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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.714

唐田えりか主演 男と女の本音がクロスする街歩き『の方へ、流れる』

唐田えりか主演 男と女の本音がクロスする街歩き『の方へ、流れる』の画像1
出会って間もない里美(唐田えりか)と智徳(遠藤雄弥)は清澄白河をめぐる

 男と女の関係は、あみだくじのように複雑で、どんな結末を迎えるのか予測するのは難しい。「理想の恋人だ」と直感が働いても、残念な結果に終わることもある。「ちょっと無理」と思っていた相手と結ばれるケースもある。どう転がるのか読めない男女の心のナイーブな動きを鮮やかに描いてみせたのが、新鋭・竹馬靖具監督による映画『の方へ、流れる』だ。

 運河の街・清澄白河が舞台。偶然に出会った男女が、会話を交わし、日が暮れるまで街を歩く。冗談混じりの言葉の端々には、大人の男女の本音が見え隠れし、お互いの心が揺さぶられていく。フランス映画っぽい、シャレた恋愛映画だ。見慣れているはずの隅田川が、パリを流れるセーヌ川に思えてくる。

 本作に主演したのは、濱口竜介監督の『寝ても覚めても』(18 )で一躍注目を集めた唐田えりか。小悪魔的な魅力と屈折した感情を併せ持つ女性を演じている。共演は『ONODA 一万夜を越えて』(21)に主演した遠藤雄弥。2人がほぼ出ずっぱりとなる会話劇だ。

 物語は朝の通勤バスから始まる。バスに揺られていた里美(唐田えりか)は、文庫本を読んでいるひとりの男性に気づく。男性が読んでいたのは、プルーストの小説『失われた時を求めて』だった。大学時代にフランス文学を学んだ里美は、つい後ろから覗き込む。とあるバス停で、その男性は降りてしまう。

 27歳になる里美は会社を辞め、無職状態だった。姉が清澄白河で雑貨店を開いており、旅行中の姉に頼まれて、その日は店番を務めていた。と言っても、客はほとんどいない。店の前の小さな公園に里美が目線を送ると、バスで文庫本を読んでいた男性がベンチに座っている。誰かと待ち合わせしているようだが、肝心な相手はいつまでも姿を見せなかった。

 男性は雑貨店を訪ね、「トイレを貸してほしい」と里美に頼む。年上の男性・智徳(遠藤雄弥)と里美は言葉を交わすようになる。暇を持て余していた里美は、ちょっとした好奇心から公園で待ち続ける智徳に茶々を入れる。智徳は恋人と冷却期間を置いており、その小さな公園で再会する予定だったことを明かす。結局、智徳が待っていた恋人は現れなかった。「トイレを貸してもらったお礼に」と智徳は、清澄白河を案内するという。

 街を歩きながら、2人は会話する。現れなかった恋人の魅力を語る智徳に対し、里美は「妄想恋愛」と皮肉る。男が勝手に作り上げた妄想と欲望による虚像に過ぎないと。最初は面白がって耳を傾けていた智徳だが、次第に言葉が辛辣になっていく里美に向かって「相当、やな男に騙されたんだな」と切り返す。

 言葉は時にナイフのように、相手の心を傷つける。だが、お互いに本音を吐くようになった2人は、心の距離も近づいていく。

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