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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.709

佐々木譲の大河小説が韓流映画に! 悪と善との境界に立つ『警官の血』

佐々木譲の大河小説が韓流映画に! 悪と善との境界に立つ『警官の血』の画像1
新人刑事のミンジェ(チェ・ウシク)は上司であるパク班長(チョ・ジヌン)を内偵する

 親を早くに亡くした子どもは、親が亡くなった年齢が近づくと考え込むようになる。親はなぜ死んだのか、死を避ける方法はなかったのかと。もはや答えを返してはくれない親に代わって、子は自分自身でその答えを探すしかない。佐々木譲の長編小説『警官の血』(新潮社)は、勤務中に亡くなった警官を父に持つ主人公が、自身も警官になることでその死因を究明しようとする物語だ。2008年版「このミステリーがすごい!」の第1位に輝いた『警官の血』が、大胆に脚色された形で韓国で映画化された。韓国では2022年1月に公開され、興収ランキング初登場1位を記録するスマッシュヒットを記録している。

 直木賞作家・佐々木譲は、北海道警察内で起きた裏金事件を題材にした『笑う警官』などの警察小説で人気が高い。2007年に刊行された『警官の血』は、3代にわたる警察官一家の物語として、昭和の戦後史が描かれた大河小説だった。2009年に江口洋介、吉岡秀隆、伊藤英明でテレビ朝日がドラマ化したことでも知られている。

 今回の韓国映画版は舞台を東京からソウルへと変え、3代にわたる三部構成の原作小説のうち、第三部のみに絞った形にして119分の上映時間にまとめている。原作のような“大河感”はなくなったものの、原作のエッセンスをうまく抽出し、警察組織内の光と闇をめぐるクライムサスペンスに仕上げられた。

 米国のアカデミー賞4冠を受賞した大ヒット作『パラサイト 半地下の家族』(19)の長男役や『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)の野球部の高校生役などで知られる若手俳優のチェ・ウシクが、原作の安城和也にあたる主人公チェ・ミンジェを演じている。

 物語は、新人刑事のチェ・ミンジェ(チェ・ウシク)がソウル警視庁の広域捜査隊に配属されるところから始まる。真面目な性格のミンジェは、パク・ガンユン班長(チョ・ジヌン)の部下となるが、実はミンジェは秘密の任務を受けていた。ずば抜けた検挙率を誇る敏腕刑事であるパク班長は、出処不明の後援金を受け取っているという噂が流れていた。パクの身辺を内偵するようにと、ミンジェは監察室から言い渡されていたのだ。

 ミンジェには監察室からの要請を断れない理由があった。ミンジェの父親も警察官だったが、麻薬捜査中に亡くなっていた。内偵を遂行すれば、父親が亡くなった際の機密ファイルを見せると言われたのだ。父親の死の真相を知りたいミンジェは、パクと行動を共にするようになる。警察内潜入捜査ものとして、物語はスリリングに進んでいく。(1/3 P2はこちら

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