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吉高由里子『星降る夜に』、ただの“胸キュン”物語に終わらない?“社会派”な側面

吉高由里子『星降る夜に』、ただの“胸キュン”物語に終わらない?“社会派”な側面の画像
TELASA配信ページより

 吉高由里子が主演を務めるテレビ朝日系火曜ドラマ『星降る夜に』の第2話が1月24日に放送された。ラストの雪の降る夜の告白シーンは「可愛いがあふれすぎ!」などの声が上がった一方、匿名妊婦の出産など社会の課題に切り込む側面もあり、“胸キュン”と“社会派”の両側面を見せる展開となった。

 同ドラマは吉高が演じる産婦人科医・雪宮鈴と、北村匠海演じる遺品整理士のろう者・柊一星のラブストーリー。第2話は海岸で鈴が一星にマフラーを返したシーンの続きから始まり、そのまま一星が鈴を映画デートに誘う。映画の後、食事中に一星は鈴よりも10歳年下であることが判明するが、鈴とは違って一星は気に留める様子はない。距離を近づけていく2人だったが、鈴は、飛び込みの匿名妊婦が来たと病院から呼び出されることに。デートは突然終了してしまう。

 鈴は病院で、匿名の未受診妊婦(清水くるみ)の分娩介助を行い、無事に出産。しかし「子どもなんかいらない!」と言い、生まれた子どもに会おうともせず、出産直後にもかかわらず帰宅しようとする。新人医師の佐々木深夜(ディーン・フジオカ)は匿名妊婦の態度に納得がいかず、「赤ちゃんを見れば気が変わるかも」などと勝手に説得を試みるが、かえって妊婦の感情を逆なでする結果に。自分の価値観を押し付けようとした深夜に、鈴は適切な処置を施したものの母親を助けられなかったケースで裁判を起こされた過去を話し、「自分にとっての正解が患者さんにとっての正解とは限らない」と指導する。深夜は口にはしなかったが、回想シーンからするとどうやら、妻が出産中に母子ともに助からなかったという経験があるようだ。

 その夜、一星は仕事終わりの鈴をやや強引に居酒屋に呼び出す。そこには一星の同僚の佐藤春(千葉雄大)もいた。春を交えた会話に心がほぐれ、一星の自由な生きざまに惹かれていく鈴。翌朝、匿名妊婦が子どもを置き去りにして病室から消えた。深夜は「親になりたくても、なれない人もいるのに……」「このままじゃ赤ちゃんがかわいそうです」とため息をこぼす。

 夕方、仕事を終えた鈴のもとに一星が現れる。鈴が匿名妊婦の事情を話すと、一星は「置き去りにされている赤ん坊がかわいそうだ」と、探しに行こうと息まく。しかし鈴は「(赤ん坊は)まだ2日しか生きてないのに、かわいそうだとか不幸だとか決めつけられるのは、なんかおかしい気がする」と伝える。深夜やほかの看護師たちが口々に「かわいそう」と決めつけている状況に、ずっと違和感を持っていたのだ。鈴は、「親がいなければ、必ず“かわいそう”なの?」と一星に問いかける。両親を事故で亡くした一星は周囲から「かわいそう」と言われ続け、心のどこかで自分はかわいそうな存在だと思いながら生きてきた。「俺も、かわいそうじゃない?」と鈴に尋ねる一星。鈴は「一星はかわいそうなの?」と驚き、「私から見た一星は、自由で、自信満々で、ポラリス(遺品整理会社)のエースで、頼んでもない遺品届けてくれるくらいお節介で。うらやましいくらい魅力的な人生だと思うけど。……かわいそうなの?」と返す。一星は“個性的”だが、「かわいそう」ではないというのだ。一星は微笑みながら、自分はかわいそうではないと首を横に振った。

 後日、赤ちゃんは保護施設に引き取られることに。深夜は自分の価値観だけで判断しようとしていたことは間違っていたと認め、涙をこらえて赤ちゃんを送り出す。そして物語はラストシーンへ。雪の降る夜、踏切を隔てて偶然再会した鈴と一星。一星は、手話で「雪宮鈴、好きだ」と告白したところで第2話は幕を閉じる。

 自由で強引で、真っすぐな一星に心を許していく鈴の姿が描かれた第2話。告白するのは早いのではと感じたが、それ以上に視聴者からは「胸キュンがすごい」「可愛い」という声が多く上がった。居酒屋のシーンで、遠くから一星と春の手話での会話を見つめていた鈴が「外国にいるみたいだった」と表現しているところは、筆者も非常に共感できた。聞こえる、聞こえないという関係ではなく、言葉以上に通じる気持ちを大事にすることで展開されるラブストーリーなのだろう。

 また第2話では、匿名妊婦の問題をきっかけに、個人の事情に強引に介入することは正しいことなのか、親がいないことや耳が聞こえないことは「かわいそう」なのか……といった問いかけも根底にあった。特に匿名妊婦については、「産んだらみんな幸せとは限らない」「我が子だから必ず愛せるとは限らない」という言葉とともに、「危険な闇中絶や孤立出産、新生児の殺人」を防ぐために、日本でも匿名での出産が認められるといいのに、と鈴が口にする場面もあった。出生率の低下が問題となる現代社会において考えさせられるテーマが自然と織り込まれたのは、産婦人科医と遺品整理士の2人が「《命のはじまり》と《命の終わり》をつかさどる2人」と表現されている本作ならではだろう。

 元都庁職員だったらしいなど45歳新人医師の深夜が過去も少しずつ明らかになり、一星の働く「遺品整理のポラリス」社長・北斗千明(水野美紀)とも親しい間柄にある様子。2人の関係は今後のストーリー展開の重要なカギとなりそうだ。また、予告では深夜が鈴に急接近しそうなシーンも流れ、恋のライバルとなり得るのかも気になるところ。そんな第3話は今夜放送だ。見逃さないようにしたい。

■番組情報
火曜ドラマ『星降る夜に
テレビ朝日系毎週火曜21時~
出演:吉高由里子、北村匠海、千葉雄大、猫背椿、長井短、中村里帆、吉柳咲良、駒木根葵汰、若林拓也、宮澤美保、ドロンズ石本、五十嵐由美子、寺澤英弥、光石研、水野美紀、ディーン・フジオカ ほか
脚本:大石静
音楽:得田真裕
主題歌:由薫「星月夜」(ユニバーサル ミュージック)
ゼネラルプロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
監督:深川栄洋、山本大輔
制作:テレビ朝日 MMJ
公式サイト:tv-asahi.co.jp/hoshifuru_yoruni

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/02/14 14:09
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