サッカーW杯予選中継問題、急転直下「ラジオ中継」解決とトップの決断
#ニッポン放送 #W杯
AMラジオ界のトップに君臨する「意地」だろう。
在京ラジオキー局のニッポン放送が、3月24日に行われた2022 FIFAワールドカップ・アジア最終予選のオーストラリア対日本戦を関東ローカルで実況生中継した。この中継は、18日に檜原麻希社長が定例会見の場で発表。勝てば7大会連続のW杯本大会への出場が決まる歴史的一戦であり、日本は2-0で見事オーストラリアに勝利し、W杯進出を決めた。
W杯予選中継をめぐっては、大会ごとに放映権が高騰。長年にわたり放送を担当していたテレビ朝日は、アジア最終予選の日本代表ホーム戦5試合のみ地上波独占生中継するとし、アウェー戦からは事実上の撤退を余儀なくされた。
代わりに台頭してきたのが、スポーツ動画配信サービスを展開する「DAZN」で、ホーム・敵地を問わず、日本戦全試合を生配信している。急速な露出低下に焦った日本サッカー協会は、直前までDAZN側と協議し、地上波テレビ局での放映を模索したが、放映権料負担をめぐって交渉は決裂した。
一方、在京ラジオ局であるニッポン放送側は、放映権取得について「ストレートに出させていただいて調整してもらった」と説明。ワールドカップ予選中継自体、2018年以来4年ぶりになるが、同局関係者は「ちょっとしたからくりもある」と事情を語る。
「そもそも地上波テレビも、放映に関わるサブライセンス(権利)をDAZNから購入しなければ中継はできない。ただDAZNにとって、地上波テレビは商売敵にもなりますから簡単に値引きもできないのです。他方、ラジオの場合はDAZN側がそこまでライバル視していなかったことも大きいですね」(同)
以前は「ジョホールバルの歓喜」など重要な試合は全て、局アナ、スタッフを海外出張させて現地から実況放送したものだが、さすがに昨今は「そこまで予算が割けない」(同)とのことで、有楽町のスタジオからひっそりと画面を見ながら実況するオフチューブ形式で放送することになった。
ニッポン放送といえば、現在も続いているプロ野球中継『ショウアップナイター』だけでなく、過去には毎週のようにJリーグの試合独占中継していた時期もあったが、「スポンサーも集まらず手放し、日本代表戦中継もどんどん縮小することになった」(同)という懐事情もある。ただ今回は、「無料媒体で唯一、歴史的一戦を中継できることを通じて、世間に会社をアピールする狙いもあった」と、なかば“トップダウンで決まった”側面もあるという。
「ラジオの良さは、その時々に応じたフレキシブル編成できるところが大きいが、昨今のラジオ不況もあり、その良さをなかなか出し切れていなかった。今回は久々に意地を見せた格好だね」(同局に出入りする制作会社スタッフ)
オールドメディアと言われて久しいラジオ業界にとっては明るいニュースとなったのかもしれない。
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