佐々木譲の大河小説が韓流映画に! 悪と善との境界に立つ『警官の血』
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父親代わりの上司は、裏社会と癒着した悪徳刑事なのか
麻薬組織を追うパク・ガンユンは、公務員とは思えないような都心の高級マンションで暮らし、ベンツを所有していた。運転手を務めるチェ・ミンジェにもブランドものの腕時計やスーツを与え、「俺のことは社長と呼べ」と尊大に命令する。怪しいお金で新車を購入し、マンションの家賃も前払いしているパクだが、「富裕層を顧客にしている麻薬組織に近づくには、身なりを整えていないとダメだ」と悪びれる様子がない。
上司であるパクから、ミンジェは多くを学ぶことになる。パクの捜査方法は強引だが、次々と実績を残していく。パクを内偵しているはずのミンジェだったが、いつしか彼に亡くなった父親の面影を重ね、親しみを覚えるようになる。だが、ミンジェが監察室から送られたモグラ(密偵)であることが、チーム内にバレてしまう。逆風に立たされるミンジェだった。
本作を撮ったのはイ・ギュマン監督。韓国で実際に起きた未解決事件を題材にした『カエル少年失踪殺人事件』(11)以来となる長編映画だ。実録映画『カエル少年失踪殺人事件』と同じように、舞台を日本の警視庁から韓国警察に移し替えた本作も、骨太な犯罪サスペンスとなっている。
原作では安城家3代にわたる血族の物語だったのを、イ・ギュマン監督はパク・ガンユンとチェ・ミンジェの「擬似父子」の物語へと大幅に脚色している。敏腕刑事のパク班長を演じるのは、チョ・ジヌン。麻薬捜査官を演じた『毒戦 BELIEVER』(18)や北朝鮮への実録潜入もの『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』(18)など、作品ごとに異なるキャラクターを演じ分ける演技派男優だ。本作でも「父性」を感じさせる上司として顔と、裏社会に長く関わってきた悪徳刑事としての裏の顔を併せ持つ、二面性のあるキャラクターを巧みに演じている。
目的を果たすためなら、危険な橋も平気で渡る。泥水も飲み干してみせる。実社会で生きていくための裏技の数々を、パク・ガンユンは実践してみせる。きれい事だけでは、仕事で大きな成果を残すことは難しい。パクは自分も泥沼に足を踏み込んでいくことで、麻薬組織を追い詰めていく。
父親を幼い頃に亡くしているミンジェにとって、パクは父親に代わって社会で生きていくためのノウハウを教えてくれる得難い存在だった。(2/3 P3はこちら)
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