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山田涼介の「1人4役」に驚愕…『親愛なる僕へ殺意をこめて』衝撃のラストと“演技力”に絶賛の声

山田涼介の「1人4役」に驚愕…『親愛なる僕へ殺意をこめて』衝撃のラストと“演技力”に絶賛の声の画像
ドラマ公式サイトより

 Hey! Say! JUMP・山田涼介主演のフジテレビ系水曜ドラマ『親愛なる僕へ殺意をこめて』の最終話が11月30日に放送された。Twitterでは放送終了直後にトレンド入り。その多くが主演の山田をはじめとした主要登場人物を演じるキャストの演技力を絶賛する内容だった。

浦島エイジの死と、雪村京花の本当の目的

 累計発行部数130万部を超える同名マンガを原作とする本作は、15年前の連続殺人事件「LL事件」の容疑者・八野衣真(早乙女太一)を実の父親にもつ大学生・浦島エイジ(山田涼介)が主人公の二重人格サスペンス。ある殺人事件について、警察から「LLの息子」として疑いの目を向けられたことをきっかけに自身が二重人格に気づくエイジだが、実はもう一つの人格である「B一(ビーイチ)」こそが主人格で、今の人格「浦島エイジ」はB一=八野衣エイジが「殺人鬼の息子」としての辛い現実から逃れるために生んだものだった。

 殺人鬼LLとして亡くなった実父・八野衣真は無実で、LLは今ものうのうと生きていると信じているB一は、第7話・第8話でついに「LL事件」の真相に迫る。真を殺したのは刑事の猿渡(高嶋政宏)で、LLに弱みを握られ脅されていた部下の桃井(桜井ユキ)のための凶行だった。そして、やはり真はLLではなく、本当のLLは、真の保護司で、LL事件後に八野衣エイジを養子として引き取った養父・浦島亀一(遠藤憲一)だった。

 浦島宅で亀一に「お前だったんだな、殺人鬼・LLは」と迫ったB一。最終回となる第9話は、亀一が一連の犯行を行った理由を語りだすところから始まった。亀一は自分のことを「壊れていた」といい、生まれたときから「自分がここに存在していない感覚」を抱えており、自分を「不確か」に感じていたという。幼少期から動物を虐待し、すぐに興味は人間に移ったが、しばらくは行動に移すことなはく、「何か」が亀一を押し止めていた。だが、16年前に突然、痛覚を失った亀一は「神さまが私を後押ししてくれた」と考え、生きたまま人を拷問することで痛みを、「自分がここに存在しているという実感」を感じられた。しかしこの感覚もすぐに消えていき、5人目の被害者のときにはまた何も感じなくなったという。

 ふたたび「不確かな存在」になった亀一は、自分が保護司として更生させた八野衣真が死んでいくさまを見れば、また「実感」を得られるのではと考え、殺人鬼・LLという物語を考え、世間に流布し、真をLLに仕立て上げたのだった。しかし真の死に何も感じられず、「何の役にも立たなかった」という亀一は、今度はエイジをターゲットに。エイジが二重人格であることに気づき、父親の復讐を考えていることを見抜いた亀一は、すべてを知った上であえてエイジを養子にした。愛する息子に殺されることで、最高の痛みが得られる。愛すれば愛するほど、痛みが大きくなる。そう考えたからこそ、亀一は実の娘である浦島乙(夏子)以上にエイジを溺愛したのだった。

 ずっとエイジ/B一に殺されることを夢見ていた亀一は、LLの信奉者だった雪村京花(門脇麦)が亀一の拷問殺人を模倣し、そのことをきっかけにエイジがLL事件の真相に自らたどり着いたという予想外の展開を「想像もしなかった素晴らしいエンディングだ。雪村京花には感謝しなくちゃな」と喜ぶ。早く自分を殺せと迫る亀一。B一は「お前の望みどおり、ぶっ殺してやる!」と銃を構えて引き金を引くが、「この15年間、ずっと待ちわびた瞬間だ」「私の空っぽな心、お前が満たしてくれ」という亀一の言葉を聞き、思いとどまる。B一は叫びながら銃を3発撃つが、撃ったのは床だった。亀一は呆然としたあと「なぜ撃たないエイジ? なんだこの結末は!」と責める。B一は激しく慟哭。駆け付けた警察に連れ去られるB一だったが、B一はひそかに亀一の自供を携帯電話で録音しており、LL事件の真相は白日の下に晒され、亀一は「愛する息子」ではなく、司法によって裁かれることになった。

 舞台は京花の公判に移る。証人として出廷したB一は、京花が犯した「もう一つの殺人」を話し始めた。

 LLを救世主だと崇める京花は、「LLの息子」であるB一=八野衣エイジにLLの後継者になってほしいと期待するも拒否され、代わりに浦島エイジに接近するが、やはり「LLの後なんて継ぐわけないだろ!」「君は完全にどうかしてるよ」と拒否されていた。すると京花は、「私のことをちゃんと受け止めてくれる理想のエイジくん」を生み出すため、エイジの中にある2つの人格を消そうとする。京花は、精神科医から聞いた「別人格が自分自身を別人格だと気づいていない場合、その事実を不用意に伝えてはならない」「別人格の消滅を意味する。さらにその影響が主人格にまで及べば、新しい別人格が生まれてしまう危険性もある」という理論を応用し、浦島エイジに「あなたはあとから生まれた、ただのできそこないの人格。この世に存在しない人間」と告げる。別人格だと知った浦島エイジは混乱の末に倒れこんでしまった。

 しかしB一はさらに衝撃的な事実を語る。浦島エイジはそれだけでは消えなかった。目を覚ました浦島エイジは、生まれたときから家族に虐待・ネグレクトされていた京花が本当に願っていることは「僕たちに執着していたのは、LLのようになってほしかったからじゃない。君はずっと誰かに認めてほしかったんだ。君という存在を誰かに受け入れてもらいたかったんだ」「君はただ、誰かに愛されたかっただけなんだよね?」と指摘する。そして、殺人鬼の息子として同じように感じてきたエイジは、「クソみたいな僕の人生に、君だけが唯一、僕の居場所になってくれた」「たとえそれが偽りの姿だったとしても、京花ちゃんの存在が僕を救ってくれた」と感謝の言葉を述べ、「京花ちゃんが僕に死んでほしいなら、僕は喜んで死ぬくらいしかしてあげられない」として自ら消滅することを選んだのだった。

 そして、LLの信奉者であるはずの京花が、B一にLLが生きていることを教えたのは、浦島エイジのためだった。精神科医の言葉を都合よく解釈し、B一が復讐を果たせばB一の人格が消え、消えてしまった浦島エイジが戻ってくるのではと期待して、B一にLLを殺させようと仕向けた。浦島エイジの最後の言葉に心を打たれ、救われた京花は、浦島エイジともう一度会いたいと思っていたのだ。B一は「浦島エイジは死んだ。もう二度と戻ってはこない。殺したのはお前だ、雪村京花」と残酷に告げる。突然笑いだす京花。それはやがて泣き声になり、その場に泣き崩れる。B一は、「お前はずっと痛みを感じないように生きてきた。まるでLLと同じように。過酷な家庭環境で育ったお前にとって、痛みを放棄することが唯一、現実から逃れる手段だったんだろう。だが、これが大切な人を失う痛みだ。浦島エイジが、取り戻してくれたんだよ」と京花に語りかけるのだった。

 1年後。亀一は死刑判決が言い渡されていた。エイジ/B一の協力者だったナミ(川栄李奈)は夢だったアクセサリーショップを開き、出所したB一に、浦島エイジへの感謝を述べながら、エイジに渡せなかったキーホルダーを渡す。「エイジが(売春組織を運営していた)スカルをつぶしてくれたおかげで私は救われた。私だけじゃない。女の子たちはみんなエイジに感謝してる。エイジは私たちにとってヒーローなんだ」と伝えるナミ。復讐のために、常に他人を利用することしか考えてなかったB一は、実父・真と浦島エイジは他人のために動く存在だったのだと気づき、B一が否定してきた“別人格”の浦島エイジこそ「父さんの思いを受け継いでた」と悟る。「父さんはきっと、復讐なんて望んでなかった。消えるべきだったのは、エイジじゃなくて俺のほうだったのかもな」とつぶやくB一。B一にも感謝を述べて去っていくナミだったが、振り返るとB一が耳たぶを触るしぐさをしているのを目撃する。浦島エイジの人格のときだけにあったクセだった。ナミは「エイジはちゃんと生きているんだね、あなたの中で」とほほ笑むのだった。

「1人4役」の山田涼介を始めとした俳優陣の「オモテとウラの演技」

 ドラマのラストは、大学生活に戻ったB一の姿だった。友人のやり取りを眺めながら笑顔を浮かべるその姿は、「浦島エイジ」ほど屈託のないものではなく、復讐に燃えていた暗い「B一」の表情でもなく、「八野衣エイジ」の新たな人生を思わせる笑顔だった。

 この山田の演技に象徴されるように、本作の一番の魅力はやはり俳優陣の鬼気迫る演技だっただろう。主人公は二重人格という設定だったが、実際に山田の演技は、「浦島エイジ」「B一」に加え、「浦島エイジのふりをするB一」、そしてラストの「浦島エイジと統合された八野衣エイジ」という「1人4役」に及び、これを見事に演じ分けてみせた。

 また、ドラマオリジナルキャラクターであるナミをのぞけば、メインの登場人物の大半が表と裏の顔を持ち合わせていた。浦島エイジのかわいい恋人かと思いきや、LLと「LLの息子」に執着する闇を抱えた女性だった京花役の門脇麦。事件を熱心に追う刑事でありながら、上司が八野衣真を殺したことに目をつむり、B一を消そうとした桃井役の桜井ユキ。そして、優しい義父から殺人鬼LLの正体を暴かれた際の静かな変貌ぶりに「知っていたけど、さすが!」との声が多く上がった遠藤憲一。負の連鎖によって救われない登場人物ばかりの難しい内容のドラマだからこそ、この配役が生きたのだ。

 原作からは一部設定やストーリー展開の変更はあったが、原作版のヒロインである真明寺麗よりも、ドラマのナミのほうがエイジ/B一に協力する理由がわかりやすかったし、桃井がサイ(尾上松也)にも脅されていたというドラマ版の変更は、桃井の“地獄”がより強調されていた。全9話にコンパクトにまとめられたものの、大筋のストーリーは変わっておらず、原作ファンもドラマファンも納得のいくエンディングとなっただろう。拷問殺人を行う殺人鬼の話が根底にあるだけに、ショッキングな第一話の演出で損をしてしまった印象があるが、“ドラマのフジテレビ”の底力が感じられた作品だった。

■番組情報
水曜ドラマ『親愛なる僕へ殺意をこめて
フジテレビ系毎週水曜22時~
出演:山田涼介、川栄李奈、門脇麦、尾上松也、早乙女太一、髙嶋政宏、桜井ユキ、佐野史郎、遠藤憲一 ほか
原作:井龍一・伊藤翔太『親愛なる僕へ殺意をこめて』(講談社ヤングマガジン刊)
脚本:岡田道尚
音楽:☆Taku Takahashi(m-flo)
主題歌:Hey! Say! JUMP「ウラオモテ」
プロデュース:草ヶ谷大輔
総合演出:松山博昭
制作・著作:フジテレビ
公式サイト:fujitv.co.jp/shinainarubokue

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2022/12/01 19:00
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