宗教二世の苦悩『REVOLUTION +1』ほか 2022年に話題となった日本映画たち
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生きている人すべてを肯定する城定秀夫作品
城定秀夫監督の活躍ぶりも特筆したい。長年にわたってピンク映画や低予算のビデオ映画でキャリアを重ねてきた城定監督は、イケてない高校生たちの群像劇『アルプススタンドのはしの方』(20)が好評を博し、一般層にようやく認知されるようになった。今年だけで『愛なのに』『ビリーバーズ』など4本の監督作が公開された。
監督作はすでに100本を超えている城定監督は、コメディ、エロ、アクションとあらゆるジャンルの作品を撮り続けてきた。社会の片隅にいる人たちを主人公にしながら、観終わった後にはほっこりした温かい気持ちになれる。東映配給の田中圭主演作『女子高生に殺されたい』(Amazon Prime Videoで配信中)ですら、女子高生に殺されたいと願う男性教員の特殊な願望に優しく寄り添ったものとなっていた。生きている人すべてを肯定するのが、城定作品の特徴だ。
松井玲奈が主演した恋愛映画『よだかの片想い』も、城定監督が脚本を提供しており、「見た目問題」を扱った見応えのある1本となっていた。社会的弱者を商業映画の題材として取り上げること自体が、一種の搾取ではないのかというリテラシー的な視点が興味深かった。
松井玲奈主演『よだかの片想い』 “見た目問題”を扱った社会派ラブストーリー
ひとりの少年が、ある少女と出会い、恋に落ちることで物語が始まる。“ボーイ・ミーツ・ガール”ものは、映画や小説の王道的な設定だ。だが、運命的な出会いを果たす相手は、必ず...どんな恋愛も、メディア表現も、いくら繊細に注意を払っても加虐性、暴力性を完全に消し去ることはできない。顔に痣のあるアイコ(松井玲奈)は初めての恋愛にボロボロに傷つきながら、それでも前向きに生きようとする。原作小説にはなかった映画オリジナルのラストシーンを、安川有果監督は長回しを駆使して、鮮やかに撮り上げている。
城定監督は、2023年1月6日(金)に『恋のいばら』、2月10日(金)に『銀平町シネマブルース』の公開を控えている。松本穂香と玉城ティナが共演した『恋のいばら』はオリジナル作となる香港映画『ビヨンド・アワ・ケン』(04)をリスペクトしつつ、オリジナル作ではちょい役だった健太朗(渡辺圭祐)のおばあちゃん(白川和子)にも心憎い見せ場を用意している。実在する老舗の名画座「川越スカラ座」を舞台にした『銀平町シネマブルース』は、どんなダメ人間も受け入れる町の映画館への愛情に溢れた逸品だ。
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