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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.672

格差社会が生み出したダークヒーロー 上西雄大主演&監督作『西成ゴローの四億円』

格差社会が生み出したダークヒーロー 上西雄大主演&監督作『西成ゴローの四億円』の画像1
上西雄大と津田寛治が共演する犯罪アクション『西成ゴローの四億円』二部作

 コロナ禍が吹き荒れる映画界に、雑草のようにタフな野生の花が咲き開いた。大阪生まれの俳優・上西雄大がプロデューサー・主演・監督・脚本を兼ねた『西成ゴローの四億円』『西成ゴローの四億円 死闘篇』二部作が全国公開される。大阪の西成で日雇い労働者として暮らす中年男・ゴローを主人公にした犯罪サスペンスであり、関西ならではのエモーショナルな人間ドラマにもなっている。

 上西雄大は1964年生まれ。役者デビューは40歳を過ぎてからという超遅咲きの俳優だが、長編監督デビュー作であり、心優しい犯罪者・カネマサを演じた『ひとくず』(20)はロンドン国際映画祭やミラノ国際映画祭などで絶賛され、多くの映画賞を受賞。日本でもコロナ禍の中をしぶとくロングラン上映を続け、「追いくず」と呼ばれる熱烈なリピーターを生み出した。2月12日(土)からは渋谷ユーロスペースにて『ひとくず ディレクターズカット版』が上映されることも決まっている。

 児童虐待というシビアな題材を扱った『ひとくず』だが、子どもを虐待する親も心に傷を負っているという虐待の構造をドラマ化し、多くの人の共感を呼んだ。『ひとくず』が話題となり、「上西雄大に映画を撮らせたい」という出資者たちが現れた。そうして完成した『西成ゴローの四億円』二部作は、インディーズ映画の枠を超えた娯楽巨編だ。

 ゴローは殺人罪で服役していた過去を背負っている。事件当時の記憶を失い、今では西成で日雇い労働者としての生活を送るゴローだった。ある日、病院に運ばれたゴローは、生活保護を受ける手続きの際、別れた妻・真理子(山崎真実)が経済的に困窮していること知る。

 ゴローとの間に生まれた娘・裕歌(田中心彩)の心臓病の手術のため、海外への渡航費も含めて4億円を真理子は必要としていた。だが、ゴローが殺人罪を犯したことから、支援金を受けることができないという。真理子は大学での仕事を辞め、SM嬢として働いていた。

 闇金姉妹(徳竹未夏、古川藍)を介して、ゴローは自分の眼球と腎臓をひとつずつ摘出し、闇売買する。ゴローの眼球と腎臓は合計500万円で売れたが、それでも裕歌の手術代にはまるで足りない。追い詰められたゴローは、事件前後の記憶を少しずつ取り戻し始める。

 ゴローはかつては政府の諜報機関「ヒューミント」の工作員だった。任務中に一家惨殺事件が起き、ゴローはその罪をひとりで負ったのだ。金策に走るゴローの前に、ヒューミント時代の同僚・日向(津田寛治)が現れる。ヒューミントの下請けとして、ゴローは汚れ仕事を請け負うことを決める。

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