謎が増えていく一方の『ちむどんどん』、登場人物の静かな成長はいいけれど…(第3週)
#朝ドラWATCH #ちむどんどん
お母ちゃん(仲間由紀恵)が仕事を掛け持ちしてもどうにもならず、子どもをひとり手放す決意をするほどの借金を、描かれなかった7年でどうやって返したのか。良子(川口春奈)が短大に、他の子たちも高校までいけるほどのお金を、どうやって得たのか。その謎がとける第3週だ!と思っていたのに……何一つ教えてもらえないまま1週間が過ぎてしまったことにびっくりです。
もしかしたら土曜日にカビラさんが解説してくれるかも、と思ったけれど、そんな奇跡は起きず。共同売店の奥さんが亡くなったからお母ちゃんが代わりに働くことになりました……って、人の不幸のおかげで仕事はなんとかなったみたいな、問題解決とするにはちょっと喜びにくい展開で、それでいいんでしょうか。そして「連帯保証人だから困る」とお金を返すことを迫っていた賢吉叔父さん(石丸謙二郎)が、とうとう今週は姿を見せず。もしかして彼が借金をすべて肩代わりさせられ、どこか遠くに連れ去られたのではと、個人的に心配です。
お金の出どころがわからないまま、なぜか普通に暮らせているように見える比嘉家ですが、「貧乏です」という印のようにみんな服をつぎはぎにしていて、それをからかう「いじめっ子」がいる。
以前はそれが中学生の島袋くんで、今週はそこに暢子(黒島結菜)の就職内定先の社長の息子を配置。そのほか、暢子に「女のくせに」「女らしくしろ」と圧をかけるポジションとして、高校の同級生男子と、会社の専務も用意された。この「暢子をいじめるために配置された人たち」が、なんだか、薄いんですよね……。暢子をいじめる仕事以外に何をしているのか、そのほかの時間を想像することができないくらい、薄い。いじめを終えたら空気を抜いて畳まれて、島袋くんと一緒に倉庫にしまわれてそう。そういう人たちをあてがわなくても、お父さんが亡くなって、お金がなくて、思うような仕事先がなくて、女だからと当たり前のように言われてしまって、友だちのようなおしゃれな服を買えなくて……みたいな辛さはちゃんと伝わるので、そこはドラマ見てる人たちを信じてくれてもいいんじゃないかな、説明過多じゃないかなと思います。
説明が欲しい、と思うところは流されて、それはもういいから、と思うところに時間を割かれてる。このアンバランスさ、どうしてなんでしょう。
このドラマで私がいいなあと思っているのは、登場人物たちの静かな成長ぶりなんですが、そのあたりが割とさらっと描かれているので、もしかしてその良さについて、作っている人たちは気づいてないんじゃないか、とすら思えてしまって。
例えば、今週は出てこなかったけれど、東京から来た和彦くん。いつもきっちり履いていた靴下を、運動会で脱ぎ捨てて友だちのために裸足で走り、また靴下を履いて東京へ戻っていく彼の成長、すごくよかったと思う。今週の内容では、働かずにぶらぶらしていた兄の賢秀が、家族に黙って仕事して、お金を持ってくる変化もよかった。幼なじみの智にもらった手作りメダルをずっと大事にしている歌子が、もうあの頃のような子どもではなく恋する少女になっていて、彼に会う前に髪を整えるところもすてきだった。暢子とのかけっこに負け続けていた同級生の正男くんが、金曜日に勝つまでずっと勝負していたのはすごい。そういう、若い人たちがいろいろ考えて変わっていく姿を、もう少しじっくり追ってもいいんじゃないのかなあと思います。
せっかくの朝ドラ、せっかくの1日のはじまりなんだから、いじめっ子たちのあざける声よりも、楽しげな笑い声のほうを多めに聞かせてもらいたいなあ。そして、残されている謎については早めに教えてもらいたいです、気になり過ぎて困ってるので。結局借金はどうなったのか、どうしてお母ちゃんはニーニーにだけあんなに甘いのか、暢子にあの就職先を紹介したらしい売店の善一さんの立場は大丈夫か、賢吉叔父さんは無事なのか、アベベはすでに食べたのか、とか。
『若草物語』をオマージュする『ちむどんどん』 明るさの中に見える不穏な影(第1週)
CGかと思うほどの澄み切った美しい海と南国の緑にかこまれた、自然いっぱいのふるさと沖縄で、両親と兄妹たちに愛されて、元気いっぱいに育つヒロイン・暢子。朝ドラの「おてん...■番組情報
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:黒島結菜、仲間由紀恵、大森南朋、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌ほか
作:羽原大介
音楽:岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:高橋優香子、松田恭典
広報プロデューサー:川口俊介、鈴木 葵
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/chimudondon
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