々に賞状が手渡されるのです。

 20年といえば、生まれたばかりの赤ちゃんが立派な大人になるわけですから、働き続けるのは本当に大変です。特に女性秘書は、選挙に加えて出産や子育ての試練も待ち構えています。結婚や妊娠を機に辞める秘書仲間も少なくありませんし、子どもが小学校に上がるタイミングでの退職もあります。特に責任感が強い人は両立が難しいようです。

 これは議員も同じで、女性は少ないですね。毎年在職25年を迎える議員が表彰されますが、今年表彰を受けた福島瑞穂議員(社民党)は参院の女性で7人目だそうです。衆院は6人で、衆院の表彰者全体(451人)から見たら微々たるものですね。しかも、ほぼ自民党です。

 まあ女性なら何でもいいというものでもないですが、「働き方改革の一丁目一番地である国会が変わらないでどうするの?」とも思いますね。まだまだ国会には「女性は家庭に入るべき」と考える議員が多いのが現状です。

 ちなみに、永年勤続表彰を受けると「議員会館を自由に出入りできる記章(バッジ)が授与される」という都市伝説的な話が秘書仲間たちの間であるのですが、神澤の周囲では誰も見たことがないです。これは、バッジの取得を申請して引退する方が多いからだと思います。大ベテランには気軽に聞けないですよ。

 代わりに、退職時に申請すれば「議員秘書永年勤続表彰記章」をもらえます。記章は1人1個が原則なので、「もう公設秘書としては働きません」という日までもらえませんが、ちょっと楽しみかも?

 なお国会議員は在職25年を迎えると、以前は肖像画を作る費用100万円が支給されていましたが、今は廃止されています。自腹で描いてもらって飾るのはOKです。

永田町の全住人が見てる?テレビドラマ『罠の戦争』

 突然ですが、みなさんは『罠の戦争』(フジテレビ系)というテレビドラマをご存じですか? 国会を舞台にした国会議員と秘書の駆け引きというか「悪しき政治家を失脚させるリベンジエンターテインメント」なのです。草彅剛さんが「息子を瀕死の重体に追いやった事件の犯人と、それを隠蔽しようとする国会議員への復讐に燃える議員秘書」の役をリアルに演じていらっしゃいます。

 リベンジエンターテインメントといえば、『半沢直樹』シリーズ(TBS系)のドラマがすごい人気でしたね。『罠の戦争』にも、それに通じる痛快なシーンがいくつもあります。

 神澤の周囲でも、秘書や政治部記者、国会のスタッフなど、けっこう見ている人がいます。永田町の住人で見てない人はいないのではないかと思うくらいで、業界視聴率がほぼ100%のドラマです。もっとも、ツッコミどころも満載です。神澤に取材してくれればよかったのに(笑)。

 たとえば議員事務所。すごく広くて、ありえないです。見るたびに「あのくらいのオフィスがほしいなあ」と思いますね。でも、会議室の前の廊下はセットのはずですが、衆議院第一議員会館1階の国際会議室と多目的ホールの前の廊下にそっくりです。議員会館で撮影したのかと思ってしまうくらいです。

 あとは大臣たちについているSPの立ち位置が実際と違うのが気になりますね。SPが1人の時は警護対象者の前か横を歩くので、後ろからついていくことはないです。でも、それだとカメラを遮る形になってしまうので、後ろにしてるんでしょうか。でも、こんな些細な相違はまったく気にならないほどおもしろいと、話題になっています。

 このドラマをきっかけに国会のあり方、秘書の働き方にも関心が高まったらうれしいです。草彅さん演じる鷲津亨は公設秘書で、法的には「特別職国家公務員」です。「公務員」というと安定した仕事と思われることも多いのですが、実際にはとても不安定で、労働基準法も適用されません。ボスである議員の落選の際はもちろん、突然解雇されることもあります。鷲津もボスの犬飼大臣に突然解雇を宣告されています。

 また、悪質なケースでは、議員が秘書に何も伝えないまま解職届の手続きをしてしまうこともあります。国会の議員課秘書採用係から連絡があって、自分がもう公設秘書でないことを知った元秘書もいます。ここまで悪質な議員はさすがに稀ですが、この議員は弁護士資格も持っているので、「ひど過ぎる」と、当時はかなり話題になりました。

 確かに議員には秘書をいつでも解雇できる「権利」はありますが、話し合いもせずに一方的に手続きするのは、国民の雇用を守るべき国会議員のすることではありませんよね。

 また、これもドラマでありましたが、議員と秘書が信頼関係を築けても、選挙で落選すれば秘書も一緒に失職してしまいます。衆議院の場合、公設秘書は解散の日から身分を失います。その議員が再選されるか、または別の議員の秘書になれば、特例で解散から総選挙投票日までの補償がされるようになっています。つまり、ボスが落選し、そのまま公設秘書に戻らなければ、失業状態となります。

 ドラマでは、鷲津が後輩の秘書たちに、「万が一の時は自分が責任を持って就職先を世話する」というセリフがありましたが、今時はそれもかなり難しい状況です。次の就職先は自力で見つけなければならないのです。ドラマは、こうした私たち秘書の苦労も描いているので、感謝して見ています。国会を舞台にしたテレビドラマは少ない気がしますが、最近では沢口靖子さんが代議士を演じる『お花のセンセイ』(テレビ朝日系)も話題ですね。

 ドラマをきっかけに、国会のあり方や秘書の働き方にも関心が高まったらうれしいです。

経験20年以上の現役国会議員秘書

かみざわしま

最終更新:2023/02/16 22:59
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