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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 松井玲奈最高のハマり役『よだかの片想い』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.702

松井玲奈主演『よだかの片想い』 “見た目問題”を扱った社会派ラブストーリー

マジックアワーを狙って撮影された奇跡的な瞬間

松井玲奈主演『よだかの片想い』 “見た目問題”を扱った社会派ラブストーリーの画像3
原作とは異なるラストシーン。主人公の心境の変化を、長回しで撮影している

 アイコと家族との関係性をしっかりと描いた原作小説もぜひ手に取ってほしいが、映画『よだかの片想い』は売れっ子監督の城定秀夫が脚本を手掛けており、原作とは異なるエンディングが用意されている。

 ラテンダンス研究会に所属するミュウ先輩(藤井美菜)に誘われ、大学校舎の屋上に昇ったアイコは、ミュウ先輩にラテンダンスのステップを習い、その場で踊ってみることに。つらい体験を味わったアイコだったが、知らない世界に触れ、自分の中から湧き出てくる未知なる様々な感情にも遭遇した。アイコは自分の弱さを知ることで、人間的により大きく進化を遂げていく。踊り始めたアイコの背中に、透明な翼が生えたような錯覚を感じずにはいられない。

 このラストシーン、安川監督はマジックアワーの限られた時間を狙って、長回しで撮影している。楽しいことも、悲しいことも経験したアイコの心は、大空に向かって羽ばたいていく。目には見えないはずの奇跡的な瞬間を、カメラはしっかりと映し出している。

 本作は恋愛映画でもなければ、社会派ドラマでもない。既成のジャンルの枠を飛び出し、世界には多彩な価値観があることを受け入れた人間賛歌の物語となっている。こんな映画に出会いたくて、私たちはこれからも映画館に通い続けることになるだろう。

『よだかの片想い』
原作/島本理生 脚本/城定秀夫 監督/安川有果
出演/松井玲奈、中島歩、藤井美菜、織田梨沙、手島実優、青木柚、池田良、三宅弘城
配給/ラビットハウス 9月16日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
©島本理生/集英社 ©2021 映画「よだかの片想い」製作委員会
notheroinemovies.com/yodaka

【パンドラ映画館】過去の記事はこちら

最終更新:2022/09/01 19:00
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