新藤まなみの初主演作『遠くへ、もっと遠くへ』 この夏はいまおかしんじ祭り!
#映画 #パンドラ映画館 #いまおかしんじ
人生の負け組たちに訪れる、ささやかな奇跡の瞬間
もう一本、いまおかしんじ監督は新作ロードムービーを撮っている。8月5日(金)より劇場公開が始まる『甲州街道から愛を込めて』だ。よほど、ロードムービーを撮りたくてしかたなかったのだろう。バンド仲間とケンカして、ひとりぼっちになったミュージシャンのリリコ(有里まりな)をはじめとする4人の若者たちが、東京から山梨まで甲州街道を車で走っていく物語となっている。
リリコと旅を共にするのは、リリコの友人で、失恋したばかりの“メンヘラ女子”マナミ(古瀬リナオ)。コンビニで働く、しがないフリーターのタイチ(遠藤史也)、それにタイチの彼女で、精神安定剤が手離せないルミ(和田瞳)。4人中2人がメンヘラという人生の負け組たちが、車中旅を経験し、それぞれが新しい目的地を見つけることになる。
社会にうまく迎合することができずにいる主人公たちは、いまおか監督自身の20代のころをモデルにしているらしい。彼女や彼たちはその日その日を生きるだけで精一杯で、将来のことまで考える余裕はない。そんな時代の波に対応できない人たちに、いまおか監督はとことん優しい。言い換えれば、いまおか監督は若いころの自分自身を映画の中で励ましている。そして、本当にささやかな「奇跡」が彼女や彼たちに訪れる瞬間を、名カメラマンの山本英夫氏が丁寧に映し出していく。
まるで若い自主映画の監督が撮ったかのように、『遠くへ、もっと遠くへ』『神田川のふたり』『甲州街道から愛を込めて』の3本はどれも瑞々しさに溢れた作品だ。「いまおかしんじロードムービー三部作2022」と呼びたい。
さらにメールがきっかけで始まる大人の恋愛模様を描いた『あいたくて あいたくて あいたくて』も、8月13日(土)より公開される。本人が意図したわけではなく、8月~9月にいまおかしんじ監督作品が4本劇場公開されるという、自然発生的な「いまおかしんじ祭り」状態となっている。これも、ちょっとした奇跡ではないだろうか。
ベテランと呼んでいいキャリアを持ついまおか監督だが、新しいキャストやスタッフと出会うことで、ワンパターンに陥ることなく、新鮮な魅力を放ち続けている。いまおか監督自身が、人生という名の旅を楽しんでいるに違いない。
『遠くへ、もっと遠くへ』
監督/いまおかしんじ 脚本/井土紀州 撮影/花村也寸志 音楽/宇波拓
出演/新藤まなみ、吉村界人、和田瞳、川瀬陽太、大迫一平、佐渡寧子、黒住尚生、広瀬彰勇、佐藤真澄、茜ゆりか
配給/ムービー・アクト・プロジェクト R15+ 8月13日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
©2022 レジェンド・ピクチャーズ
legendpictures.co.jp/tokuhe
『あいたくて あいたくて あいたくて』
脚本・監督/いまおかしんじ 撮影/山本英夫
出演/丸純子、浜田学、川上なな実、柴田明良、青山フォール勝ち、山本愛香、足立英、青木将彦、松浦祐也、川瀬陽太
配給/ムービー・アクト・プロジェクト R15+ 8月13日(土)より新宿K’s cinemaほか公開
©2022 レジェンド・ピクチャーズ
legendpictures.co.jp/aitakute
『甲州街道から愛を込めて』
監督/いまおかしんじ 脚本/中野太 撮影/山本英夫 音楽/宇波拓
出演/有里まりな、古瀬リナオ、遠藤史也、和田瞳、伊藤和哉、高村悠志、西野真澄、中嶌俊介、尾崎蓮、広瀬彰勇、翔(T.C.R.横浜銀蠅 R.S.)
配給/キングレコード R15+ 8月5日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
©2022 キングレコード
mayonaka-kinema.com/koshukaido
『神田川のふたり』
監督/いまおかしんじ 脚本/川崎龍太、上野絵美 撮影監督/藍河兼一 主題歌/D☆SHOUT
出演/上大迫祐希、平井亜門、椎名糸、岡本莉瑚、橋本達、内藤光佑、有永結咲、美波愛子、たきみずなお、村田美輪子、佐藤宏、石綿宏司、逢澤みちる
配給/アイエス・フィールド 9月2日(金)より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
©2021 Sunny Rain
is-field.com/kandagawanofutari
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