トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子の恋愛映画
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.710

瀬戸内寂聴がモデルの大人の恋愛映画 寺島しのぶが剃髪で挑む『あちらにいる鬼』

瀬戸内寂聴がモデルの大人の恋愛映画 寺島しのぶが剃髪で挑む『あちらにいる鬼』の画像1
寺島しのぶは自分の髪を剃り上げ、「寂光」役になりきってみせた

 恋多き女。2021年11月9日に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴は、生涯そう呼ばれた。若手作家時代に発表した『花芯』は性描写の赤裸々さから、「子宮作家」とも呼ばれることになった。戦後派を代表する作家・井上光晴と不倫関係にあったことでも知られている。11月11日(金)より公開される映画『あちらにいる鬼』は、直木賞作家・井上荒野が父・井上光晴と瀬戸内寂聴をモデルにして描いた同名小説が原作だ。脚本家・荒井晴彦と廣木隆一監督のベテランタッグによって、見応えのある大人の恋愛ドラマとなっている。

 主人公の長内みはるを演じるのは寺島しのぶ。荒井晴彦&廣木監督のタッグ作『ヴァイブレーター』(03)で、寺島は映画女優としてブレイクを果たした。この三者の顔合わせは、2013年に放映された犯罪ドラマ『ソドムの林檎~ロトを殺した娘たち』(WOWOW)以来となる9年ぶり。相手役の豊川悦司は、荒井&廣木タッグ作『やわらかい生活』(06)などでも寺島と共演済みだ。廣木組初参加となる広末涼子がそこに加わることで、新しい化学反応が起き、観客の視線を引き付ける。

 物語は1966年(昭和41年)から始まる。作家の長内みはる(寺島しのぶ)は、故郷の徳島で開かれる講演会に呼ばれ、気鋭の作家・白木篤郎(豊川悦司)と出会う。初対面ながら篤郎は妙に馴れ馴れしい。トランプ占いを得意とする篤郎は、「あんたの書くものはこれから大きく変わるよ」と告げる。

 帰京したみはると篤郎は、たびたび会うようになる。みはるは見合い結婚した夫と幼い娘を捨てて、年下の男・真二(高良健吾)と駆け落ちした過去があった。篤郎は幼少期に母親が男をつくって出奔し、祖母のサカ(丘みつ子)に育てられたという生い立ちを持つ。2人はお互いの欠けている部分を埋め合うかのように激しく求め合う。

 篤郎の妻・笙子(広末涼子)は、夫が浮気を繰り返していることを知っていた。篤郎の愛人・初子(蓮佛美沙子)が自殺未遂で入院した際には、篤郎の代わりに見舞っている。それでも笙子は、夫を責めようとはしない。子どもの世話をしながら、篤郎がノートに書いた原稿を清書する日々を送る笙子だった。

 みはる、篤郎、笙子との奇妙な三角関係が、高度経済成長期にあった日本を背景に描かれていく。(1/3 P2はこちら

123
ページ上部へ戻る

配給映画