日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 親子の関係を丁寧に描く『舞いあがれ!』
朝ドラWATCHコラム『舞いあがれ!』第7週

『舞いあがれ!』それぞれの親子のかたちを描き、子どもたちは新たなステージへ(第7週)

『舞いあがれ!』それぞれの親子のかたちを描き、子どもたちは新たなステージへ(第7週)の画像
イラスト/渡辺裕子

 舞ちゃん(福原遥)が「ホンマに好きな仕事をやりたい、航空学校に行かせてください」と自分の気持ちをしっかりとめぐみさん(永作博美)に伝え、めぐみさんが許す。それをそっと見つめていたばんば=祥子さん(高畑淳子)は、昔、気持ちをきちんと聞かなかったことをめぐみさんに謝ることができた。台所で、泣き笑いした母と娘が何年かぶりに並んで夕ご飯作りをしている。その姿を見ているだけで、なんでこんなにと思うくらい泣きました……。

 誰にでもやってくる、親子の気持ちがぶつかる時期。『舞いあがれ!』第7週は舞ちゃんだけでなく、幼なじみの貴司くん(赤楚衛二)と久留美ちゃん(山下美月)にも、それが訪れたみたい。親子でまっすぐ向き合ったり、少し距離を取ることを選んだり、やり方はその家族によってそれぞれだけれど、どちらにしても痛みをともなう。でも絶対、最後にはいい結果が待っている、はず。

 会社に退職届を出し、そのまま何も言わずに五島へ行っていた貴司くん、ほんとに無事でよかった。「変わりもんや変わりもんで、堂々と生きたらよか」と彼におおらかに言ってくれたばんばは、やっぱり最高。ばんばが何か言うたびに、自動涙スイッチがオンになって、毎朝ボロボロ泣いてしまうのには困ってますが。でも冒頭で書いたように、ばんばだって、かつて娘のめぐみさんにはきちんと話を聞かずに「二度と帰ってこんでよか!」と言ってしまったこともある。そんな失敗をして後悔したからこそ、今の、誰の生き方も認めるばんばがいる。

 ドラマを見ているだけの私でも貴司くんが行方不明のあいだは不安で仕方なかったので(あの思わせぶりな、崖の上の携帯電話!)、帰ってきた彼をポカポカと叩きながらお母さん(くわばたりえ)が泣いて怒る気持ちはよくわかる。わかるけれど、繊細な貴司くんが両親に自分の気持ちを打ち明けられないでいた理由は、こういうところだろうなあ、というのもわかる。「うめづ」夫婦の、「子ども思いのいい親なんだけど、しんどい時に会うのはちょっと無理」感が絶妙。「お母ちゃんは、あんたに普通に幸せなってもらったらええねん」と貴司くんに言うけれど、その「普通」が自分には難しいとわかっている人には、かなり残酷な期待ですよね。お父さん(山口智充)が、貴司くんの「旅しながら自分の居場所を探したい」という話を「わからんけどな、お前がそう言うんやったら、やったらええ」と認めてくれてよかった。親子だって自分とは違う人間だもの、すべてを理解できるはずもない。でもわかりたいから、答えがわかったら教えてくれと笑顔で送り出す貴司くんの父ちゃん、かっこよかった。昔のばんばのように、自分は子どものことをなんでもわかっているし、何が子どもの幸せかも知っていると親が思い込むところから、問題は起こりがちだから。

 デラシネも、そこにいる八木のおっちゃん(又吉直樹)も、貴司くんのもうひとつの家=居場所だった。温かいデラシネで、会社で凍った心を解かすことを繰り返していた貴司くんだけど、そのまま続けていたら、激しい温度差で心がどうにかなってしまったんじゃないかな。それをおっちゃんは気づいていて、広い世界を見に行きなさい、と店を閉めることで静かに巣立ちをうながしたのかもしれない。みんなが彼の旅を応援している。

 久留美ちゃんも、お母さん(小牧芽美)と会えてきちんと話せてよかった。夫(松尾諭)への愛がないわけではないけれど辛くて離れてしまったお母さん。残された、父を愛してるからこそしんどい久留美ちゃん。「困ったひと」を持つ家族の葛藤……家族なんだから、で片付く話じゃないよね。お母さんと同じ看護師の道を選んだ久留美ちゃんが、どうか幸せになりますように。

 舞ちゃんも貴司くんも久留美ちゃんも、それぞれが巣立ちと旅の途中にいる。3人が再会できたあの灯台のように、明るい光がそれぞれの道を示してくれるといいなあ。みんながんばれ。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:福原遥、高橋克典、永作博美、横山裕、高畑淳子、赤楚衛二、山下美月、山口智充、くわばたりえほか
作:桑原亮⼦、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number「アイラブユー」
語り:さだまさし
制作統括:熊野律時、管原浩
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐
プロデューサー:上杉忠嗣、三鬼一希、結城崇史
広報プロデューサー:堀之内礼二郎、齋藤明日香
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/maiagare

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

わたなべひろこ

最終更新:2023/02/04 23:38
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真