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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.711

映画愛溢れるロードムービー 全国のミニシアターを巡る『あなたの微笑み』

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「世界の渡辺」こと渡辺紘文監督は、各地の映画館を旅して回ることに

 ミニシアター文化はこのまま消滅してしまうのだろうか。街の古い映画館はすべて取り壊され、シネコンや配信サービスに変わってしまうのだろうか。岩波ホールやテアトル梅田などの伝統ある劇場の閉館ニュースを聞くと、時代が大きく変わりつつあることを感じずにはいられない。コロナ禍によって、より苦境に立つ日本各地のミニシアターの現状を、セミドキュメンタリータッチで描いた映画『あなたの微笑み』が公開される。マレーシア出身のリム・カーワイ監督が、自身を育ててくれた日本のミニシアターに愛情を捧げたロードムービーとなっている。

 1973年マレーシア生まれのリム・カーワイ監督は、1993年に来日。大阪大学基礎工学部を卒業後は北京電影学院監督コースで学び、香港で撮影した『マジック&ロス』(10)など国籍に囚われない映画づくりを続けている。大阪の梅田を舞台にした前作『COME & GO カム・アンド・ゴー』(20)は、外国人技能研修生らに対する搾取問題などを盛り込んだ群像劇として注目を集めた。1年がかりでロケ撮影した新作『あなたの微笑み』では、南は沖縄から北は北海道まで日本各地のミニシアターを訪ねて回っている。

 本作の主人公に起用されたのは、栃木県大田原市で自主映画を撮り続けている渡辺紘文監督。監督&出演作『プールサイドマン』(16)は東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門作品賞を受賞し、米国のスミソニアン博物館では特集上映も行われている「知る人ぞ知る」映像作家だ。渡辺監督が、「シネマドリフター(映画流れ者)」を自称するリム・カーワイ監督の分身となり、全国を旅する。脚本はなく、各地の映画館の支配人たちを相手に即興劇を演じるというユニークな内容だ。

 現実とフィクションを交えた形で、物語は進む。かつて東京国際映画祭で賞をもらったことのある渡辺監督は「世界の渡辺」と名乗っているが、地元での生活はニートとほとんど変わらない。世話になった東京国際映画祭の元プログラミングディレクターの矢田部吉彦氏や周囲の人たちには、「大手映画会社からオファーが来ている」と見えすいた嘘を付いている。はっきり言って、うざいキャラだ。

 そんな「世界の渡辺」が沖縄で新作映画を撮ろうとしたことがきっかけで、日本各地の劇場を巡ることになる。自作の映画を上映してもらおうとするが、地方の映画館のシビアな状況を目の当たりにする渡辺監督だった。

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