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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 冬ドラマ総括、ガッカリ作1位は…

No.1は『ブラッシュアップライフ』! 一番ガッカリだった作品は…冬ドラマ総括

今期の「ガッカリ」ドラマは…

 「ドラマ序盤ランキング」でガッカリ1位に選んだ『Get Ready!』は、『大病院占拠』同様、トンデモドラマとして割り切って観るぶんにはそれなりに楽しめたかもしれない。元は弁護士なのに、主人公・エースによる特訓によって凄腕のオペ看となっただけでなく、執刀までできるというクイーンのトンデモ設定ぶりからして、本作における「医療ドラマ」要素は味付け程度のものだが、トンデモドラマとして観るぶんには、沢村一樹や鈴木亮平の投入の仕方といい、(いきなり出てきた)国との交渉で罪を免責してもらうというマンガ的な着地といい、盛り上がりどころはあった。日曜劇場というより、深夜ドラマ向きだったのではという気もするが……(キャストの豪華さは日曜劇場なのだが)。しかし、考察要素などでSNSで盛り上がりを見せた『大病院占拠』と比べるとストーリーはより単純で(だから何も考えずに観られるのだが)、設定にもうひと工夫あったほうがよかったかもしれない。

 ちなみにトンデモドラマでは今期、『夕暮れに、手をつなぐ』もツッコミの追いつかない作品だった。北川センセは無理に現代を描こうとせず、AirPodsもモバイルバッテリーもSNSもない90年代にタイムリープしてしまう恋愛ドラマとかのほうがよいのでは。それにしても結局、婚約者に一方的に婚約破棄された空豆は慰謝料を請求しなかったのだろうか。

 序盤ガッカリ2位に選んだ『星降る夜に』も、懸念していたように、「産婦人科医」「遺品整理士」「聴覚障がい者との恋」「連れ子との関係」「医療裁判」など要素の詰め込みすぎによって話がとっ散らかっている印象があった。特にコメディ的なパートが独特で、終盤のシリアス展開のなかで、ピンクエンペラーだの、異世界転生小説で一発当てようとするヒモ男だののエピソードが挟まり、脱力させられる場面も少なくなかった。伴と深夜の抱えているものの“決着”の描き方がよかっただけに、マロニエの看護師たちの話などは省いて、鈴、一星、深夜、伴の4者を中心にした物語に絞っていたらと思うが、鈴と一星がスムーズに交際にたどり着いてしまう本作では、それだと全9話に満たなかっただろう。とはいえ、4月期の『unknown』の設定を見る感じ、この枠はあえていろんな要素を詰め合わせた方向性でいくのかもしれないが……。

 序盤ガッカリ3位に選んだ『女神(テミス)の教室~リーガル青春白書~』の場合は、描きたいものが多すぎて消化不良になり、青春エンタメ作品にもメッセージ性のあるシリアスな社会派ドラマにもなれなかったという印象。主人公の柊木は、生徒に課題を与えて考えさせ、最後に持論をぶつことで生徒を導く……というスタイルだが、基本的に柊木が放任スタイルのために結局、物語の中心となったのはロースクール生の4人で、柊木の主人公としての存在感が薄く、物語がいまひとつドライブしなかったように思う。そのために、司法試験の厳しい現実が突きつけられる中で倫理の授業をするような柊木の説得力が薄らぐ。売れっ子の山田裕貴の出番が少なかったのは仕方なかったかもしれないが、北川景子が主演として存在感を示せなかったのは残念だ。

今期ガッカリドラマ、最終的な1位は『100万回 言えばよかった』

『100よか』初の首位!『夕暮れに』『大病院占拠』続く TVerドラマ人気ランキングの画像
『100万回 言えばよかった』ドラマ公式サイトより

 そして今期の「ガッカリドラマ」、最終回まで観た結論としては『100万回 言えばよかった』を最終的なガッカリ1位として挙げる。決してつまらなかったわけではない。むしろ、中盤まではかなりおもしろく観たし、「ドラマ序盤ランキング」でも期待のドラマ2位に選んだ。「ガッカリ1位」とするのは、期待度が高かったぶん、それだけ残念な部分が強く感じられたということだ。

 このドラマを毎週ワクワクして観ていた人の大半が、直木はなぜ殺され、何に巻き込まれたのか、というミステリー/サスペンス要素に引き込まれていただろう。しかし、おそらくそもそも、そこを引きにするつもりはなかったのではないか。脚本の安達奈緒子氏はその手の作風を(特にオリジナル作品で)得意としているわけではないし、一連の事件の部分について、ツッコミどころが多いのだ。武藤千代は少女たちに「仕事」をさせていたが、自宅に囲っている様子はなく、外部に漏れてはいけない「仕事」をさせているわりにはリスク管理が随分甘そうに見えたし、池澤英介は直木に睡眠薬を飲ませて眠らせたが、直木は子どもの前で寝てしまったわけで、直木の遺体が発見された時点で警察は失踪当日の直木の行動を調べただろうに、なぜその証言が出てこなかったのか……など、気になるポイントはいくつもある。が、そこは別にいい。「切なくて温かいファンタジーラブストーリー」と謳っている本作において、ミステリー/サスペンス要素はおそらく添え物なのだろうから。

 ガッカリしたのは、結局、1990年の映画『ゴースト/ニューヨークの幻』の焼き直しというところから脱することがなかったためだ。往年の大ヒット映画に設定が似ていることは制作側も理解していただろうから、『ゴースト』とは違う展開になるだろうと思っていたし、その鍵となるのが『100万回生きたねこ』なのだろうと思っていた。しかし、「男女カップルのうちの男性が突然殺され、幽霊になる」「幽霊の声を聞くことができる霊媒師の協力を得る」「身近な同僚が実は悪事に手を染めており、殺人に関わっていた」「他の幽霊に物の動かし方を教わる」「犯人側の同僚が怪奇現象を目にする」「幽霊が霊媒師の体を借りる」「幽霊になった男性が恋人女性との最後の別れの時に、初めて愛していると言う」など、細部は違えども大筋は『ゴースト』と大差なく、『ゴースト』を現代日本を舞台にリメイクし、薄く引き伸ばして連ドラ化したようにも感じられた。

 そして、「3回憑依されると命を落とす(かもしれない)」とか「魚住がハヨンの死んだ夫・ウジンと見た目・声まで瓜二つ」とか、何か重要そうに思えた設定が、結局何でもなかったのもガッカリだ。魚住がウジンにそっくりなのも、直木が静電気を起こしたら雷が落ちてくるのも、英介にだけ広田勝の幽霊?が見えるのも、直木が(遺体は火葬済なのに)なぜか元の体で蘇るのも、すべて偶然ですべて奇跡。『100万回生きたねこ』も大してストーリーと関わりなかった。直木の死の理由も、結局理不尽なままだった。

 もっとも、井上真央、佐藤健、松山ケンイチの3人の共演というだけで見ごたえはあり、特に井上真央の怒りの芝居や、作中の大事なムードメーカーとなった魚住をチャーミングに演じた松山ケンイチの存在感は素晴らしかったし、中盤までは次の話が早く観たい!と思わせる魅力に満ちていた。最終回も、1話かけて描くほどのものだったかはさておき、突然失った大切な人との別れを丁寧に描くという意味で、必要だったとは思う。おもしろく観ていただけに、あまりに『ゴースト』すぎる設定・展開など、なぜ?がいくつも浮かぶ物語に留まったのが残念だった作品だ。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2023/04/02 19:38
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