韓国で大ヒットした新型パニック映画! 欠陥住宅をめぐる恐怖『奈落のマイホーム』
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マイホームの呪縛から解き放たれる主人公たち
パニック映画の面白さは、大災害が襲ってくるスペクタクルシーンの描写に加え、極限状態に追い詰められた人々がどんな言動を見せるのかを描いた群像劇としての完成度に負うところが大きい。マンションが一棟丸ごと地下に沈んでいくシーンの迫力に、ワケありな人たちが繰り広げるこのコミカルな群像劇は、充分に及第点をつけられるだろう。
物語中盤まではしがない中年サラリーマンだったドンウォンだが、ひとり息子のスチャンがマンション1階の駐車場に取り残されていることを知り、別人のように変わっていく。スーパーヒーローではないので、特殊な能力などは持っていないが、我が子を救うために捨て身の救助活動を行う。舞台出身の叩き上げ俳優キム・ソンギュン演じる主人公は、見た目は三枚目だが、がぜん凛々しくなる。息子の目には、助けにきた父親が真のヒーローのように映ったことだろう。韓国映画はこうした市井の人たちの活躍を描くのが、とてもうまい。
もうひとり、注目したいキャストがいる。お隣のマンションに暮らす老人役で、韓国映画界の名バイプレイヤーであるチャン・グァンが出演している。実録犯罪映画『トガニ 幼き瞳の告発』(11)でロリコン変態校長を熱演し、チャン・グァンは一躍注目を集めた。本作では隣のマンションで起きた災難に心を痛め、地域の住人たちに人命救助を最優先することを訴える好々爺を演じている。底が抜けてしまった韓国社会は、政府や警察は当てにはできない。頼れるのは家族のつながりと、それを支える地域住民たちの善意しかない。
日本を代表するパニック映画に、森谷司郎監督による不朽の名作『日本沈没』(73)がある。島国で育った日本人は果たして国際社会を生きていくことができるのかという問題が、オリジナル版『日本沈没』には描かれていた。国土や国家を失っても、日本人は日本人でいられるのかというアイデンティティーが問われていた。
キム・ジフン監督が撮った『奈落のマイホーム』は、ミニマム化された韓国版『日本沈没』と呼びたい。観客にアイデンティティーを問い掛ける作品となっている。人生の勝ち組になったことを証明するはずだったマイホームは、奈落の底に沈んでしまった。主人公のドンウォンは、すべての財産を失ってしまう。だが、逆境の中でドンウォンたちは、自分らにとって本当に大切なものは何かに気づくことになる。マイホームや格差社会に対する呪縛から解き放たれた彼らは、とても身軽になっていく。
欠陥住宅やシンクホールを扱った現実味のあるパニック映画だが、エンディングは思いのほか心地よい。どん底を体験した庶民のたくましさが印象に残る。
『奈落のマイホーム』
監督/キム・ジフン VFXスーパーバイザー/ソ・ギョンフン
出演/チャ・スンウォン、キム・ソンギュン、イ・グァンス、キム・ヘジュン
配給/ギャガ 11月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
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gaga.ne.jp/naraku
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