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鈴木亮平『エルピス』で演じたエリートの“キナ臭さ”が秀逸…「斎藤嫌い」と視聴者賞賛

鈴木亮平『エルピス』で演じたエリートの“キナ臭さ”が秀逸…「斎藤嫌い」と視聴者賞賛の画像
ドラマ公式サイトより

 大手テレビ局を舞台に、死刑囚の冤罪疑惑を追う長澤まさみ主演のフジテレビ系月10ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』。第5話まで放送され、メインとなる冤罪問題に大きな動きが見られた中、長澤はもちろんのこと、脇を固める役者にも大きな注目が集まっている。ひょんなことからアナウンサーの浅川(長澤まさみ)に冤罪の可能性について一緒に追及することを持ちかける新人ディレクター・岸本を演じるのは眞栄田郷敦。浅川とヨリを戻すことになる元恋人で、報道部のエース記者・斎藤を演じるのは鈴木亮平だ。

岸本がたどり着いた「一発逆転のすごいネタ」

 10年以上前に起こった八頭尾山連続殺人事件で容疑者として逮捕され、死刑判決が下された松本(片岡正二郎)に冤罪の可能性があると岸本から持ちかけられた浅川は、当時の担当刑事への取材、遺族の顔出しインタビューに成功し、自分が出演する深夜バラエティ『フライデーボンボン』で、「放送不適切」と却下されていたにもかかわらず、生放送ということを利用し、担当コーナーのVTRを取材VTRにすり替えるという強行突破を図る。これが想定以上の反響を呼び、気をよくした局長からの後押しもあって、この八頭尾山事件の取材特集はシリーズ化することに。しかし第2弾の放送後、松本死刑囚の再審要求が突如、棄却されるという不可解な動きが起こる。自分たちの報道のせいではないかと思い悩む浅川は、復縁しつつあった斎藤も放送を止めようとしていたことを知り、打ちのめされ、取材続行を諦めてしまう――というところで第4話は終わった。

 第5話、『フライデーボンボン』での特集放送は正式な打ち切りが言い渡される。すっかり以前の熱意を失っていた浅川と違い、岸本はひとりで「真実」を追い求め、寝食もままならなくなるほど、疑惑の追及にのめり込んでいく。

 岸本は、松本死刑囚の逮捕の決め手となった近隣の目撃証言が、他の証言とあまりにも食い違うことが引っかかっていた。岸本はその証言者・西澤正(世志男)の家に張り込みを続けていくうちに、西澤が10年前ほど前に八頭尾山の麓から引っ越してきていること、働いているようには見えないが毎日車に乗ってパチンコに行っていることといった、気になる点を知る。西澤がカギだという自分の勘を信じ、片っ端から聞き込みを行う岸本。すると、西澤の息子と自分の子どもが同級生だったというスナックの従業員と出会う。そして、西澤がどうやら家族全員に暴力をふるっていたこと、一家が西澤から逃げていることを知り、名古屋にいた西澤の元妻と連絡を取ることに成功。元妻に証言してもらえることになった。

 元妻は、西澤の“証言”が虚偽であるという決定的な証言をする。当時、西澤は家にいて、家族に暴力をふるったあと酔っぱらって寝ていたのだ。さらに西澤が偽証の代わりに金をもらった可能性を明かす。毎月「アサベ商事」というところから西澤のもとに30万円が振り込まれるようになっていた。西澤は給料だと言い張ったが、働いておらず、アサベ商事なる会社も市内には見当たらない。元妻は当時、西澤からの報復を恐れて何も言えなかったが、岸本からの連絡を受け、息子たちに「自分たちはもう大丈夫だから」と背中を押してもらったことでようやく打ち明ける勇気を得た。涙ながらに、「本当に申し訳なかったです」と謝罪する姿を収めたところで岸本はカメラを止めた。

 決定的な「真実」を手にした岸本は、かつての浅川に倣って、取材VTRを『フライデーボンボン』でゲリラ放送しようと企む。しかし、さすがにチーフプロデューサーの村井(岡部たかし)に勘付かれ、VTR差し替え工作は見破られてしまった。ゲリラ放送の企みに激怒した村井は、また浅川と岸本の仕業だと思い、番組終了後に二人を呼び出すが、また真実が闇に葬られたと落胆した岸本は、番組放送中であるにもかかわらず、スタジオを離れてしまっていた。何も知らない浅川は、取材VTRを見て愕然とする。

 浅川は「今すぐ話したい」と岸本に連絡をし、目黒のファミレスで落ち合う。そして、自分が取材を途中放棄してしまったこと、戦わずして逃げたことを岸本に謝罪し、「君は本当にすごいことをしたね」と岸本の労を称える。岸本は、「もう意味ない」と絶望していたが、岸本は自分が手にしたものの価値を正しく理解できていなかった。浅川に「何もかも全部吹き飛ばせるくらい決定的で、最強の真実を君は掴んだの。本当に松本さんを釈放できるかもしれない」と熱っぽく語られ、ようやく意味を飲み込めた岸本の目に生気が戻る。するといきなり、「あの……僕ちょっと、雑炊食っていいっすか?」と言い出す岸本。相変わらずの空気の読めなさに笑う浅川だったが、岸本は、自分がやったことが無意味ではなかったと知ってようやく、自分がひどく腹が減っていること、睡眠不足であることを思い出したのだった。

眞栄田郷敦の演技と、鈴木亮平が放つ“キナ臭さ”

 浅川が一度は諦めたことで、第5話の主人公は実質、岸本だったといえるだろう。SNS上では「雑炊食べてるときに光が、力がよみがえる目。鳥肌。ブラボー岸本」と、岸本の内面を表現する眞栄田郷敦の目の演技を褒めたたえる声が多く上がった。斎藤に、まるで浪人生のようだと評された小汚い身なりで取材に没頭していき、母親に心配されて精神科へと連れられていってしまうほどの狂気をはらんだ眼差しから、最後は当初の大型犬のような人懐っこい表情へと変化するさまは見事だった。

 一方、岸本ほどの出番はないながら、今回も圧倒的な存在感を放ったのが斎藤だ。浅川と交際時に路上キスを撮られるというスキャンダルを起こした間柄であるため、“関係”は戻っても、一定の距離を置こうとする浅川。斎藤に高級レストランに呼び出され、「どういうこと? こんなところで二人だけで食事したら、また……」「あなたに迷惑かかるんじゃ」と人目を気にして当惑する浅川に、斎藤は目を見つめながら「どうでもいいよ。好きな女と、うまいもん食いたい。じゃなきゃ毎日毎日、こんなバカみたいにしんどい思いして働いてる意味なくねぇ?」と言い放つ。内心喜びが隠しきれない浅川は、そのまま二人で穏やかな時間を過ごす。だが、ヨリを戻し始める二人と対照的に、ドラマは岸本の取材を並行して映す。さながら、浅川が斎藤に懐柔されていると言わんばかりに。

 また、岸本が斎藤に相談しに行った際の対応も、斎藤の腹の見えなさがうかがえた。『フライデーボンボン』での特集放送打ち切りを報告するも、まだ取材にのめりこんでいる様子の岸本に、打ち切りの理由について、警察や検察からの圧力を受けた報道局長からの要請だろうと局内政治を説明してやる一方、「ここまでやっただけでも上等だよ、素人にしちゃ」と褒めながら暗に取材継続を諦めるよう導く。そして、「一発逆転のすごいネタ」を掴んでも報道に握りつぶされるだろうか?という岸本の質問に、「うん」と肯定し、自分から上に掛け合ったほうが話を通しやすいと理由づけて「もしそういうのを掴んだら、先に俺に相談してほしい」と岸本を説得するのだった。

 しかし実際には報道部は、先日起こった女子中学生殺人事件に対する警察の対応に疑念を持っており、八頭尾山連続殺人事件と状況が似ていることから、浅川たちが追っている真犯人説の可能性に注目し始めていた。岸本は結局、斎藤に頼りきりになることへの反発心から斎藤に報告することなくゲリラ放送に臨んだが、もし斎藤に渡していたらどうなっていたことか……。元警察庁長官の大門副総理(山路和弘)に可愛がられている斎藤について、浅川の同期で報道部の記者である滝川(三浦貴大)が浅川に探りを入れていたことも気になる。こうしたキナ臭さ漂う斎藤について、視聴者からは「斎藤が怖い」「『胡散臭い』と思わせる亮平さんの表情の変化すごい」など、演じる鈴木亮平を高く評価する声も相次いでいる。

 浅川は、斎藤が以前にも特集の放送を止めようとしていたことを知っている。第6話の予告動画では、泣き崩れる浅川、斎藤が「俺と君はいつの間にか、相克の関係にある」と言うシーンもあり、二人の対立は免れないだろう。「お前と大門の、どっちを取るかって話になっちまうかもしれねぇ」という誰かのセリフもあり、斎藤の立場が問われることになるのかもしれない。浅川や岸本以上に社会の裏を飲み込んでいそうな斎藤が、「正しいこと」を成せる日は来るのか。今夜放送の第6話に注目だ。

■番組情報
月曜ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—
フジテレビ系毎週月曜22時~
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原 善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平 ほか
脚本:渡辺あや
音楽:大友良英
主題歌:Mirage Collective「Mirage」
プロデュース:佐野亜裕美、稲垣 護(クリエイティブプロデュース)
演出:大根 仁、下田彦太、二宮孝平、北野 隆
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作・著作:カンテレ
公式サイト:ktv.jp/elpis

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2022/12/16 17:07
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