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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.712

韓国で大ヒットした新型パニック映画! 欠陥住宅をめぐる恐怖『奈落のマイホーム』

格差社会が生み出したブラックホール

韓国で大ヒットした新型パニック映画! 欠陥住宅をめぐる恐怖『奈落のマイホーム』の画像2
マンションの屋上にいたマンス(チャ・スンウォン)は、大揺れに驚く

 ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(19)は、米国のアカデミー賞作品賞を受賞し、日本でも興収47億円を超える大ヒットを記録した。長引く不況の中で社会格差が広がり、日の当たらない半地下室で暮らすビンボー一家と、高台の高級住宅で暮らす上流一家との生活を対照的に描いてみせた。北朝鮮との戦争に備えて避難部屋として設計された半地下室は、家賃は安いが、豪雨などが起きると水没しかねない不良物件だった。

 本作のドンウォン一家は、半地下家族よりもさらに悲惨だ。苦労して手に入れたマンションは欠陥住宅だった上に、引越しからわずか2週間でマンションは地下500mに沈んでしまった。半地下どころか、真っ暗な地底でのサバイバルを余儀なくされる。

 救助隊が現場に駆けつけるものの、シンクホール周辺は長雨のせいで地盤がゆるんでおり、二次災害の恐れが高い。救助活動は遅々として進まない。

 住宅街に突然現れた巨大なシンクホールは、どんなものでも呑み込んでしまうブラックホールを思わせる。言ってみれば、格差社会が生み出したブラックホールに、ドンウォンたちは陥ってしまったのだ。この巨大な真っ暗な穴は、韓国社会の底が抜けた状態であることを示唆しているようでもある。

 ギリギリの生活に耐え続けた挙句に失意のどん底に沈んだのは、ドンウォンだけではない。部下のキム代理はずっと賃貸のワンルームで独身生活を送っている。美人の同僚に片想いしているが、告白できないままだ。経済的余裕がないと、恋愛すらできない。また、インターンのウンジュは、正社員にしか会社からのお歳暮が届かないことを恨めしく思っている。さまざまな格差への不満が、このシンクホール内には充満していた。

 もうひと組、シンクホールに呑み込まれたたのは、同じマンションで暮らすマンス(チャ・スンウォン)と息子の父子だ。本業がカメラマンであるマンスは、写真スタジオを経営していたが、すっかり仕事は減り、自動車の運転代行サービスなど多彩な仕事を手掛けている。多角経営といえば聞こえがいいが、そうしないと父子で食べていくことができない状態だった。息子は進学を諦めている。ワケありマンションには、ワケありな人たちが取り残されていた。彼らはどうすれば、地下500mから脱出できるのだろうか。

 本作を撮ったのは、光州事件を初めて正面から描いた実録映画『光州5.18』(07)を大ヒットさせたキム・ジフン監督。高層ビルで起きる想定外の災害を描いた『ザ・タワー 超高層ビル大火災』(12)、日本と同様にエネルギー資源のない韓国の実情を背景にしたパニック映画『第7鉱区』(11)もヒットさせている。本作もVFXとセットを巧みに使い、陥没シーンを迫力あるものに仕上げてみせた。

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