高橋洋監督のホラー映画『ザ・ミソジニー』業深き女たちが呼び寄せる異界の恐怖!
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アリ・アスター監督が『ヘレディタリー/継承』(18)と『ミッドサマー』(19)を連続ヒットさせて以降、ホラー映画の水準は世界的にぐんと高まった。台湾では人間の本能を炙り出した『哭悲 THE SADNESS』(21)、タイでは宗教や神の存在を根底から覆す『女神の継承』(21)といった振り切ったホラー映画が、各国で続々と制作されている。
先鋭的なホラー映画を生み出してきたキーパーソンとして、日本の高橋洋監督も外すことはできない。世界中にJホラーブームを流行させた『女優霊』(96)や『リング』(98)などの大ヒット作の脚本を手掛けてきた。また、映画監督としても、脳のシルビウス裂に人為的に刺激を与えることで人間を霊的に進化させようとする『恐怖』(10)や、特殊な体験の持ち主ばかりを集めての交霊会を描いた『霊的ボリシェヴィキ』(18)など、前衛的な恐怖映画を撮り続けている。
高橋洋作品でおなじみの女優――映画界のパワハラを題材にした『旧支配者のキャロル』(11)の中原翔子、コロナ禍で制作されたネットムービー『彼方より』(20)の河野知美がダブル主演した最新作が、『ザ・ミソジニー』だ。確執のある2人の女優が、いわくありげな別荘で舞台の稽古に没頭するあまり、人間ならざるものたちを呼び寄せてしまう。高橋洋作品らしく、実話とフィクションが絡み合う、ひと筋縄では済まない作品となった。
タイトルに謳われている「ミソジニー」は、一般的には「女性嫌悪、女性蔑視」といった意味を持つ。高橋洋監督は劇中、主演女優たちに「男は死んだらそれでオシマイだけど、女はみんな、地獄に墜ちる」と暴言めいた台詞を言わせている。これは女性が同性を蔑視した発言だろうか。
いや、そうではない。ホラー映画を撮り続ける高橋監督にとって、この言葉は女性ならではの情愛の深さ、言い換えれば「業の深さ」を最大限にリスペクトしたものだ。『ザ・ミソジニー』は、逆説的な意味のタイトルとなっている。そして、女性が持つ業の深さを全身で表現してみせるのが、女優という職業である。女優がまとう美しさには、妖しさ、恐ろしさも含まれている。
そんな誰よりも美しく、誰よりも業の深い2人の女優が、“ホラーマスター”高橋洋監督の演出に導かれ、身の毛のよだつ恐怖体験に遭遇する。(1/3 P2はこちら)
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