『ちむどんどん』とんちんかんな暢子と、吹き荒れる無自覚な暴力(第11週)
#朝ドラWATCH #ちむどんどん
賢秀(竜星涼)のハンバーガーショップでの大暴れ、シェフ(高嶋政宏)による「あまゆ」でパンチ事件など、『ちむどんどん』の世界ではしょっちゅうバイオレンス=暴力シーンがある。朝の連続バイオレンス小説。今週も、レストランで新聞社の社員たちが揉め、賢秀は養豚場の娘・清恵(佐津川愛美)に掴みかかるというバイオレンスが。厨房でのトマトソースぶちまけも、バイオレンスの一種ですね……食べものがだめになるシーンは、作った人の気持ちも一緒に傷つけられたのを感じて胸が痛むので、ほんとうに暴力的だと思います。
そういった、『ちむどんどん』内で日常茶飯事な殴ったり突き飛ばしたりする派手な暴力とは別に、目に見えない暴力や、自分が優位に立って力を持っていることに無自覚な攻撃と、それによる傷つきというのもあるなあ……と思った1週間でした。
プロボクシング経験者の賢秀が女性の肩をつかむのは見える暴力ですが、普段の「女のくせに」といった言葉も、目に見えない暴力ですよね。そんな賢秀とは正反対、差別意識を含んだ広告が掲載されたことに反対する新聞記事を書こうとする和彦(宮沢氷魚)は素敵……と言いたいところなんですが……。彼は「男の都合で、女を専業主婦という型にはめるべきじゃない!」と言いながら、女性である愛(飯豊まりえ)がみんなのために「ポークたまご」を取り分けたものをそのまま受け取るんですよね。言っていることとやっていることの差に気がついていない。ここで暢子がつっこむのかと思ったら、「うちのポークが少ない」と文句を言い、「男のほうが食べる量が多いだろう」と考えた愛に謝らせるはめになる。怒るポイントはそこじゃない、しっかりして主人公! そしてこの場面で「女は愛嬌」とか言ってる智(前田公輝)もしっかりして!
とんちんかんな暢子、厨房でもめて「女だからとバカにしないでください! うちはシェフ代行の時は男のつもりです!」と言うのも、とんちんかんが過ぎる。暢子がシェフの代わりを任されたレストランで周りとうまくいかないのは、女だからではなく、暢子が同僚との良好な協力関係を(何年も働いてるのに!)築けていないからでは。そもそも彼らが女性を差別する人たちなら、女性オーナーのもとで長く働けないですよね。あそこでスタッフの「だから女は」的なセリフが入るの、どうしてなんでしょう。
良子(川口春奈)は実家に帰り教職に復帰、博夫(山田裕貴)との関係を模索……この話も「社会と繋がりたいという女性の気持ちが叶ってよかったね!」ということにされそうだけれど。あの地域に保育園があるとは考えにくいので、娘の晴海ちゃんの世話をするのは歌子(上白石萌歌)ということになる。働けず、夢も叶わないまま家から出られない女性が、子どもの面倒を見て当然とされて、良子も母の優子(仲間由紀恵)もドラマの作り手も、そのことを気にする様子がないのがつらい。これも、誰かを傷つけてることに気づかない、静かな暴力じゃないのかな。
「週タイトルにもある『男と女』の話が、私の思ってることとなんか違う。個人の問題とごっちゃになってない? 見えていない暴力に気づいてー!」とモヤモヤがたまり続けた金曜日。母からの「『ありがとう』と『ごめんなさい』を大きな声で言えるところが、暢子の一番いいところ」というアドバイスを受けて、厨房の同僚に暢子が謝り、みんなの笑顔が戻って問題解決、めでたしめでたし。同じ頃、養豚場に戻った賢秀に清恵が謝り、恋の予感、めでたしめでたし。「これ、女が先に謝れば、『男と女』問題はすべて解決!みたいに見えるんですけどー?」と、モヤモヤした気持ちマックスで画面に向かって叫んでも、「料理人としてまた一つ階段を上った!」とカビラさんに宣言され、シャッターを閉められたかのように今週も終わり。次週予告は別バージョンの「男と女」っぽいですが……嫌な予感。私は何があっても愛ちゃんを応援します。
あ、あと「夢オチ」の種明かしを翌日放送までひっぱるの、どうかと思います。夢オチは「これからどうなるんだろう」と考えていた時間を「無駄でした!」と宣言するようなもので、種明かしまでの時間の長さは「あんなに考えたのに夢オチか!」といういらだちの大きさと比例するみたいですよ、私調べですが。
『ちむどんどん』経験が積み重ならない主人公と、“優しさ”で支配する母親(第9週)
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NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:黒島結菜、仲間由紀恵、大森南朋、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌ほか
作:羽原大介
音楽:岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:高橋優香子、松田恭典
広報プロデューサー:川口俊介、鈴木 葵
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/chimudondon
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