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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > カジノ誘致めぐり菅政権と対決した男とは
『ハマのドン』松原文枝監督インタビュー

『報ステ』元プロデューサーが撮った初の劇場映画 カジノに反対する男の生き様ドキュメンタリー

トランプ政権の意向から始まったカジノリゾート法案

『報ステ』元プロデューサーが撮った初の劇場映画 カジノに反対する男の生き様ドキュメンタリーの画像3
映画『ハマのドン』より

――元々、藤木会長はカジノリゾートの横浜誘致に賛成していた。しかし、カジノはギャンブル依存症者を生み、家庭崩壊を招くことを知り、カジノ反対派に。藤木会長は、利権や立場に縛られない非常に稀有な人物ですね。

松原 今の時代、損得勘定で動く人が多くなったと思います。最初は永田町や霞が関では、藤木さんは自分の利権のためにゴネているだけだろうと見ていたんですが、でもそうじゃなかった。日本の最高権力者を敵に回して闘うというのは、普通では考えられないことです。霞ヶ関で何か不都合なことを口にすれば、閑職に飛ばされてしまう。自民党の政治家ですら、総理に反対意見を言おうものなら、冷や飯を食わされ、閣僚入りさせてもらえなくなってしまう。そんな時代に、藤木さんは不利益を被ることを覚悟の上で闘うという。藤木さんのそうした闘う姿勢に、私も惹かれたように思います。

――カジノリゾートを造れば、雇用が増え、税収は大幅にアップするとプラス要素のみ謳われがちですが、実際に大儲けするのは米国の資産家と日本の一部の利権者のみ。松原さん自身も、IR法案には疑問を感じていた?

松原 あれは酷かった。数の力だけで決めたわけです。石原慎太郎都知事がお台場にカジノを建てようと、2000年ごろに言い出したのが始まりです。世論の反対の声は強く、公明党も当初後ろ向きでしたから、ギャンブルは日本の法律で禁じられているわけですから、難しいだろうなと思っていたんです。でも、第二次安倍政権になってから、トランプ政権の強い意向もあったようですが、カジノ法案は委員会採決で強行採決されてしまった。国会の会期を延長するなど、かなりの強引さでした。他にも秘密保護法、安保法制、共謀罪なども問題になっていましたが、選挙で勝てば民意を得たりと、数の力で押し切る国会運営を行っていたことには危惧を感じていました。

「死んだ人間はしゃべるんだよ」という藤木会長の言葉

――記者会見の席で、藤木会長が「死んだ人間はしゃべるんだよ」と語るシーンには、ゾクゾクするものを感じました。

松原 菅総理に宣戦布告した会見での言葉です。藤木さんのお父さん・藤木幸太郎さんや、港湾で働いて亡くなった大勢の人たちの想いを受け継いでいる人なんです。先人たちが残してきたものを、きちんとこれからの世代のために残そうという気持ちからの言葉だと思います。

――本作を観た後、藤木会長の半生記『ミナトのせがれ』(神奈川新聞社)も読みました。自著の中では山口組三代目組長として知られた田岡一雄との交流も明かされています。かつての港湾は賭博や賭場を仕切るヤクザが付き物だったものの、全国港湾荷役振興協会の初代会長を務めた父親・藤木幸太郎の代から賭博やヤクザとは縁を切る一方、同協会の副会長だった田岡一雄が亡くなった際には、藤木会長が協会葬を開くなどの人情エピソードが満載です。

松原 藤木さんはすごく開けっぴろげで、隠し事をしない人なんです。隠すことで、余計な憶測を呼んでしまうものですが、藤木さんにはそれがありません。お父さんの藤木幸太郎さんが田岡一雄と並んでいる写真を見せてもらいましたが、幸太郎さんのもう一方に立っていたのは阿部重作(住吉一家三代目総長)でした。後から気づいたんですが。

――裏社会の東西のトップが、先代・藤木幸太郎を挟んで写真に収まっているという歴史的な一枚だったんですね。

松原 他にも大物右翼だった児玉誉士夫や稲川会の話なども、藤木さんはするわけです。日本の歴史の裏側を自分の目で見てきている一方、『五重塔』や『日本捕虜志』といった文学の話題もされるんです。知識量、読書量がハンパない方です。並の政治家では、敵わないでしょうね。毎日早起きして、新聞記事を切り抜き、読書をしてから飼い犬の文太を連れて散歩し、それから会社に出社するという毎日を送っています。夜は7時になると、さっさと寝るそうです。

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