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W杯予選、地上波テレビ中継なしの衝撃 今こそ問われる「どのサブスクより高い」NHKの存在意義

W杯予選、地上波テレビ中継なしの衝撃 今こそ問われる「どのサブスクより高い」NHKの存在意義の画像1
サッカー日本代表公式Twitter(@jfa_samuraiblue)より

 これはテレビの終焉なのか、はたまた日本サッカーの終焉なのか──。

 9月7日(現地時間)、日本代表はW杯最終予選の中国戦に1対0で勝利したが、この試合はテレビで放送されなかった。放映権料が高騰して、アウェー戦に関してテレビ局が手を引き、スポーツ専門の定額制動画配信サービス「DAZN」が放映権を獲得したことからだが、この意味は重い。

 1998年のフランス大会以来、7大会連続のW杯出場を目指す日本代表。ホームで行われた初戦のオマーン戦を落とし、是が非でも勝ち点3が欲しかった日本だが、試合開始時間が日本時間の午前0時だったことを差し引いても、盛り上がりに欠けるものとなった。この試合はテレビの地上波はおろかBSでも放送されず、中継を行ったのはDAZNのみ。つまり、地有料サービスのDAZNと契約していなければ、試合を見ることができなかった。

「サッカーW杯予選は、テレビ局にとってドル箱中のドル箱コンテンツ。試合が深夜でない限り、視聴率20%超は固く、2006年のドイツ大会以降、最終予選はすべてテレビ朝日が中継を担当してきました。しかし、17年に結んだ『4年180億円』の契約が切れ、新たに提示された放映権料は、なんと『8年2000億円』。とてもじゃないが払いきれる額ではなく、DAZNに持っていかれました」(広告代理店関係者)

 テレ朝の最終予選中継のキャッチコピーは「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」だが、これでは戦う前に負けてしまったということになる。これをサッカー関係者は強く危惧する。

「日本のサッカーの人気を牽引してきたのは間違いなく日本代表です。有名な“ドーハの悲劇”や“ジョホールバルの歓喜”、日韓W杯などを通じて、代表戦のテレビ中継はサッカーに普段は興味がない層まで引き寄せる力があった。そして、『FWは○○がいい』『□□を代表に呼べ』といった具合に議論が盛り上がり、Jリーグにも興味を持つようになるという構図ができていたのです。

 ですが近年、日本はW杯に出るのが当たり前のような雰囲気になり、代表戦の視聴率はジリジリと低下。先日のオマーン戦は13.1%(ビデオリサーチ調べ、関東)でした。このまま代表戦のテレビ中継が減るようだと、サッカー人気は間違いなくガクッと落ちることでしょう。そうなれば競技のレベルも落ち、さらに人気が落ちて……という悪循環です」(サッカー誌ライター)

 とはいえ8年2000億円=1年あたり250億円は、一民間企業に払えるレベルの額ではない。しかし、1年250億円などへっちゃらという企業も世の中にはある。しかも、これを読んでいるアナタは、おそらくその企業の“スポンサー”だ。

「近年、テレビの勢いが急激に衰え、有料配信サービスがそれに代わる存在になっていますが、月額利用料はAmazonプライムビデオが500円、NETFLIXやHuluが1000円前後で、DAZNは1925円です。一方、自宅にテレビがあるだけで徴収されるNHKの受信料は、衛星放送まで入れると約2200円。NHKの受信料収入は、年間7000億円近くにも上ります。

 もちろん、1つのスポーツ競技に莫大なお金を投じることには批判もあるでしょうが、サッカーW杯はオリンピックにも比肩する一大人気コンテンツ。“みなさまのNHK”が放映する意義は十分にあるでしょう。

 しかもNHKには現在、新社屋の建設計画がありますが、そちらの建設費は当初の計画で3400億円。あまりに高すぎると批判が寄せられ、1700億円に圧縮されましたが、民放各局の社屋と比べるとケタが1つ違います。受信料を払っている方は、お金の使われ方にもう少し敏感になってもいいと思いますよ」(放送関係者)

 みんなでサッカーを観ながら盛り上がる、という文化が完全に消えてしまわないよう、ここはひとつNHKに頼まれてもらうしかないのかも?

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2021/09/09 18:00
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