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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『舞いあがれ!』舞が抱える“柏木後遺症”
朝ドラWATCHコラム『舞いあがれ!』第19週

『舞いあがれ!』悠人は後悔しながらも立ち直る一方、“柏木後遺症”の舞は…(第19週)

『舞いあがれ!』悠人は後悔しながらも立ち直る一方、“柏木後遺症”の舞は…(第19週)の画像
イラスト/渡辺裕子

 いつも浩太さん(高橋克典)・めぐみさん(永作博美)・舞ちゃん(福原遥)が仲良く食事をしていた、岩倉家のダイニングテーブル。けれど悠人(横山裕)がそこで笑って食べているシーンをあまり覚えていない、いつも途中でケンカになってしまうから……と、以前このコラムで書きました。彼にとってもあのテーブルが居場所であってほしい、あそこで食事しながら笑顔を見せてほしいと願っていたら、やっと、お兄ちゃんがカレーを食べてくれました。

 幼い舞ちゃんが五島から東大阪に帰ってきてみんなで食べたのが、父子で作ったカレーでしたよね。でもあの時、お母さんに世話されてばかりだった舞ちゃんが、自分からごはんの用意をする姿に目を奪われて、2人のカレーについてはほとんど覚えていなかった。体の弱い子としっかりした子がいると、親はついしっかりした子から目を離してしまいがちだよね、お兄ちゃんのさみしさに気づいてるのは私たち視聴者だけなんて書いたけれど、私も舞ちゃんの五島での成長には気づいたのに、お兄ちゃんが過ごしていた時間と成長については見えてなかったことを反省。文句言いながらもお父さんと2人でカレーを作る日々は、彼にとってかけがえのないものだったんだろうなあ。もうあのカレーは食べることができないし、お父さんに本当の気持ちを伝えることも謝ることもできない。浩太さんも、「歩みノート」に書いてた息子への愛情や「悠人の夢がわからないけど、いつかわかりたい」という気持ちをきちんと本人に伝えなかったことを、悠人と同じくらい後悔してるでしょうね。なくなったものは二度と取り戻せない。でも取り戻せないなら、悠人のこれからの人生で別の何かを作りだすしない。そしてそれは、浩太さんから教わったことから生まれるはず。がんばれお兄ちゃん。

 そして、後悔しながらも失敗から立ち直り再生しようとしているお兄ちゃんの姿を見て、舞ちゃんは自分のことをどう思ったのだろう。貴司くん(赤楚衛二)への恋心がダダ漏れなのに、関係について問われると毎回「ただの友だちですー」と言ってる姿に、なんだそれ、貴司くんからの告白待ちか?と正直モヤモヤしてたんですよ。ところが久留美ちゃん(山下美月)の超ストレートな質問(あれを聞けるのは彼女しかいない)で、とうとう本心が聞けて、すべて納得。「友だちです」は周りにではなく、自分に言い聞かせてたんですね、貴司くんがなんでも話せる幼なじみでいなくちゃ、恋愛関係になったらもう友だちには戻れないから、と。いわば柏木(目黒蓮)との恋の失敗と後悔による、柏木後遺症。彼女の、こうと決めたらしつこくやり続ける頑固さと、恋心を隠しきれない不器用さが、悪い化学反応で凝固してこれまでの変な態度になっていたんですね、なんてこった。

 しかし2人のぬるいお風呂のような心地よさげな関係も、自称ファン1号の秋月史子(八木莉可子)が現れたことで冷えようとしている。デラシネに押しかけて「私の短歌読んでいただけませんか」とか、「奥様ですか」と聞いて否定されて「よかった」とか、朝ドラだからやわらかな三角関係として話が進んでますが、これじゃほぼサスペンス、夜のドラマなら秋月はストーカー化してますよ、笑顔を向けてる場合じゃないですよ貴司くん。外から見てると貴司逃げろって思うけど、編集者リュー北條(川島潤哉)のダメ出しでゴリゴリと精神を削られてると、何もかも肯定してくれる短歌仲間的な女性にすがってしまいそう。貴司も舞ちゃんのことを好きに違いないけど、あんなに「彼女じゃないです、友だちです」と繰り返し否定されたら、彼女に迷惑かもしれないと優しさからあきらめてしまうかも。新たな失敗と後悔を生み出す前に、ちゃんと本当の気持ちに向き合ってくれ舞ちゃん。柏木との別れに使われてから「柏木公園」となぜか勝手に脳内ネーミングしてしまったあの公園の負の呪いを解いて告白して、『舞いあがれ!』がサスペンスドラマになる流れも断ち切ってほしい。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:福原遥、高橋克典、永作博美、横山裕、高畑淳子、赤楚衛二、山下美月、山口智充、くわばたりえほか
作:桑原亮⼦、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number「アイラブユー」
語り:さだまさし
制作統括:熊野律時、管原浩
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐
プロデューサー:上杉忠嗣、三鬼一希、結城崇史
広報プロデューサー:堀之内礼二郎、齋藤明日香
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/maiagare

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

わたなべひろこ

最終更新:2023/02/13 06:00
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