『どうする家康』家康の「お腹が弱い」設定はあの伏線? “後ろ盾”となった信長との関係はどう描かれるか
#松本潤 #岡田准一 #大河ドラマ #どうする家康 #大河ドラマ勝手に放送講義
家康は幼少期に「第六天魔王」信長に出会っていたのか?
織田家が、家康少年を売った戸田康光に支払ったとされる金額はなんと「1千貫」。「貫」は戦国時代の銀貨の単位で、現代なら6000万円~1億円程度にも相当したと考えられます。
しかし、駿府の今川家の記録にある家康少年の情報と、家康が織田家を経て今川家の人質になったと主張する史料の情報とでは、微妙に時期に食い違いが見られます(黒田基樹著『家康の正妻 築山殿』平凡社)。それゆえ織田家の人質になったという“定説”には疑問の残る部分があり、少年時代の家康と信長が顔合わせをしていた可能性も「低い」と考える学者もいます。その場合、家康少年が信長から「兎」と呼ばれたり、「食ってやろうか」と言われていたのは「絶対にありえない話」となってしまうのでした。
とはいえ、信長と家康といえば、戦国時代ではまれに見る長期間の“友好関係”を保っていたことで有名です。織田家と徳川家の間には、「桶狭間の戦い」以降、締結された時期には諸説あるものの、通称「清洲同盟」という友好同盟が固く結ばれており、これは天正10年(1582年)6月の信長の死まで、約20年の長きに及びました。ドラマでは信長が怖くて、破りたくても破れなかったと説明するのかもしれませんが……。
「桶狭間の戦い」の後、家康は徐々に今川氏真ひきいる今川家を裏切る姿勢を見せることになるのですが、「清洲同盟」のおかげで織田家からの攻撃を危惧することなく、今川家からの“独立戦争”を戦うことができたのでした。また、家康が駿河に残してきた瀬名姫と嫡男・竹千代などの家族を引き取るための交渉を堂々と行えたのも、信長の後ろ盾あってのことでした。この同盟についてはドラマでも確実に触れるでしょうから、そのときに詳しくお話できると思います。
ただ、『どうする家康』の信長は悪役として描かれそうですね。徳川家康をいじめる極悪人・信長というイメージは、江戸時代に幕府の手で広められたものなので、その意味ではドラマは史実に忠実といえるかもしれません。徹頭徹尾“第六天魔王”な信長が本作では見られるのでは?という期待が広がっているようです。
ちなみに信長が「第六天魔王」を自称していたという話は、イエズス会の宣教師ルイス・フロイスがヨーロッパに宛てた書類に記載されていた情報で、信長の比叡山焼き討ちを批判する(熱心な仏教徒の)武田信玄からの手紙に対し、信長が“ご丁寧”な返信をした際、「第六天魔王」と署名していたという逸話が元ネタです。その手紙の現物がないので真実かは(やや)怪しい話ではあるのですが、仏教の修行を妨げる悪魔をわざわざ名乗ったのは、信長一流の“ブラックジョーク”だったような気が筆者にはします。これもまた、機会があれば詳しくお話しましょう。ただ、『どうする家康』の信長は今のところ、ジョークなど絶対に言いそうにない怖い御仁ですよね。岡田准一さんってあんな恐ろしい声も発することができるのかと思わされました。
最後に、不穏な伏線の存在を感じたので、それについて触れておきたいと思います。劇中で言及された「家康のお腹が弱い」という設定でピンと来た読者もいるでしょうが、元亀3年(1573年)12月22日、徳川・織田の連合軍と、戦国一の猛将・武田信玄率いる武田軍が激突した「三方ヶ原の戦い」において(正しくは「一言坂の戦い」ですが、詳細は後日)、武田勢の猛攻を受けた家康が恐怖のあまり、脱糞したという恐ろしいエピソードが存在します。先日発売した拙著(『本当は怖い江戸徳川史』三笠書房)でも検証しましたが、事実であるかは怪しい部分が多いものの、「神君脱糞伝説」は江戸時代から存在し、歴代の徳川将軍を悩ませたほどでした。11代将軍・家斉のお声がけで、歴史データの改ざんが行われ、「脱糞伝説は嘘だ」という公式発表が出されたくらいです。『おんな城主 直虎』(2017年)では、ナレーションで脱糞について語られただけだったように記憶しますが、『どうする家康』では家康の脱糞の場面が映像化される可能性もあります。松潤ファンの方は覚悟しておいてください。
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