『妖怪シェアハウス 白馬の王子様じゃないん怪』ユルさあり、社会風刺あり。“妖怪映画”の大傑作!
#映画 #小芝風花 #松本まりか #妖怪シェアハウス
ビジュアルに騙されるなっ! 社会問題を切り取った現代風刺!!
小芝風花主演の“ホラーコメディー”ドラマシリーズを映画化した今作。影の主人公と言っても過言ではない、松本まりか演じる「四谷怪談」で有名なお岩さんは、これまでにも『四谷怪談 お岩の亡霊』(1996)や『嗤う伊右衛門』(2004)など、さまざまな作品に登場してきた。だが、恐怖の対象というよりは、男に騙されて散々な目に遭ってしまった女性の象徴であることから、“お岩さん=かわいそうなお化け”という印象を残しもした。
映画『妖怪シェアハウス』は、そんな恐怖と哀れみが共存するお岩さんの物語と、小芝演じる主人公・澪の“男運”の悪さを絡めることで、見事なまでにコメディ要素を際立たせている。
ドラマ版でも、その関係性は描かれてきたものの、映画版では、2人の関係がより深まる展開が用意されていて、人間と妖怪の種族を越えた友情が描かれているのも見どころだ。
ドラマ版を観ていない人向けに軽いキャラクター紹介も入ることから、初見でも楽しめるようになっている。ただ、今年4月期に放送されたドラマ『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』の“最終怪”から直結する続編となっており、ドラマのラストで謎のままになっていた、妖怪たちの闇落ちの原因が判明したり、とうとう閻魔大王が姿を表したりと、かなり展開が進むことからも、ドラマを観ていたほうが映画もより楽しめることは間違いない。
また今回は、ドラマ全編を通して社会風刺をしてきた本シリーズの集大成ともいえるテーマを描いている。古来から、人間の欲望や執着といった感情が屈折したことで、妖怪を誕生させてきたのだから、そういった余分な感情を取り払ったほうが人間は幸せになれる……といった、究極の問いを描いているのだ。
シンプルな理由で行動する妖怪やおばけよりも、しがらみによって複雑化しすぎた人間の方がよっぽど厄介で恐ろしい。社会問題を妖怪の視点からズバッと切り込むスタイルは、「ゲゲゲの鬼太郎」の物語構成に似ているが、『妖怪シェアハウス』はそれに加え、ユルさが重なることで、独特の空気感を醸しだしている。
なんといっても味わい深いのは、テレビシリーズ同様に、映画版でも導入される劇メーション(※)のシーンである。
(※)劇メーション=“劇画” と“アニメーション”からなる語。一枚絵と実写を融合させたりしてアニメのように物語を展開させていく手法。
劇メーションといえば、モンティ・パイソンの風刺コントだったり、楳図かずお原作の『妖怪伝 猫目小僧』(1976)が有名。その系譜を受け継ぎながら、漫☆画太郎のような奇怪なテイストのキャラクターが登場する『燃える仏像人間』(2013)や『バイオレンス・ボイジャー』(2019)といった作品でもお馴染みの宇治茶が、今作の劇メーションパートを手掛けている。
ユルくて変だけど、でもリアルという絶妙なテイストが、ドラマのテイストと見事にマッチしている。そんの独自の絵柄を持つ宇治茶を起用したのは、大正解だったと思う。
『妖怪シェアハウス 白馬の王子様じゃないん怪』
2022年6月17日(金)公開!
出演:小芝風花 松本まりか 毎熊克哉 豊田裕大 池谷のぶえ
佐津川愛美 長井短 井頭愛海 尾碕真花 小久保寿人 片桐仁 安井順平
望月歩 池田成志 大倉孝二ほか
監督:豊島圭介 脚本:西荻弓絵 音楽:井筒昭雄 主題歌:ayaho「アミ feat. 和ぬか」
制作プロダクション:角川大映スタジオ
配給:東映
公式サイト:https://youkai-movie2022.jp/
公式Twitter:@youkaihouse5
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