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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.676

実在のセクハラ事件が題材の社会派ミステリー 被害者が追い詰められる『ある職場』

実在のセクハラ事件が題材の社会派ミステリー  被害者が追い詰められる『ある職場』の画像1
ホテルに勤める早紀(平井早紀)は、セクハラ事件後も誹謗中傷にさらされる

 セクハラに遭ったヒロインを、事件後も苦しめ続けている真犯人が同じ密室の中にいる。セクハラ問題をSNSに広め、炎上させた真犯人は誰なのか? そして追い詰められたヒロインは、この事態にどんな決断を下すのか? 実際に起きたセクハラ事件をモチーフにした映画『ある職場』は、最後まで見逃せないミステリータッチの社会派ドラマとなっている。

 有名ホテルに勤める早紀たちは、湘南にある社員用の保養所で2泊3日のバカンスを楽しもうとしていた。フロント係の早紀は上司の熊中からセクハラに遭い、この事件は社内だけでなく、SNSで世間にも広く知れ渡ってしまった。早紀は被害者なのだが、ネット上では彼女への誹謗中傷が止まらない。職場の雰囲気は最悪。気分転換を図ろうと、社員有志が社外の知人らも誘って催した小旅行だった。

 初日は和やかなムードだった。早紀の同僚である拓はゲイであることをカミングアウトし、パートナーの修を紹介する。2人は職場仲間から温かく受け入れられた。だが、早紀はネット上で自分の個人情報が流失していることから、スマホが手放せない。早紀の先輩にあたる木下は「旅行中はスマホを見るのをやめなよ」と諭すが、炎上中の早紀は気が気ではなかった。

 そんな折、重大な事実が発覚する。SNS上でセクハラ問題を広めたユーザーが、この保養所周辺にいることが分かった。この旅行のメンバーの中に、早紀の苦しむ姿を喜ぶ真犯人がいる可能性が高い。SNSアプリの電話機能を使えば、そのユーザーが誰だかが瞬時に判明する。仲間を疑うようなことは止めようという声が上がる一方、早紀は真犯人の正体を確かめずにはいられなかった。楽しいはずのバカンスが、魔女さがしの修羅場と化していく。

 シドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』(57)は、偏見や無関心さが事実を歪めることを描いた名作として語り継がれている。三谷幸喜脚本による映画『12人の優しい日本人』(91)では、日本人ならではの優柔不断さが事件の真相を解き明かした。舩橋淳監督の『ある職場』も、同じく密室を舞台にしたディベートスタイルの作品となっており、日本人のジェンダー問題に対する意識をリアルに浮かび上がらせている。

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