日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > ビリー・ホリデイとFBIの対決を描く映画
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.673

黒人リンチを告発した闘う歌姫『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』

黒人リンチを告発した闘う歌姫『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』の画像1
公民権運動が起きるよりも早く、ビリー・ホリデイは「奇妙な果実」を歌った

 南部の木には奇妙な果実がなる

 血が葉を濡らし 根にしたたる

 黒い体が揺らいでいる

 ビリー・ホリデイが歌ったヒット曲「奇妙な果実」はそんな歌詞で始まる。木にぶら下がっている奇妙な果実とは、黒人の死体のことだ。米国南部で根強く残っていた黒人差別、黒人リンチを告発したメッセージソングだった。

 ビリー・ホリデイが「奇妙な果実」を歌い始めたのは1939年から。ニューヨークのブルックリンで高校教師をしていたエイベル・ミーアポルが、新聞に掲載されていた黒人リンチ事件に触発されてこの曲を生み出した。

 ミーアポルはロシアで迫害されて米国に渡ったユダヤ系の移民だった。社会から迫害された家に育ったミーアポルがペンネームを使って書いた曲は、幼い頃から辛酸を舐めてきた黒人ジャズシンガーのビリー・ホリデイが自分の血肉と一体化させて歌うことで、100万枚のセールスを記録する大ヒット曲となった。

 だが、「奇妙な果実」のヒットを好ましく思わない人たちもいた。共産主義と同じくらい「奇妙な果実」は社会不安を煽るものとして、米国政府はビリー・ホリデイに圧力をかけた。映画『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』は、ひとりの女性シンガーと国家との闘いを描いた実録ドラマとなっている。

 アカデミー賞脚色賞などを受賞した『プレシャス』(09)や公民権運動の歴史を大統領官邸側から描いた『大統領の執事の涙』(13)で知られるリー・ダニエルズ監督が、ベストセラーノンフィクション『麻薬と人間 100年の戦争』(作品社)の第一章「アメリカvs.ビリー・ホリデイ」をドラマ化。ビリー・ホリデイ役に抜擢されたのは、これが本格的な女優デビュー作となる歌手のアンドラ・デイだ。彼女がステージ上でフルコーラスを歌う「奇妙な果実」が本作のハイライトシーンとなっている。

123
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

山崎製パンで特大スキャンダル

今週の注目記事・1「『売上1兆円超』『山崎製パ...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真