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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.714

唐田えりか主演 男と女の本音がクロスする街歩き『の方へ、流れる』

最後までどちらに転ぶか分からない男女の関係

唐田えりか主演 男と女の本音がクロスする街歩き『の方へ、流れる』の画像3
夜の隅田川を歩く里美と智徳。2人の心の距離が近づく

 智徳役の遠藤雄弥とは、竹馬監督は以前から面識があり、演技力を評価しての起用だった。遠藤はやはり『ONODA』で演じた青年期の小野田少尉役が印象に残る。フィリピンのジャングルでサバイバル生活を続けた小野田少尉と、都会で孤独に暮らす智徳とが重なる部分もあるようだ。智徳は年上の男性の包容力で、斜に構えている里美を受け止めてみせる。

 広々とした木場公園を、里美と智徳は気ままに歩いて回る。途中、里美は見えないボールを拾い上げ、智徳に向かって投げつける。里美が言葉の代わりに空想上のボールを投げてきたことを理解した智徳は、透明なボールを拾い上げ、里美に投げ返す。架空のキャッチボールを楽しむ2人だった。どこか都会で暮らす男女の空虚さを感じさせるシーンでもある。孤独さが2人を結んでいく。

 日が傾き始め、隅田川沿いを歩く里美と智徳。会話を重ねるにつれ、里美が会社を辞めた理由などが分かる。なかなか本心を明かさなかった里美が、智徳に対して正直に打ち明けるようになっていく。里美の表情もずいぶん変わってくる。智徳ならず、本作を観ている観客も、里美を演じる唐田えりかの表情の変化に魅了されるのではないだろうか。

 2人の関係は最後まで、どう転ぶのか分からない。ユニークな本作の題名を決めた経緯についても、竹馬監督は語ってくれた。

竹馬「仮のタイトルは『いくつかの私』にしていたんですが、それだとイメージが広がりにくいなと悩んでいたところ、スタイリストの碓井章訓さんが一緒に考えてくれ、提案してくれたんです。作品のユニークさを表現しているし、文章の途中みたいな感じもいいなと思い、タイトルに決めました。智徳が読んでいた『失われた時を求めて』の第一編『スワン家のほうへ』や、隅田川を舞台にした幸田文原作、成瀬巳喜男監督の『流れる』(56)も連想させるのではないでしょうか」

 運河の街・清澄白河は、水路が網目上に街を流れている。俯瞰して眺めると、あみだくじのようでもある。どの道を進めば当たりなのか、それともはずれなのか。それを決めるのは、里美のこれからの生き方次第だろう。劇中の里美と唐田えりかが、ところどころで重なって感じられる。

『の方へ、流れる』
監督・脚本・編集・プロデューサー/竹馬靖具
出演/唐田えりか、遠藤雄弥、加藤才紀子、足立智充、小水たいが
配給/chiyuwfilm 11月26日(土)より池袋シネマロサ、下北沢K2、横浜シネマ・ジャック&ベティほか全国順次公開
nohoue-nagareru.studio.site

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最終更新:2022/11/24 19:00
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