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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.677

今泉力哉&城定秀夫の魅惑のタッグ作! 大人の恋愛コメディ『猫は逃げた』

オズワルドの伊藤俊介が映画俳優デビュー

今泉力哉&城定秀夫の魅惑のタッグ作! 大人の恋愛コメディ『猫は逃げた』の画像2=
オズワルド・伊藤俊介が演じるのは、愛について語る映画監督役

 広重と真実子はラブホテルで、亜子は自宅で松山と、それぞれ浮気に勤しんでいる。ダブル不倫中の2組のラブアフェアを、今泉監督は明るくあっけらかんと描いている。

 今泉監督は劇映画デビュー作『こっぴどい猫』(12)から、誰かが誰かを好きになる気持ちをモチーフに撮り続けている。一方通行の片想いはつらくて、しんどい。回転木馬のようにどれだけグルグル回っても、相手に想いはなかなか伝わらない。でも、誰かのことを愛しく想う気持ちは、何よりも尊いもの。同性愛をテーマにした『his』(20)、アイドルに夢中なオタクたちを主人公にした『あの頃。』(21)など、さまざまな愛のかたちを今泉監督は撮り続けている。

 そんな今泉監督が描く『猫は逃げた』では、既婚者の浮気心も決して全否定はされない。人が人を好きになる気持ちを、ロープで縛ることはできないからだ。もちろん現実世界で浮気をすれば、傷つく人がいるし、ダブル不倫が発覚となればネット上のモラリストたちから激しいバッシングを食らうことになるだろう。だが、現実社会が生み出したルールやモラルから解き放たれた、本当に自由で、自分に正直になれる世界こそが「映画」ではないだろうか。

 今泉監督の演出の妙が楽しめるよう、脚本を担当した城定監督は、亜子と広重、そして2人のそれぞれ浮気相手である松山と真実子、この4人が一堂にそろうクライマックスを用意している。世に言う「修羅場」である。修羅場に参列した4人は、それぞれの本音を吐くことになる。大人の恋愛感情が複雑に絡み合った4人のトークバトルシーンこそ、今泉作品の真骨頂だ。

 今泉監督が故郷・福島で撮影した『退屈な日々にさようならを』(17)に出演以降、メインキャストだった松本まりかの注目度が上がり、今では売れっ子女優となった。今泉作品に出演する女優は、みんな今泉監督の愛情を浴び、まぶしく輝く姿がスクリーンに映し出される。モデル、雑誌編集者としての顔も持つ山本奈衣瑠、インディペンデント映画への出演が多かった手島実優、どちらも活躍の場をこれから広げるに違いない。

 また、お笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介が出演しているも注目ポイント。人気女優・伊藤沙莉の実兄である伊藤俊介は、映画俳優デビューとなる本作で新進気鋭の映画監督を演じている。彼が「愛の源」について描いた映画は、どんな内容だったのだろうか。広重は試写室で爆睡してしまったが、本作がソフト化された際には特典映像として付けてほしい。

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