『らんまん』老いた万太郎の「金色の道」を再び照らす早川逸馬(第24週)
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白髪。シミが目立つようになった頬。まるみを帯びた背中。いやー、お互い老けたね!と声をかけたくなるような、第24週の万太郎(神木隆之介)。歳を重ねて植物研究も進み、図鑑の原稿はもう完成間近。しかしここまできても、版元は見つからず、大量に印刷できるという新型の印刷機も買えていない。昔の万太郎と寿恵子(浜辺美波)なら、「なんとかなりますよ!」とまた借金して印刷機を買って、どんどん図鑑を作ってしまいそうだけど、今のふたりは堅実。寿恵子は渋谷の待合茶屋を繁盛させ、コツコツとお金をためている様子だし、万太郎もいまだ大学で助手として働いている。
そして驚いたことに、万太郎が「図鑑は世の中に愛されるじゃろうか」と弱気になっている。あの、誰からも愛されて当然という顔でヘラヘラしていた「峰屋の若」とは大違い。わがまま放題で自分勝手な若い万太郎にはずいぶんイライラさせられたけど、歳をとって普通に慎重になっている万太郎はちょっとつまらない……と思ってしまうのが不思議。そしてあの頃のわがまま万太郎を彷彿とさせる押しの強い存在・南方熊楠が(手紙だけだけど)現れて、余計に万太郎の老いが目立つ。南方という光り輝く恒星によって、万太郎の影が濃く落ちるような。各地の神社の森が消えてしまうと、神社合祀令に反対運動をしている南方。若い頃の万太郎がこれを聞いたら即座に運動に合流するに違いないのに、野宮(亀田佳明)から「君に願いを託す」と手紙をもらっても、まだぐずぐずとしている。徳永教授(田中哲司)には決して関わるなと命令され、悩んだ末に荷造りを始めても、子どもたちの声を聞いてやはり手が止まる……家族という守るべき存在、彼らのためにも「東京帝国大学」という肩書きは手放せない。「大学の助手」という身分があるから、どこでも信用されるのだから。大学に背けない今の万太郎、これが老いるということなんだろうか。
万太郎はこのまま、大学助手の身分に守られながらも縛られて、暗い影のように生きていくのかと思ったところで、早川逸馬(宮野真守)がまさかの再登場、生きててよかった! 自由民権運動のリーダーから資産家・永守(中川大志)の代理人という立場に替わり、ピカピカの洋装に衣装もチェンジ。でもネクタイの色はあの羽織と同じ、彼の心を表すような燃えるような赤。そしてあの頃の熱さのまま、悩んでいる万太郎に「身分は、大事か?」と語りかける。あの日の自分は、身分ではなく万太郎の目を見て信じたのだ、と。その言葉は、影になって見えなくなっていた、万太郎の金色の道を照らす。戦争に行く永守に「帰ってきたら投資をしてください」と約束をすることで、万太郎は永守の未来への道を照らす。日本酒の酵母菌について研究を進める藤丸(前原瑞樹)は、綾(佐久間由衣)の酒造りの道を照らす。それぞれが進む金色の道が暗くなった時、光となってお互い照らしあえる人がいるのは、本当にいい。万太郎と竹雄(志尊淳)、波多野(前原滉)と藤丸もそう。迷う日があっても、光があればきっとまた道を見つけられる。
そして万太郎は、押しかけた大学を自ら去るというわがままをしてでも、植物を守るために神社合祀令に反対する決意をかためる。ハチクの花が咲いてから、日露戦争、渋谷に練兵場、伸び続ける鉄道網など、いろんなことが起きている日本。政府は「戦争」「神社合祀令」などと、破壊することに熱心。政府に「雑草」と思われているだろう人々は、作ることや守ること、人を結びつけることに熱心。破壊の側に立つよりも、人々や植物の方を選び、世話になった大学の命令に反く万太郎、その自分勝手さとわがままを今は心から支持したい。そして万太郎の金色の道を、一番近くでずっと照らしてきた人、寿恵子。次週予告の彼女を見ただけでもう泣いています。ああ、終わらないで。
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NHK連続テレビ小説『らんまん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこうほか
作:長田育恵
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん「愛の花」
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
植物監修:田中伸幸
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/ranman
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