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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > いまおかしんじロードムービー三部作2022
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.698

新藤まなみの初主演作『遠くへ、もっと遠くへ』 この夏はいまおかしんじ祭り!

いまおか監督が繰り返し描く、姿を消した親友という存在

新藤まなみの初主演作『遠くへ、もっと遠くへ』 この夏はいまおかしんじ祭り!の画像3
永福町から吉祥寺まで、神田川を旅する『神田川のふたり』

 新藤まなみが官能シーンに挑んだことでも話題の『遠くへ、もっと遠くへ』だが、いまおかしんじ監督のもうひとつのロードムービー『神田川のふたり』(9月2日公開)は、青春を迎えたばかりの高校生たちの初々しい物語となっている。

 高校2年生の舞(上大迫祐希)と智樹(平井亜門)は、中学時代は仲がよかったが、別々の高校に進学し、すっかり疎遠になっていた。共通の友人が急死し、その葬儀の帰りに2人は再会。亡くなった友人が片想いしていた女性に、友人の想いを伝えようと2人は盛り上がる。

 舞と智樹が再会を果たすのは、杉並区永福町駅近くにある「幸福橋」。そこから吉祥寺の「井の頭公園」まで神田川を遡っていく。短い距離だが、自転車を漕ぐ2人が予期せぬハプニングに次々と遭遇するロードムービーとなっている。ごく平凡な小さな橋が「幸福橋」という名称であること、神田川の源流は「井の頭池」であることなど、東京で暮らしていても見逃しがちなことに気づかせてくれる。

【奇蹟は 誰にでも 一度おきる だが おきたことには 誰も気がつかない】

 少年と少女の運命的な出会いを描いたSF漫画『わたしは真悟』(小学館)の中で、そんな名言を書き記したのは吉祥寺在住の伝説の漫画家・楳図かずお氏だ。永福町から吉祥寺まで、おめでたい名前の街を旅する舞と智樹だった。

 “亡くなった親友の想いを、残された主人公たちが叶える”というモチーフを、いまおか監督は映画の中でこれまで何度も描いてきた。亡くなった親友は、主人公の魂の片割れでもある。そんな魂の片割れの行方を求め、いまおか作品の主人公たちは日々さすらうことになる。

 いまおか監督の実体験をベースにした『川下さんは何度もやってくる』(14)であの世から戻ってきた先輩を演じた怪優・佐藤宏は、『たまもの』『れいこいるか 』ではキーパーソンを演じ、『遠くへ、もっと遠くへ』の札幌パートにもカメオ的に出演し、強い印象を残した。『神田川のふたり』でも、主人公たちに訪れる「奇跡」を象徴したような存在となっている。

 親友の死がきっかけで、舞と智樹は再び出会い、中学時代に伝えられなかったお互いの気持ちを打ち明ける。『神田川のふたり』も「ARTS for the future!」の助成金を受けた作品だ。コロナ禍によって大きな打撃を受けた映画界だが、コロナがもたらしたのは災いだけではなかった。いまおか監督はコロナ禍という厳しい状況をきっかけにして、これまでできなかったロードムービーというジャンルに挑戦することができたわけだから。(3/4 P4はこちら

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