華やかなファストファッション業界の裏側を描く映画『メイド・イン・バングラデシュ』
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労働者の生活には興味を示さないバイヤー
発展途上国の労働者たちが先進国の大企業によって搾取されている構図は、マイケル・ウィンターボトム監督のブラックコメディ『グリード ファストファッション帝国の真実』(19)でも描かれていた。バングラデシュで生まれ育った女性監督ルバイヤット・ホセインは、実在の女性ダリヤ・アクタードを主人公シムのモデルにし、労働者の内情をより詳細にドラマ化している。
シムたち女性労働者らが”情弱”な状況に置かれていることを、鮮明に映し出したシーンがある。大企業から来たバイヤーがシムたちの働く工場を視察する。この白人バイヤーは、工場の男性幹部に「君の工場の給料は高すぎる」と告げ、値下げを求める。商品を安く仕入れることができれば、それはバイヤーの手柄になる。だが、その分だけ工員たちの給料は押さえつけられることも意味する。シムたち現地の労働者がどんな生活をしているか、バイヤーはまるで興味を持とうとはしない。
バイヤーと工場幹部とのやりとりは英語で交わされていたが、この様子をスマホで録画したシムは、スマホを貸してくれたナシマに通訳してもらい、搾取の実態に愕然とする。自分たちの縫ったTシャツ3~4枚が、自分たちの月給と変わらない値段で先進国では売られていたのだ。
マジメに働いた者がバカを見るような社会にはしたくない。自分たちのためだけでなく、後に続く若い世代のためにも。シムたち女性労働者は工場でせっせと働き、少ない休みを利用して、理想の職場に変えていくために奔走する。一方の男たちがまともに働かずに、保守的な社会を守り続けようとしているのとは対照的だ。
ファストファッションの店先には、新しい商品が次々と並ぶ。テレビのCMでは人気タレントが、ファストファッションをかっこよく着こなしてみせている。それらはすべて、シムたちがエアコンのない工場で休まずに縫い上げた、血と汗と涙の結晶であることを覚えておきたい。
『メイド・イン・バングラデシュ』
監督/ルバイヤット・ホセイン 撮影/サビーヌ・ランスラン
出演/リキタ・ナンディニ・シム、ノベラ・ラフマン、パルビン・パル、ディパニタ・マーティン
配給/パンドラ 4月16日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
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pan-dora.co.jp/bangladesh
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