BE:FIRSTは王道でありオルタナティブな存在へ――1stアルバム『BE:1』を読み解く
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結成から早1年。夏フェス出演を経てリリースされた1stアルバム『BE:1』に、SKY-HIは「日本で産まれる音楽アルバムのベスト盤」という壮大なテーマを掲げた。
サブスクリプション型音楽配信サービスの普及により、全ての時代のあらゆる音楽がフラットに並び、海外で日本の楽曲が聴かれる環境も整った今、世界に向けて発信すべきサウンドは何なのか。様々なジャンルを呑み込みながら独自の進化を遂げてきたJ-POPに改めて向き合い、その歴史を踏まえつつ、グローバルの潮流と合わせて「ポップの再定義」を図るタイミングでもあるのだと思う。
多彩なクリエイターによるコライトで制作された今作には、1つのジャンルでは括りきれない、カラフルな輝きを放つ楽曲が並んだ。冒頭のアカペラが印象的なロックナンバー「BF is…」からリード曲「Scream」までの3曲で、自信と闘志みなぎる挑発的な世界観にいきなり圧倒されてしまったのは私だけではないだろう。アルバムならではの新境地も随所に見られ、しなやかなR&B「Moment」に意表を突かれつつ、メンバーもリリックに参加したユニット曲「Spin!」ではドープなヒップホップサウンドと高速ラップに耳を奪われる。終盤にはチルなトラックが心地良い「Grateful Pain」から原点とも言える「Shining One」の再録、そして彼らのポップサイドを象徴する「Bye-Good-Bye」が並び、全15曲を通してこの1年を総括しつつも新たな音楽性の拡張にも成功している。
アルバムにはeillやMONJOE(DATS)、BMSGで活動を共にするNovel CoreなどSKY-HIと親交のあるミュージシャンのほか、UTAやSUNNY BOYといったトッププロデューサー、Soulflexでの活動でも知られるビートメーカー・Mori Zentaroなど、多彩な顔ぶれが揃った。国籍やバックグラウンドこそ様々だが、「日本で産まれる音楽アルバムのベスト盤」がテーマである以上、その多くを日本のクリエイターが占めるのは必然だったように思える。ちなみにSKY-HIは全曲に携わるほか、プロデュースユニット・SOURCEKEY名義でも参加している。
また☆Taku Takahashi(m-flo)やChaki Zulu(ex.THE LOWBROWS)、HIRO(Full Of Harmony)のように、クラブミュージックやR&Bのキャリアを持ちながらもそれらをポップスに落とし込むのに長けたクリエイターの手腕も光る。先日☆Taku Takahashiが出演した『ヒャダ×体育のワンルーム☆ミュージック』(NHK Eテレ)では「Shining One」について、90’sヒップホップで使われていたサンプル音源を忍ばせることで「ポップなんだけどストリートな感じ」を演出していると語っていた。そういった異なる要素の共存が、これまで生み出されてきた音楽の現代的なアップデートとして、世代を超えフレッシュに響くポテンシャルを秘めている。だからこそ、BE:FIRSTの音楽を特定のジャンルで括ることは難しい。
それは、SKY-HIこと日高光啓のキャリアもまた同様である。AAAのメンバーとしてJ-POPの中心に君臨する一方、ラッパーとしてはグループの成功とは関係なく地道にクラブで活動を続けてチャンスを掴んだ過去がある。J-POPとヒップホップという異なるフィールドでオーバーグラウンドとアンダーグラウンドの両方を知るその経験は、プロデュースワークにも大いに生かされているのだろう。BE:FIRSTはその双方の良さを吸収しながら、王道でありオルタナティブな存在になっていくのだと思う。
「これを聴けばBE:FIRSTがわかる一枚」と言い切りたいところだが、わかったと同時にわからなくなった気もする。何故なら今作が提示するBE:FIRST像は恐らく早期に更新されるからだ。濃密な1年を経て生み出された1枚ではあるのだが、リリースタイミングからすると今年の夏フェスでの経験や9月から始まる1stツアーの成果は反映されていない。そう考えるとこれはまだまだ序章に過ぎないのだろうし、進化のスピードが速い彼らなら次作ではネクストレベルに到達するに違いない。ひとまず現時点での集大成である今作を聴きながら、次なる一手を楽しみに待ちたいと思う。(文= 椎名和樹)
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